吉祥寺のBOOKSルーエ。階段踊り場のショーウィンドウではフェアや原画展などが展開されています。この秋に同店で開催されたフェアで、選書・コメントに協力させてもらう機会がありましたので、その内容をご報告しておきます。
- 「『定本 本屋図鑑』原画展・町の本屋と本のはなし」
期間:2022/8/12〜2022/9/30
本屋図鑑編集部の二人、夏葉社の島田潤一郎さんと空犬が本屋本のセレクトに協力、選書コメントを寄せたものです。2013年刊、旧版『本屋図鑑』掲載のBOOKSルーエの原画も展示されました。
フェアについては以前の記事でも紹介した通りですが、フェアが終了となっていますので、記録の意味も含め、当方と島田さん選書リストとコメントもあげておきます。島田さんが選書したものについても、コメントは空犬が用意したものです。コメントの《》は版元の内容紹介を引いた部分です。
空犬太郎選
- 辻山良雄『本屋、はじめました増補版』(ちくま文庫)
- 宇田智子『増補 本屋になりたい——この島の本を売る』(ちくま文庫)
- 田口幹人『まちの本屋: 知を編み、血を継ぎ、地を耕す』(ポプラ文庫)
- ジェレミー・マーサー『シェイクスピア&カンパニー書店の優しき日々』(河出文庫)
- 久禮亮太『スリップの技法』(苦楽堂)
- 朴順梨『離島の本屋ふたたび 大きな島と小さな島で本屋の灯りをともす人たち』(ころから)
- 竹田信弥『めんどくさい本屋—100年先まで続ける道(ミライのパスポ)』(本の種出版)
- 三砂慶明編『本屋という仕事』(世界思想社)
- 内沼晋太郎『これからの本屋読本』(NHK出版)
島田潤一郎選
- 宇田智子『増補 本屋になりたい』(ちくま文庫)
- 島田潤一郎『古くてあたらしい仕事』(新潮社)
- 堀部篤史『街を変える小さな店』(京阪神エルマガジン社)
- ハンミファ『韓国の「街の本屋」の生存探求』(クオン)
- 平野義昌『海の本屋のはなし』(苦楽堂)
- 石橋毅史『本屋な日々青春篇』(トランスビュー)
『本屋、はじめました増補版』
荻窪Title店主が綴った、本屋開業のすべて。本屋志望者必読の1冊。
『増補 本屋になりたい——この島の本を売る』
ウララ店主宇田さんは魅力的な書店人であるだけでなく、魅力的な書き手でもある。そのことがよくわかる1冊。元本で既読の方もぜひこの増補版を。
『まちの本屋:知を編み、血を継ぎ、地を耕す』
「まちの本屋」を考える/語るときにはずせない1冊。
『シェイクスピア&カンパニー書店の優しき日々』
作家が集ったことで知られる伝説の書店。二代目書店が現在も営業を継続中というのがすごい。
『スリップの技法』
新刊にはさまれた紙片=スリップ。急速に姿を消しつつあるスリップの活用法「だけ」でまとめられたユニーク過ぎる書店本。
『離島の本屋ふたたび 大きな島と小さな島で本屋の灯りをともす人たち』
同題の本屋本の第二弾。沖縄の本屋が多く取り上げられているのがうれしい。
『めんどくさい本屋—100年先まで続ける道(ミライのパスポ)』
100年の単位で本屋の未来を考えている本屋はなかなかいない。東京・赤坂の選書専門書店『双子のライオン堂』店主が描く本屋像。
『古くてあたらしい仕事』
夏葉社という個性的な出版社がどのようにしてできたのか。出版社の立ち上げに興味のある人は必読。
『街を変える小さな店』
元恵文社一乗寺店、現誠光社店主が、小さなお店と街との関わり、小商いについて語る。
『韓国の「街の本屋」の生存探求』
日本では独立系書店が増えているとされるが、お隣韓国の本屋事情はどうなのか。夏葉社島田さんも寄稿。
『海の本屋のはなし』
2013年に閉店となった神戸・元町の海文堂書店。100年近くにおよぶ店の記録。
『本屋な日々青春篇』
『「本屋」は死なない』『口笛を吹きながら本を売る』など、本屋を見つめ、本屋についで綴ってきた本屋ライターの、まさに「本屋な日々」。
- 「ビートルズ・デビュー60周年記念フェア Love BEATLES Do!」
期間:2022/10/1〜2022/10/31


(フェアの様子、撮影はお店の許可を得ています。)
フェアのラインナップは以前の記事でも紹介した通りですが、フェアが終了となりましたので、当方の選書分のコメントもあげておきます。
- 内田久美子訳『ビートルズ全詩集 改訂版』(ソニー・ミュージックパブリッシング)
- 安東滋『ビートルズのコード進行レボリューション#9~弾いて楽しむ9つのコード進行革命とその法則』(リットーミュージック)
- ジョン・レノン『絵本ジョン・レノンセンス 新版』(晶文社)
