空犬通信

本・本屋好きが、買った本、読んだ本、気になる本・本屋さんを紹介するサイトです。

いざ宇宙(そら)へ……山崎直子さん打上の日に関連本と、小松崎茂本を

いよいよですね。宇宙好きとしては、わくわくせずにはいられません。「「宇宙へ」山崎直子さん、少女時代の夢実現へ」(4/5読売新聞)。


関連本としては、当然この2冊。ご夫婦、それぞれの本が同時期に、しかも違う版元から刊行されるのはめずらしいケースかもしれませんね。


  • 山崎直子『何とかなるさ!』(サンマーク出版)
  • 山崎大地『宇宙主夫日記 妻と娘と夢を追いかけて! 』(小学館)



まずは山崎直子さんの本。本来であれば、まずはこちらから、それも打上前に読むべきなんでしょうが、自己啓発とか精神世界関連本のイメージの強い版元の本で、なんとなく手が伸びずにいるうちに、今日に……。


表紙の「ママは宇宙に行ってきます」が、いいですねえ。報道によれば、ご本人は「ママさん宇宙飛行士」と呼ばれたくないそうですが、ふつうの仕事だってむずかしいのに、宇宙飛行士と「ママ」の両立ですよっ! 「男の子の世界」っぽいイメージの「宇宙」という分野に家庭生活との両立問題をクリアして乗りこんだパイオニアの1人として確実に記録に残る人なわけですよ。これは大いに誇っていいことだと思うし、むしろどんどん、そのことを前に出してほしいぐらいですよね。


一方、パートナーの山崎大地さんの本。宇宙主夫……なんか、いいなあ、すてきな肩書きだよなあ。言ってみたいよね。「お世話になります。宇宙主夫の空犬です」とかさ。さっと差し出す名刺にも「宇宙主夫」って入ってるの。でも、こればかりは、今からはちょっとね。うちのおくさんが突然、「あなたにはこれまで隠してたけど、実はわたし……宇宙飛行士なの」「……。えええええええーっ!」みたいなことが起こらないかぎりはね。まあ、ぜったいに起こらないとは言い切れないんだけども。……って、いったい何を書いてるんだ。


こちらのほうは読んだんですが、これが、なんというかちょっとすごい本です。



結婚されるまでの経緯はともかく、中盤がすごくて、介護に育児に就活にで、てんやわんやの私生活の話は、そのうち、別居だの離婚だのの話にまでヒートアップ。今や日本人女性としては世界でもっとも注目を集めている1人であるおくさんをつかまえて、仕事優先で子どもはほったらかしだ、みたいなかなり厳しい人物評価が次から次に出てきて、よくここまで書いたなあ、書かせたなあと、他人事ながら、ひやひやさせられるスリリング(?)な読書となりました。しかも、疲れ果てた山崎大地さん、あげくは自殺の一方手前までに追い詰められたりまでしてるし……。


語り口が軽めなので、深刻感・悲壮感はあまりないものの、次から次に展開されるヘビーな話は、タイトルから受ける、読み始める前の印象からは大きく異なった世界で、びっくりしました。


考えてみれば、当然、宇宙飛行士にだって、それなりの年齢・立場になれば、その家族はいて、夫婦生活だって、家事だって、育児だって、介護だって関係してくるわけですよね。これまでの宇宙もののノンフィクションや、SFでは、こうした、宇宙の「現場」で活躍する人たちの「生活」ってほとんどふれられてませんからね。その意味では、貴重な(?)記録になっているのかもしれない。そんなふうに思わせる1冊でした。


ところで。日本人女性が宇宙へと旅立つその日に、この本もぜひ紹介しておきたいのです。


  • 小松崎茂『SFメカニック・ファンタジー 小松崎茂の世界』(ラピュータ)



本の内容については、3/29読売新聞の書評に取り上げられていましたから、それを引かせてもらいます。《1982年に集英社から刊行され、今は古書でも入手困難になった画集を底本に、他のSF原画も収録している。宇宙コロニー、海底スーパートンネルなど壮大なメカの中に、環境への配慮や人間尊重の思想も感じさせる。監修は弟子の根本圭助氏。》


巻末に、1967年に小松崎氏ご本人の書いた文章が掲載されています。《きみたちが大人になったときには、月世界や火星に住むことになるかもしれません。そして、空気を月や火星につつんで生活するようになるでしょう。さらに進んで金星や土星、いや、太陽系をぬけだして、ほかの銀河系にまでも行くようになるでしょう。それには、まだまだ長い時間が必要とされるでしょう。》


言うまでもなく、当時の子どもたちが「大人になったとき」、つまり1980年代どころか、それから40年以上たった現在でさえ、小松崎先生が書かれたようなことは、1つも実現できていません。そして、当分実現しそうにないことも、わかっています。でも、前進がなかったわけではない。おそらく、当時の先生の考えのなかでも、また当時の読者であった男の子たちにとっても、「男のもの」であったろう「宇宙」に、日本人の、それも「ママ」でもある宇宙飛行士が飛び立とうとしているのだから。そのことを知ったら、小松崎先生もきっと喜ばれるだろうと思うのですよ。なにしろ、このすばらしい絵を描いたのは、(《私の本来の夢は実現していません。けれども》と前置きしたうえで)《少年諸君に美しい、力強い未来の夢をあたえる仕事には少しばかりお役にたったと思います。この仕事には誇りをもっています。》、こんなふうな思いでいた人だったのですから。


山崎直子さんとぼくはほぼ同世代、小松崎ワールドにリアルタイムに接した世代ではありません(昭和40年代後半に「男の子」をやっていたぼくは、わずかにプラモの箱絵でふれてはいます)。でも、山崎さんが「宇宙」への憧れを持つにいたったのには、こうして、「力強い未来の夢」をあたえて続けてくれた人たちが、我々の前にたくさんいてくれたことが大きいのではないか、そんなふうに言ってしまっても、言い過ぎではないと思うんですが、どうでしょう。


というわけで、この箱入り上製のすてきな画集は、元SF少年、元天文少年のおやじは全員必須として、ぜひ、そういうものに縁がないと思い込んでいる女性のみなさんにも手にとっていただきたいものです。ああ、でも、そういう女性のみなさんは、そもそもこの空犬通信読んでないかもなあ(苦笑)。



スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://sorainutsushin.blog60.fc2.com/tb.php/975-0209e66a
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

女性の立つ位置

宇宙飛行士になった子どもたちハードボイルドに生きるのだNASA スペースロゴキッズTシャツ 何とかなるさ! ママは宇宙へ行ってきます 宇宙主夫日記女性学・男性学近代日本の「手芸」とジェンダー 宇宙飛行士として、山崎直子さんが5日、スペースシャトル「ディスカバリー...

  • 2010/04/08(木) 09:44:05 |
  • ライフスタイルblog彩り

FC2Ad