SNSで話題になっていた『国書刊行会50年の歩み 国書刊行会創業50周年記念小冊子』。フェア開催展の1つ、紀伊國屋書店新宿本店で入手しました。
(本記事、国書刊行会創業50周年記念フェアが各地の書店で開催されている時期にアップするつもりで書いたものですが、下書きのままになっていたことに今さら気づいた次第。そのため、店頭での入手が難しいタイミングでの紹介になってしまいました。)

「小」冊子とありますが、B6判で138ページもあり、巻頭カラー口絵まである立派なつくりの冊子です。同社の愛読者はもちろん、出版の歴史や出版社の社史に関心のある人もぜひ入手しておくべき1冊だと言えます。
つくりが立派なだけでなく、中身の充実度もすばらしい。読み物としておもしろくて、一気に読んでしまいました。
掲載されている文章はどれもおもしろいのですが、「国書刊行会社史余滴 集古九種」には笑ってしまいました。社史・周年記念誌を読んでいて声を出して笑ってしまったのは初めてかも。
「国書刊行会社史余滴 集古九種」の「八重洲ブックセンター」事件とか、たまりませんよね。先日、多くの本好き本屋好きに惜しまれつつ、いったん閉店となった同店、東京駅から徒歩すぐの立地で展開するにはどう見てもあまりにも濃すぎる感じのする幻想文学棚を、店の特等席といっていい1階に長くかまえていたのは、このジャンルの同好の士であればよくご存じのことでしょう。なぜ同店の幻想文学棚がそのようなものになったのかがよくわかるエピソードです。「八重洲ブックセンター」事件、そのときの様子、見てみたかったなあ(笑)。くわしくはぜひ冊子で本文をあたってください。
こんな装丁・造本、他の社だと到底通らないよなあ、みたいな、立派な、というか、立派すぎるというか、とにかく目を引く装丁・造本が多いのも国書刊行会本の特徴ですが、本誌の座談会で《制作部としては言いたいことも多々ございますけれどもね》と制作担当の方が発言しているのを見て、ああ、と(笑)。
昨年、『本の雑誌』で出版社の社史の特集があったときに、当方も寄稿させてもらい、出版社社史の入手方法や種類などについて書いたんですが、その時にこの冊子があれば店頭無料配布されている社史の代表選手の一つとして取り上げたのになあ、などと今になって思ったりしています。
書店の店頭で無料配布されているのだから、いつでも簡単に手に入るだろうと思われる方もいるかもしれませんが、無料配布のものは、時間が経つと、有料のものよりもむしろ入手が難しい場合も多く、今回のように、周年記念刊行物の場合は、翌年にはもう入手できないのが普通だったりします。
市販されているものの場合は、図書館に入ることがあるので(上の『本の雑誌』の特集にも書きましたが、社史や出版資料に力を入れている図書館もあります)、そこで探すことができる場合もありますが、無料配布ものの場合はそういうものを対象にしている、ごく一部の図書館を例外として、通常、図書館では見つけにくいことが多いのです。
古書店はどうかというと、こちらもまた、出版関係資料や社史などを取り扱い対象にしているごく一部のお店をのぞき、通常は扱いがないでしょう。つまり、後になってから、欲しい、見たい、となっても、図書館でも古書店でも見つからない、ということになりがちなわけです。
なので、国書刊行会本の愛読者・ファンの方はもちろん、出版社の社史、出版の歴史に興味があるような方も、この機会にぜひ手に入れておくといいと思いますよ。(などと書きながら、時期的に、書店店頭での無料配布が終わってしまっているわけですが……。ほんと、すみません……。)
当方も、もちろん、国書刊行会本の愛読者の一人ですので、冊子紹介ついでに、我が家の本棚から、国書本の一部を。

↑〈文学の冒険〉からラテンアメリカ関係を。我が家の本棚は基本、前後2列で、巻数のある叢書類は横に並べず、前後に分けて並べていたりするので、一部だけが前に出ています。

↑ラテンアメリカ関係では〈ボルヘス・コレクション〉も。

↑SF読みとしては全部あげたくなる〈未来の文学〉ですが、絞るならこの3冊かな。


↑これも好きな並びです。っていうか、自分で並べているから当たり前なんだけど。