- デイヴィッド・シェフ『ジョン・レノン&オノ・ヨーコ プレイボーイ・インタヴュー1980完全版』(シンコーミュージック)
- ジェフ・バーガー編『 ジョン・レノン 音楽と思想を語る 精選インタビュー1964-1980』(DU BOOKS)
- 野口義修『ポール・マッカートニー作曲術』(ヤマハ)
- 本秀康『レコスケくん 20th Anniversary Edition』(ミュージックマガジン)
- ジョン・レノン、オノ・ヨーコ『ジョン・レノン ラスト・インタビュー』(中公文庫)
『ビートルズ全詩集 改訂版』
洋楽を聴く際に、サウンドが良ければ何を歌っているかはわからなくてもいい派と、歌の中身も知りたい派に分かれるとしたら、後者だったぼくは中高生のころ片岡義男の翻訳による角川文庫の『ビートルズ詩集』2巻本を小口が真っ黒になるまで愛読していた。今なら原文も読める対訳での歌詞全集である本書がいいだろう。ビートルズの音楽、とくにジョンが手がけた楽曲は、歌詞の中身を知っているといないとでは、響き方がまったく違うのだ。
『ビートルズのコード進行レボリューション#9~弾いて楽しむ9つのコード進行革命とその法則』
中高生の頃、『ビートルズ・サウンド』(絶版)という本を愛読していた。4人が生み出すサウンドのマジックの一端を、ギターを手にしたばかりの中学生に教えてくれた本だった。今なら《約200曲に及ぶビートルズ・ソングのコード進行パターンを徹底的に解析》した本書を推したい。演奏者、主にギター弾き向けの内容だが、楽典の知識がある程度あれば、楽器を演奏しない人でも楽しめるかもしれない。
『絵本ジョン・レノンセンス 新版』
『ポール・マッカートニー作曲術』のコメントに、「演奏者・作曲家として技量はやはりポールが頭一つ抜けている」と書いたが、作詞家として、散文家としての文才で言えば、4人のなかではなんといってもジョンだろう。そのジョンの「文才」ということばでまとめてしまうにはあまりにも独特な詩人・画家としての才気が全編に溢れ出したのが本書。初めて出会った中学生のころからの愛読書で、何度読んでもあきることがない。
『ジョン・レノン&オノ・ヨーコ プレイボーイ・インタヴュー1980完全版』
4人にはそれぞれ自伝、評伝、インタビューなど関連書が山ほどあるが、やはり本人の肉声が聞けるインタビュー本は資料価値が高い。なかでも、ジョンが生前に残したもののいくつか、『ラスト・インタビュー』(中公文庫;品切)とこのPLAY BOYインタビューは特別なものだと言っていいだろう。過去に2度書籍化されているが、旧版で割愛されていた部分も収録した「完全版」。ジョン派は必読。
『ジョン・レノン 音楽と思想を語る 精選インタビュー1964-1980』
『プレイボーイ・インタビュー』のコメントにも書いたが、ジョンの声、思いが直接伝わってくる感じがするインタビューは、死後何年たっても、というか時間がたてばたつほど、貴重なもの。『ラスト・インタビュー』として公刊されているものよりも後にとられた、実質最後のインタビューを含め、主要インタビューを19本収録した本書は、PLAY BOYインタビューだけでは物足りないというファンならば必読だろう。
『ポール・マッカートニー作曲術』
ビートルズの4人は全員が歌も演奏も作曲もこなせるのだが、演奏者・作曲家として技量はやはりポールが頭一つ抜けている。美しい旋律、流麗なピアノ伴奏、ユニークなベースライン。ポールの手がけた楽曲の数々を聴いていると、そのあまりの完成された感に、実はポールが譜面は読めないのだなどとはとても信じられないほど。天才の秘密の一端に迫れるかもしれない1冊。
『レコスケくん 20th Anniversary Edition』
静かなビートル、ジョージにはファンなら必読の自伝『ジョージ・ハリスン自伝 I・ME・MINE』があるのだが、残念ながら品切れで、ムックなどもみな入手困難。ならばいっそ、ジョージ愛あふれるマンガ家の手になるこの本こそが、ジョージのことを知るのにいいかもしれない。アナログレコードとビートルズをはじめとするオールドロックへの愛と蘊蓄に満ちた、ビートルズファンなら必読のマンガ。大好きです。
『ジョン・レノン ラスト・インタビュー』
4人にはそれぞれ自伝、評伝、インタビューなど関連書が山ほどあるが、やはり本人の肉声が聞けるインタビュー本は資料価値が高い。なかでも、ジョンが生前に残したもののいくつか、PLAY BOYインタビューとラスト・インタビューは特別なものだと言っていいだろう。この「ラスト」インタビューは死の2日前に収録されたもの。長く「ラスト」で通用してきたが、実際にはこの後にもインタビューが存在する。