3冊とも読み返し本です。
- コンラート・ローレンツ『ソロモンの指環 動物行動学入門』(ハヤカワ文庫)
- ロバート・シェクリー『残酷な方程式』(創元SF文庫)
- 梁 石日『タクシードライバー日誌』(ちくま文庫)
『ソロモン』、初めて読んだのは高校生だったか大学生だったか、とにかくずいぶん前のこと。黄色っぽいカバーの単行本でした。
↑改装してるんでしょうね。記憶にあるのと違うカバー。
若かりし頃に感銘を受けた本を長じて再読するのはなかなか勇気のいる行為で、というのも、何が良かったのかさっぱりわからなかったり、がっかりさせられたりということがしばしば起こるからなんですが、この本はまったくその心配のないことが、読み始めてすぐにわかりました。『ひとりぼっちのジョージ』を読んでガラパゴス・ブームになったりしているのも、テレビは見ないくせに『ダーウィンが来た!』のような自然番組はけっこう好きだったりするのも、実はこの本の影響なのかも、とあらためて思いました。
『残酷』は創元文庫の復刊フェアの1冊。1985年初版の文庫ですから、これもおそらくは高校生か大学生の頃に読んだもの。カバーは記憶にあるものと違うなあと思ったら新カバーでした。2007年の復刊ラインナップはこちらで見られます。バラード、チェスタトン、クロフツ、ゼラズニイ、ブラウンと、大御所の名前が並んでいますが、このクラスの書き手の作品でも、切れちゃったりするわけですね。古本の探求リストに入っている人は全速力で書店へどうぞ。
『タクシー』は「吉っ読」のSさんが夏の文庫フェアに推薦した1冊。この本にSさんは、《凡百の格差論を超える衝撃。綴られるタクシードライバーの日常。高みの物見的格差論とは対極の真実を20年前に照射した驚異のドキュメント。》という帯文句を寄せているのですが、この文句が実に腑に落ちます。最初に読んだのは大学生のころですが、いまこうして初読から20年ぐらいがたち、自分もお金を稼ぎ、家族を持つ身になってみると、この本のそこここに出てくる収入の話、生活の話が、ただの数字や所帯じみた話ではなく、重みと厚みのある話としてこちらに伝わってくるのです。
親本が1984年刊、文庫が1986年です。つまり、この後、日本はバブルとその崩壊というかなり高低差の激しい山と谷を味わうことになるわけですが、それらをリアルタイムで見てきた目で読み直すと、初読のときには感じなかったであろう感慨を覚えます。というのも、この本をいま読んでも、年収だの賃金だの金額的な記述がとても20数年前のものとは思えないからです。格差社会だのワーキングプアだの年収300万時代だのと便利な用語はできましたが、それほど、あまりにも変わらない“何か”が厳然とある。ことはタクシー業界の話だけじゃないわけです。「吉っ読」のフェアがなければ再読していなかったかもしれない本です。このような出会いも、またいいものです。タクシーだの、陸運業界だのそんなものにちっとも興味がない、という人にも自信を持っておすすめできる1冊です。
◆今日のBGM◆
今回から何回か続けて、「ナイスジャケシリーズ」(あくまで、空犬的ナイス、ってことですが)でお届けします。
- Osibisa『Woyaya』
ああ、うれしいなあ! とうとう見つけました。オシビサのセカンド。アナログ盤で。くー(涙)。これ、ずっと欲しかったんですよ。カバーアートはロジャー・ディーン。ロジャー・ディーンが手がけたイラストの中でもベスト5に入りそうな、妙な迫力に満ちたこのジャケ絵をご覧ください! ねっ、ほしいでしょ!
CDなら簡単に手に入るし、しかも、ファースト(こちらもジャケがかっくいい)とセカンドの2in1まで出ていることも知っていたけど、やっぱりLPでほしかったんですよねえ。やっぱアナログを探した甲斐がありました。素晴らしいジャケです。CDジャケにある枠もなくて、見開きジャケ目一杯のイラストがうれしい。
音のほうもかっくいいんですよね。アフロファンクなんて説明されていることが多いですが、まさにそんな感じ。
ちなみに本盤、神保町の中古レコード屋、ゼロシーシーにて発見です。以前ブログで紹介した古書店ダイバーのすぐ近くです。神保町では書店めぐりに時間をとられるため、ディスクユニオン以外のレコード屋にはあんまり顔を出していなくて、ここもチェック漏れでした。のぞいてみたら、お店は狭いのですが、アナログ盤が狭い店内にぎっしり。お店の外にも均一箱がずらり。店内の商品も多くが3桁(Osibisaはさすがにそれなりの値段でした)で、なかなか良心的な値付け、ディスクユニオンでも見かけないような盤が300円箱なんかにもけっこうささってます。お昼休みの楽しみがまた増えました。
というわけで、今日は長年の探求盤発見に独りで乾杯の空犬です。