空犬通信

本・本屋好きが、買った本、読んだ本、気になる本・本屋さんを紹介するサイトです。

神を見た犬、青い蛇……最近買った本たち。

「えっ、こんなのが文庫に?」という感じの、マイナーな、そしてちょっと無気味な物語たちの文庫化が目につきました。


  • ディーノ・ブッツァーティ『神を見た犬』(光文社古典新訳文庫)
  • トーマス・オーウェン『青い蛇』(創元推理文庫)


いずれもよく文庫にするなあという感じです。ブッツァーティはイタリアの幻想文学作家。以前は以下のような単行本の短編集が出ていました。



最初の2冊は品切れのようです。ほかに児童文学作品もあります。印象的な短篇の数々はぼくも好きで読んだものですが、でも、ドストエフスキーやバーネットらの名が並ぶ「古典」文庫のシリーズに入るような作家なのか、と言われるとうーんという気もします。ロダーリのときもちょっと感じたことではありますが、でも、「古典」かどうかなんてこむずかしい議論は抜きにして、こういう異色なものが入ること自体、このシリーズの容れ物の大きさを示すものとして、むしろ評価したいところです。



光文社古典新訳文庫、デビュー時はいろんな書店で派手に平積み展開されている光景を目にしましたが、その後は、苦戦も漏れききます。実際、置いていない書店もけっこうあるようで、ぼくの最寄り駅の書店にもなかったりします。一方で、ドストエフスキーが何万部売れた、などという話も聞きます。すべてのタイトルがそうはいかないでしょうが、新訳によって新しい読者が獲得できたのは事実でしょうから、これからもぜひ、大御所だけでなく、こうしたマイナーポエットも交えた、独自の、そして魅力的なラインナップで、細々でもいいから続けていってほしいものです。個人的には、講談社文芸文庫の翻訳文庫版、のような位置づけに育つといいなあ、などと思っています。



トーマス・オーウェンは先に刊行された『黒い玉』に続く2冊目の文庫化。こちらはベルギーの幻想文学作家ですが、帯のコピー《読む者を、不安の霧の中へ置き去りにする十六の幻想》の通り、ブッツァーティ以上に、無気味で、奇妙な味わいの強い、マイナーポエット。とても文庫で広く読まれるような作家に思えませんが、だからこそよけいにうれしい文庫化と言えそうです。




そういえば久世光彦さんが『美の死』のなかで、東京創元社についてこんなことを書いています。

《東京創元社はいい版元である。元のとれないこうした本をたくさん出している。「ポオ全集」も「リラダン全集」も、売れはしまいが、いまの文化の中になくてはならないものである。》

ちなみに、この文章は、渡辺啓助『ネメクモア』について書かれた書評の最後の部分に出てくるものです。まさに、こうした本を出してくれる版元だからこそ、東京創元社は、ぼくの好きな版元の1つでもあります。このような勇気ある出版をぜひ続けてほしいものです。



上にあげた2点は、ぼくが好きな「奇妙な味」「異色作家」の系譜に入る作家たちでしょう。万人向きの作風だとは決して思いませんが、以前に紹介したカーシュや、異色作家短篇集が好きな人ならきっと楽しめると思います。おすすめです。



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