うーん……。どうなんでしょうか、こういうサービスって。
《要約の特性上、文芸書やマンガは扱わない》とありますから、あくまで実用的な本、ビジネス書などのみが対象のようです。なので、フィクション読みには関係のないことなのかもしれませんが、だとしてもやはり本好きとしては、そして本をつくるほう、送り出すほうに関わる身としては、こういうつまみ食いのような読み方を、個人が好きでするならともかく、お金をとって行うサービスとして展開するというのは、やはりどうにも気になってしまいます。
《仕上げた要約は、出版社や著者の確認も取り、クオリティーを担保する》とありますが、質を担保すれば要約でもいい、ということではないと思うんですよね。しかもなあ、出版社や著者が簡単にそういうものを認めてしまっていいのかなあ、とも。
記事には、《本の帯やネット書店の内容紹介を参考に購入しても、「思っていたのと違った」というミスマッチが少なくなかった》とあります。でも、そんなの、当たり前ですよね。本にはあたりもはずれもあるのだから。これは本にかぎったことではないでしょう。当たりだらけの商品やサービスなどないわけで、買ってみたら、試してみたら思っていたのと違っていた、というのは本にかぎらずいろいろな商品でふつうに起こりうることですよね。
当たりもはずれも、どんぴしゃなものも微妙なのも、わかりやすいものもわかりにくいものも、とにかく、いろいろなものにふれることで、読みの力が深まったり選球眼がきたえられたりしていく、そういうものではないのかなあ。当たりしか引きたくない、というのがそもそもどうなんだろうか。そんな気がしてなりません。
記事には、《要約が広まると「本が読まれなくならないか」懸念される。だが、出版取次大手の日本出版販売マーケティング部の加藤隼士さん(32)は「むしろ逆だ」と言う》とあります。でも、このようなやり方だと、簡潔に要約が可能なもの、とにかく、わかりやすいもの「だけ」が売れるような傾向を強めることにならないでしょうか。
アマゾンをはじめとするECサイトのレビューの功罪として、星がたくさんついている商品だけがより売れる、という傾向が指摘されて久しいわけですが、今回の施策も、そうした、星の数のような、ひとめ見てすぐに良し悪しなどが判断できるもの、そういうものの偏重を強めることになるのではないか、という気がしなくもありません。
本の良さは多様性にあります。いろいろなタイプ、いろいろな主張の本があっていいし、同じことを伝えるにも、ひとことで言うものもあれば、じっくり語るものがあってもいいわけです。要約によってわかりやすく魅力や内容が伝わるものだけが売れていくというのは、本の世界にとっても読者にとっても幸せなこととは思えないのです。
《「要約サービスは、デパ地下の試食のようなものです。試食してから買えば大きなハズレはない。ネット版の立ち読みサービスともいえます」》。
本を試食と比べられてもなあ(苦笑)。食品には遅効性のものなど基本的にありませんから(苦笑)、試食で食品を口に入れれば比較的すぐに、それがどんなものか、自分が食べたい、買いたいと思うかをすぐ判断できるでしょう。
でも、本はどうでしょうか。