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空犬通信

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丸山健二、色川武大……田畑書店の本がすばらしい

本のつくり、というか、たたずまい、というか、がいいのです。




書影 夏の流れ書影 色川武大という生き方

田畑書店は、このところ、文庫よりわずかに大きい、小ぶりな判型の瀟洒な造本で、丸山健二作品や、話題を呼んだデヴィッド・フォスター・ウォレスの『これは水です』などを次々に世に送り出していますね。今回の丸山作品もしっくりと手になじむ判型と造本で、こういう本は長く手元に置きたくなりますね。


ところで、「夏の流れ」といえば、文學界新人賞受賞作にして芥川賞受賞作という、著者のデビュー作で、代表作の1つですね。ぼくは大学生の頃に出会っています。


出版社に入りたいと、思い立ったのが当時の大学生としては遅めで(マスコミ志望の学生は大学2年や3年のころから、マスコミ塾に通ったり、出版社や新聞社でアルバイトをしたりが当たり前、みたいな言われ方をしていました)
4年生になってから。しかも、本はそれなりの量を読んでいましたが、海外文学ばかりに偏っていて、ろくに日本文学を読んでいませんでした。まずは芥川賞と直木賞は片端から読むかと、リストにチェックを入れながら片端から読んでいくという(リストをつくって、古本文庫や中古レコード漁りをしていた身にはこういう作業は大得意)、、ほとんど修行みたいなこともしていました。やそうした修行を通して、好きな作家、好きな作品にいろいろ出会えたから、こういう読書も無駄ではないのだなあ、とあらためて想います。


丸山健二「夏の流れ」はそのような修行の最中に出会ったもので、タイトルもいいし、文章もいいなと印象に残った作品の1つでした。当時読んだ版はふつうの散文作品だったはずですが(手元にないので、記憶で書いていますが)、今回の「新編」は、断章形式に組み直されています。版元の内容紹介には、《デビュー作「夏の流れ」と、推敲を重ねながら初めて小説の面白さに目覚めたという第二の処女作「河」の2編に徹底的に手を入れ、改めて世に問う!》とあります。この新しいかたちでちょっと読み直したくなったのでした。


『色川武大という生き方』は、《没後30年、生誕90年を記念して編まれた『色川武大・阿佐田哲也電子全集』(小学館)の完結にあたり、福武書店版全集(1991~92年刊)の月報に寄せられた文章に、全集解題から立川談志、伊集院静を加えた33人の原稿を収録。その人間的魅力の粋が詰まった一冊!》 愛読者にとっては、贈り物のような、うれしい1冊ではないでしょうか。


色川作品に親しんできた人でも、全集の解題や月報まですべておさえているという人は多くはないはず。でも、全集読みには説明不要なことですが、月報や解題は宝の山なんですよね。それは今回の本の目次を眺めるだけでもあきらかでしょう。書き手の著作集や全集に含まれていない文章も少なくないし、なにしろ、個人全集に寄せた一文という文章の性格上、書き手への愛情や書き手との関係性がストレートに出た文章が多く、読ませるものが多いんですよね。


編集に手間がかかる割にはそれほど売れず、書店・図書館的にも、また読者的にも場所をとる全集は新刊で出る機会は激減ですし、古書市場でも人気がないせいか、値崩れが激しい状態になっています。一方、現在では電子全集なども出て、以前よりは場所的にも値段的にも入手自体のハードルは低くなった面もあります。とはいえ、それでも全集に手を出そうなどという人はよほどのマニアでしょう。


でも、全集をそろえようとまでは思わないが、その作家に思い入れがある、その作家にまつわる文章を読みたい、という読者はきっとそれなりにいるはずだろうと思うんですよね。


全集の月報などの文章を集めたものが、読み物としておもしろいものになるというのはすでに「発見」がされていて、講談社文芸文庫からも複数のタイトルが出ています。今後もこうしたタイプの編集本が続くといいなあ、と思います。


先に引いた内容紹介にあるように、現在では電子全集が小学館から出ていて、本書の《巻末には資料として、色川武大年譜/小学館色川武大・阿佐田哲也電子全集巻構成を収録》とあります。本書は、色川を知らない読者がいきなり手にとる本ではないでしょうが、色川作品で読み残しがある人にとっては、読み物として楽しめるだけでなく、色川作品チェックの資料としても便利なものになりそうです。


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