いやあ、実に幸せな読書時間を過ごせました。
- 松浦寿輝『川の光』(中央公論新社)
ネズミたちのかわいいこと、そして彼らをとりまく動物キャラたちの魅力的なこと! すっかりまいってしまいました。通勤電車の中で読み始めたのですが、ネズミの親子の冒険にはらはらさせられっぱなし、頻繁に涙腺が刺激されるので、後半は自宅で読まざるを得ませんでした。動物が主人公の児童読み物を次から次に読んでいた子どもの頃の読書を思いださずにいられません。すれっからしの小説読みにこそすすめたい、すばらしい作品です。
小説ではないのですが、動物ものでは、こちらもとても印象に残る1冊でした。
- ヘンリー・ニコルズ 『ひとりぼっちのジョージ 最後のガラパゴスゾウガメからの伝言』(早川書房)
ガラパゴス諸島のピンタ島で見つかったピンタゾウガメの最後の生き残り、「ロンサム・ジョージ(Lonesome George)」をめぐる物語です。ただのカメの話じゃん、などと思うなかれ。絶滅危惧種の保存、自然保護と土地の住民の経済とのバランス、などなど、1匹のゾウガメの話から、いろいろなテーマが引き出され、しかもそれが散漫になることなく、こうした分野に強くない素人読者にも読みやすいようにうまくまとめられています。実に読み応えのある1冊でした。
ガラパゴス、行ってみたいなあ。この本を読んでそう思う読者は多いでしょうが、一方、ぼくのような観光気分の素人が訪れること自体、はたしていいことなのかどうか、ということもこの本を読むと考えさせられます。まあ、ぼくは心身ともにやわにできている典型的な文系人間ですから、赤道直下で、直行便もないガラパゴスへ行くなんて、そんな大それたことをは考えないほうがそもそもいいのかもしれません。ぼくのような軟弱者のために、こういうすばらしい本(写真集)も出ているようですしね。
余談。カメで思い出しました。先日、娘と、井の頭自然文化園内にある水生物館にいってきたのです。そしたら、なんと、カミツキガメがいました。しかも、甲羅の直系が40センチ近いという、とびきり巨大なやつです。容貌魁偉、しっぽにはぎざぎざのとげとげがついています。息をするために、後ろ足で立ち上がって鼻先だけ水面に突き出した様子は、まさに怪獣以外の何物でもありません。どう見ても、見た目はガメラです。巨大生物好き、怪獣好き、恐竜好きならぐっとくること間違いなし。水生物館ではオオサンショウウオも見られますから、その手のものが好きな方々は全速力でかけつけてください。
↑まもなく再発売になるらしい平成ガメラシリーズ3部作。
ところで、このカミツキガメ、井の頭池の水路で見つかったものなんだそうです。ペットとして飼ったはいいけれど、大きくなって手に負えなくなり、捨ててしまった、というパターンなんでしょうね。悲しいことです。どんな動物もこのような捨て方をしてはいけませんが、なかでも、外来生物・危険生物をそこらに適当に捨ててしまう、などというのは論外、絶対に絶対にあってはならないことですよね。