古本好きにとっては、「悲報」としかいいようがありません。
荻窪を、というか、中央線沿線を代表する古書店の1つ、ささま書店が閉店となることが、4/1、同店のツイッター(@sasamashoten)で報告されました。
4/1付の同店のツイートです。《えーっと、急なのでエイプリルフールみたいなのですが、
明日4/2(木)〜4/5(日)
閉店セールします。
こんなときなのでみんな来てね!とは言えないのでひっそりやりますね》。
あさってのほうを向きすぎの奇策、マスク2枚が同日に報じられたために、影に隠れてしまった感がありますが、同店の名を知る本好きへの衝撃は大変なものがありました。このようなタイミングでなければ、もっと話題になっていたでしょうし、4/2(木)から始まる閉店セールにも多くの人が駆けつけることでしょう。
今回の件、コロナ騒ぎによる外出自粛の影響かというと、必ずしもそうではないようで、同店からはこのようなツイートもありました。
《コロナで時期こそ早まりましたが、もとから決まっていたことで、別にコロナのせいで閉店するわけではないので、同業各社の皆様におかれましてはあまりショックを受けないで頑張っていただきたいと思います》。
ショックは受けるだろうなあ……。利用者だけでなく、同業のみなさんも、そして古本にかぎらず、本の商売に関わる人に広く、ショックを与えるのではないかなと、そんなふうに思います。
ささま書店。中央線沿線にはいい古本屋さんがたくさんありますが、そんななかで、多くの古本好きがベストの1つ、中央線沿線屈指の名店の1つにあげるような、本当にすばらしいお店です。ぼくも大好きなお店の1つで、初めて利用したのがいつだったか覚えていないくらい、ずいぶん長く通ってきました。同店で買い物するのはいつも楽しくて、あるときは、こんなふうにツイートしていました。《荻窪の古本屋さん、ささま書店はいつ行っても、ほんと、楽しい。必ず何か買ってしまうお店》。
入り口には複数の均一棚が並んでいます。思わぬものが並んでいる充実の均一棚で、ここでいつも時間をとられて、店内になかなか入れなかった常連も多いことでしょう。
入り口から足を踏み入れると、店は思いがけず広くて、奥のほうにも棚が並んでいるのが見え、奥に進む前からわくわくさせられます。店内の品ぞろえは硬軟のバランス、ジャンルのバランスもよく、どのような趣味の持ち主でも楽しめそうなものになっています。
入り口すぐの右側壁面、天井までの背の高い棚にずらりと並ぶ文庫類。この棚をざっと見渡しだけで、同店の品ぞろえが、新古書店のそれとは異なる、古本屋らしいとしか言いようのないものであること、なのに、敷居の高い感じがまったくしないことが、すぐにわかります。その奥に続く棚をいちいち解説しているときりがないので、省略しますが、ビジュアルも文字ものも、古い本も新しめの本も、かたいほんもやわらかい本も、まじめな本もHな本も、とにかく、いろいろな本がそろっているのです。
そして、うれしいのが値付け。値付けをあらわすのに、「良心的な」という表現が使われることがありますが、同店のそれはまさに良心的な値付けでした。価値がわかっていなくて安くしているとか、そういうことではなく、本の価値に見合った値付けなのに、買いやすい値段になっているのです。古本探索をしていると、「この本がこんなにするのか!」という本・値付けに会うことはしばしばあり、別にそのような値付け自体が悪いわけでもないのですが、でも、ささま書店では、そのようなことはありませんでした。
閉店を知らせるお店のツイートを目にした昨晩、我が家の本棚をあらためて眺めてみました。これもそう、あれもそう……そんな感じで、ささま書店で手に入れた本が棚のあちこちにありました。同店にはほんとうにいい思い出しかありません。
思い出といえば。あるとき、ささま書店で本を見てお店を出たら、お店の前でTitleの辻山さんにばったり会ったことがありました。その日、辻山さんは、後にTitleになる物件をこれから見に行くところで、お店の前で、図面などの資料を見せてもらったりしたのです。そんなことがあったのを、ついこの前のことのように思い出したりしています。二人とも別に店のご近所さんではないのですが、ささま書店の前で会うのがごくごく当たり前のことのように感じられたのでした。
ささま書店の関係者のみなさん、たくさんの本と出会う機会を長く提供し続けてきてくださり、ありがとうございました。
お店は、4/6(日)で最後のようですが、同店のツイッターによれば、《日本の古本屋の方は、20日くらいまで載せておく予定ですし、店にあるものも少しアップしますので、よろしければのぞいてみてください》とのことです。
追記(4/3):この記事を上げたところ、知人が、お店に寄ってきたよ、と写真を送ってくれました。



「閉店」の貼り紙をのぞけばいつもと同じ様子。というか、外出自粛モードのなか、閉店の報を知った人たちが駆けつけたのか、いつもの平日夜より混んでいるように見えますね。