先日、所用があって札幌に行ってきました。そのついでに、本ブログで何度も紹介してきたくすみ書房を訪問してきました。

いずれ「吉っ読」のサイトかブログに詳細なレポートを挙げる予定ですが、くすみ書房を応援したい本通信としても報告しないわけにはいきません。マスコミの記事で紹介されているようなフェアの話などは省いて、店内の様子を中心に、ごく簡単に、訪問記のようなものをまとめてみます。
くすみ書房は、札幌市内、札幌駅から地下鉄で数駅、20分ほどの街、琴似にあります。琴似は、地下鉄駅の上にはダイエーがあり、駅の周りに小規模な商店街があるという、ごくふつうの街。その琴似駅から徒歩数分のところにくすみ書房は位置しています。商圏の規模といい、書店自体の感じといい、いわゆる“街の本屋さん”ですね。ところが、店内に一歩足を踏み入れると、そこには、ふつうの本屋さんではまず見ることのない、棚の様子が目にとびこんできます。
店内右奥の壁際には、新聞報道などで有名になった「オヤジのおせっかい」などのフェア関係がずらりと並んでいます。ガイドブックは、うまく説明できませんが、円錐形のような丸く本をさせるラックにおさまっています。新刊平台のすぐ脇、ふつうなら売れ線の本を面出しにしたくなるようなところで、東大出版会の本の小フェアが展開中。店の中央の大きな台には、なんと、ありえないことに、中公文庫と岩波文庫がずらり。コミックのコーナーはありません。……ここ、ほんとに街の本屋さん?

上の写真を見てください。ダカーポや朝日新聞の記事で知ってはいましたが、実際にこんなポスターが貼ってあるのを目にすると、かなりのインパクトです。「売れない文庫フェア」だけでもけっこうな客を驚かすに十分な内容ですが、その周りを、「……文庫全点フェア」「……文庫ほぼ全点フェア」が取り囲んでいます。全点がちくま、岩波、ほぼ全点が河出、中公と、いずれも街の本屋さんなら泣く泣く削るもしかたなし、といった文庫たちです。
ダカーポなどの記事で読んだときにいちばん不思議に思ったのが、全点フェアでも「面出し」にしている、という点でした。ふつうに考えて、まず物理的に不可能です。で、この写真をどうぞ。

この棚、なんと説明すればいいんでしょうか。厚みのない、背の高いスチール製のもので、両面が使えるようになっており、足元の部分には少しだけ平も置けます。これが、柱の脇、通常の棚の端などに、単独で、あるいは斜めに並べるようにするなどして、デッドスペースが生じないよう、うまく店内のあちこちに並べられています。
文庫が全点面出しになることで、文庫好きでも見たことのないような棚が店内のあちこちに出現しているのです。ぼくも文庫好きを自称していますし、それに神保町で毎日のように大型書店の文庫棚は巡回チェックしてるぐらいですから、主要文庫の本はだいたい知っているつもりでいます。しかし、ふだんぼくが目にするのは、新刊の平積みをのぞけばほとんどは“背”なんですね。背=タイトルで知っているつもりの本でも、表紙が目に飛び込んでくるとずいぶん印象が変わります。とても新鮮な眺めでした。

上の写真は、マスコミに取り上げられて有名になった「本屋のオヤジのおせっかい 中学生はこれを読め」の棚です。本には独自帯がかかっています。並べ方にもこまかい工夫が見られ、手書きのPOP、説明文があちこちにぺたぺたと貼られています。この棚だけでも、本好きなら長居したくなることでしょう。

↑オヤジマークを集めて図書カードをゲット!……はしませんが、とりあえずオヤジ帯は当然ゲット! 両方ともすでに持ってた本ですが、ええい、そんなの関係ありませんっ!
お店をゆっくり拝見した後、社長/店長の久住邦晴さんにお話をうかがいました。フェアのこと、これまでの苦労、そして今後の展開に関するアイディアなど、貴重なお話をたくさんうかがうことができましたそれらは、上に書きました通り、いずれ「吉っ読」のサイトでなんらかのかたちにまとめたいと思っています。

↑久住邦晴店長。B1に併設のカフェ、「ソクラテスカフェ」にて。お忙しい身なのに、1時間以上にわたって、いろいろとお話を聞かせてくれました。
というわけで、くすみ書房は予想通り、いや予想をはるかに上回るすばらしい書店でした。実際の店内の様子は、こんな短文駄文では伝えきれないぐらい、本好きをうならせずにおかない、幸せな空間になっています。本通信をお読みのみなさん、北海道にお出かけの際には、ぜひくすみ書房にお立ち寄りください。本好き、書店好きなら、わざわざそのために時間を割いたり、遠回りしたりしてでも寄る価値のある書店です。強力におすすめします。