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空犬通信

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往来堂書店の名物フェア「D坂文庫2022」の結果がおもしろい

しばらく前の記事で紹介した往来堂書店の名物フェア「D坂文庫2022」。フェアは8月末で終了となったんですが、先日お店を訪ねた際に、フェアの結果を店長の笈入さんに教えてもらいました。



結果については、お店の公式アカウントから正式な発表があると思いますので、順位をそのままあげたりはしませんが、お店の特徴がよく出たおもしろい結果になっていましたので、どんなものが売れたのかなど、結果の一部を紹介したいと思います(以下、フェアの結果、公開についてはお店の許可をもらっています)


2209 往来堂書店

まず、栄えある売上1位は、色川武大『離婚』(文春文庫)。ミュージシャンの尾崎世界観さん(がD坂文庫に参加すること自体、話題になっていましたね)のセレクト。色川武大は没後にも未発表作品が刊行になったりと、今でも人気の作家で、『離婚』は代表作のひとつ。とはいえ、フェアも何もなしに、ふつうに棚差しにしているだけでは、短期間にまとまった数が売れる本ではありませんから、フェアと選者と作品の組み合わせの力というか、妙というか、なんでしょうか。


色川武大はぼくも大好きな作家。『離婚』は大好きな作品の一つで何度も読んでいるんですが、自分の愛読作家・愛読本って、フェアに何を選ぶか考える際に意外と候補として思い浮かばず、自分では選べなかったりするものです。なので、他の人が選んでくれて、それが売れたりすると、なんだかうれしくなったりするんですよね。自分は何もしていないのに(笑)


売上2位はけっこう意外な本で、島田潤一郎さんセレクトの『近代絵画』(新潮文庫)。これ、小林秀雄の本ですからね。小林秀雄がこんな上位にくるとはなあ。近代絵画関連の展覧会といえば上野。上野に近いと言えば近いロケーションのお店ならでは、ということもあるんでしょうか。


1位、2位とも、もちろん本そのものの力があるのはもちろんなんでしょうが、選者の知名度・人気もあるのかなあ、と、この2冊を見るとそんなことも思ったりしました。島田さん自身の著書、『あしたから出版社』(ちくま文庫)も往来堂書店ではよく売れているようですからね。


ほかの上位ランク入りのタイトルを見ていると、意外なものもあれば、なるほどなあ、というものあって、おもしろい。たとえば、南伸坊『ねこはい』(角川文庫)。このタイトル、このテーマ(猫+俳句)の本がフェアの売上で上位に来るというのは、往来堂書店ならでは、という感じがします。お店の客層と購買傾向がよくあらわれている、という意味で。選者を見ると、元往来堂書店のスタッフ、渡辺さん。なるほど、と合点が。


「D坂文庫2022」の選者・参加者はみな往来堂書店に縁の深い人ばかりですから、客層や購買傾向などもちゃんとわかっている人が多いでしょう。もちろん自分だって、そのつもりでいるんですが、でも、こういう本は自分では選べないので、すごいなあ、さすがだなあ、などと勝手に感心したり驚いたりしています。


ちなみに、ぼくが今回セレクトしたのはこちら。



売上上位入りは最初からあきらめていたのか、と言われてもおかしくない、ニッチなテーマの本に見えるかもしれません。たしかに売上で上位入りはないかもしれないけれど、でも、D坂文庫参加者でこのタイトル、このジャンルを選んでくる人はいないだろうから、フェアの幅のようなものを少しでも広げられれば、という思いで(けっこう悩んで)選んだのでした。結果を見ると、売上ランクでは半分より上に入ったから、まあ健闘といってもいいでしょう。


ほかにも、あの本がこんなに!とかこの本はもっと売れそうだけどとか、ランキングを見ているだけですごくおもしろいんですが、ぼくからはこれくらいに。売上結果のランキングで、上位に来ている本を見ると、往来堂書店ならではだなあ、というのがすごく伝わってくるんですよね。お店の客層や購買傾向を多少なりとも知っている身には、なるほどなあ、というものになっているんです。こういうのを見ると、次に、どう工夫してやろうか、どう従来の客層や購買傾向を逸脱させてやろうか、などとこちらもやる気がわいてきたりするんですよね。うん、本屋さんの独自フェアはやっぱりおもしろい。


往来堂書店の名物フェア「D坂文庫2022」。フェアの展開は終了していますが、帯付き本が少し文庫棚に残っているほか、読書ガイドとしても楽しい同フェアの小冊子もまだ販売中ですので、フェアを見逃した方、遠方で行けなかった方はそちらをぜひどうぞ。フェア冊子は通販にも対応しているようですよ。


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