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空犬通信

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周年記念盤は悩ましい……今度は『アビー・ロード』

迷った末に、結局買ってしまいました。




ジャケ アビー・ロード 50周年記念盤

いくつかのバージョンがありますが、アナログ3枚組にしました。


『レコード・コレクターズ』(ミュージック・マガジン)10月号の特集、とくに森山直明さん「50周年記念エディション解説」と、レコードに同梱のブックレットに掲載されているケヴィン・ハウレットの解説とを参照しながら聴きました。音楽はそのまま楽しめばいいと思うのですが、周年記念盤、しかもビートルズのそれのようにいろいろと手が入っているものについては、解説本のたぐいがあったほうがより細部を楽しめるのではないかと思います。


書影 レココレ 1910

これまでの盤とどう違うかについては、専門家が雑誌の特集やWebにいろいろ書いていますから、素人(かつ安い耳の持ち主)がよけいなことを書いたりする必要はまったくないのですが、一応、それなりにビートルズを長く聴いてきた音楽好きとして、おすすめかどうかを聴かれたら、ビートルズファンなら買い、と言いたいかなあ。


どのエディションにするか、毎回ファンは悩まされることだろうと思いますが、ぼくはアナログ派なので、アナログにすることは早々に決めていましたが、迷ったのはセッションディスク付きにするかどうか。迷った末、セッションディスク2枚付きの3枚組エディションにしました。これが正解で、ビートルズの熱心なファン、本盤に思い入れのあるファンはぜひセッション付きにするといいのではと思います。


聞き所はたくさんありますが、B面メドレーを、もともと想定されていたかたちでエディットした「The Long One(Trial Edit And Mix)」が聴けるだけでも価値があると言っていいかも。「Her Majesty」が「ミーン・ミスター・マスタード」と「ポリシーン・パム」の間に入っているのが聴けますし、オーケストラのダビング前ということで、まるで4人がメドレーをライヴで演奏しているかのような感じに聞こえなくもありません。


オーケストラといえば、「サムシング」と「ゴールデン・スランバーズ〜キャリー・ザット・ウェイト」のオーケストラパートのみの演奏も収録されています。これがもうなんというか大変美しい。


これらセッション曲については、先にあげた『レココレ』の解説とレコードのブックレットがくわしくて、いろいろ教えられるところが多いのですが、違うことが書いてある箇所もありました。


たとえば、セッションディスクに入っている「オールド・ブラウン・シュー」(テイク2)。『レココレ』には《ルーイスン本によると》との但し書き付き(マーク・ルーイスン『ザ・ビートルズ・レコーディング・セッションズ』のこと)ですが、《リンゴがドラム》となっていますが、ケヴィン・ハウレットのブックレット解説ではリンゴが参加できなかったのでポールがドラムを叩いたとあります。まあ、マニア以外にはどうでもいいことなのかもしれませんが……。



『レココレ』の特集でも、青山陽一さんや萩原健太さんが分析していますが、こうしてじっくり細部にも気をつけながら聴くと、『アビー・ロード』の楽曲、どれもこれもあらためてよくできているなあ。ビートルズのスコアやコード譜を持っている人は、眺めながら聴くと、発見がいろいろあっていいかも。


今さらではあるんですが、ジョージの「サムシング」なんて、ほんと奇跡のような曲だものなあ。ドラムのフィルに続く、イントロのあの有名なフレーズ一発で名曲決定ですよね。『レココレ』の特集で青山陽一さんも書いているけれど、あのC→Bのベンドダウンが、ものすごく効いていて、あれは、出てこない音遣いなんだよなあ。


この曲はメロディも、バッキングも完璧なんだけど、ギタリスト的にうれしいのは、ギターソロがとにかくすばらしいこと。ジョージのギターについては(下手だのどうのと)いろいろ言う人も多いし、バンドメイトのポールにまでディスられたり(涙)していたわけだけど、でも、そういう輩にはこのソロを聴かせたいよね。このメロディセンス。ギターをうたわせる、こまかいベンド(チョーキング)の技。


ビートルズの楽曲のなかで、最高峰のギターソロというだけでなく、ロック・ポピュラーで歌がメインの楽曲のなかでも、最高峰のギターソロの1つといっても言い過ぎではないのではと思うのです。


ギターソロのコード進行を示します。(以下、ちょっとギターの話が続きます。)
|C   |C△7   |C7       |F      |
|D   |G7     |Am Am△7 |Am7 D9 |
|F E♭ G on D|


ギターを弾く人なら、実際に弾いてみるとわかると思いますが、技巧的なことは何もしていないように聞こえるのに、小技が効いていて、原曲のような雰囲気を出そうと思うと意外に難しい。音色もクリーンなので、歪みでごまかすこともできないしね。ブルース系ギタリストが放つ、いわゆるスクイーズと呼ばれる振幅の激しい、エモーショナルなベンドではなく、あくまで、メロディラインを際立たせるための技としてあちこちでベンドが使われていますが、(ポジションの解釈によって変わりますが)人差し指でのベンドが多用されているので、薬指で豪快に決めるベンドばかりに頼りがちな人には意外に弾きにくいかも。


音の選び方のセンスも抜群で、3小節目の7th(Bフラット)が効いているし、そのC7のところでは7thをベンドしたくなるところを、CからD(9th)、DからCをベンド。このあたりはイントロで使われている音遣いと同じ考え方でしょうね。


6小節目のG7での、3拍目と4拍目の3音もコード構成音的にはちょっと不思議な感じのするクロマチックなフレーズ。次のAmで、いきなりポジションが下がって、ブルージーなベンドアップ&ダウン、そこからまたポジションがあがって、イントロのキメフレーズで閉じるという、鮮やかでドラマチックな構成になっています。


ジョージはテクニックを売りにする技巧派ではないし、腕的にもキャラ的にも、スーパーギタリストタイプではありませんでした。でも、だからなんだというのか。こんなソロを弾いてしまう、弾けてしまうギタリストに他にいったい何を求めようというのだろう。ってことですよね。


さらにいうと、このイントロの部分、F→E♭→G→Cで、キーがCなのに、E♭をはさむのが不思議な感じなんだけど、これ、ギターで弾いてみると、Fのコードをを1フレットで始める場合でも、5フレットで始める場合でも、フィンガリングも音の並びもきれいで、ああ、ギタリストの感覚だよなあ、と長く思っていたのですが、『レココレ』の特集には、ジョージはこの曲をピアノでつくったと書いてあって、あらためてびっくり。ビートルズは、ジョンもポールもジョージも、弦楽器と鍵盤の両方を弾けるし、作曲は曲によって楽器を使い分けてるから、そのあたりの分析もおもしろいですね。


コード進行の分析は、ふだんから好きなんですが、今回、あらためて、というか久しぶりにというか、で『アビー・ロード』にじっくりと取り組んでみたら、ほんと、30年以上聴いてるのに、いろいろ発見が多くて、実におもしろいのです。こんな年になってしないで、中高生のうちにもっと勉強しておけばよかったなあ、って話なんですが(苦笑)


「サムシング」以外の曲にもふれておきましょう。


ポールではなくジョンがつくったというのが意外だとされることの多い「ビコーズ」。「月光のソナタ」の影響を受けている云々は有名な話だけど、ただのクラシックのまねごとに終わっていない。ジョンお得意の変拍子ではなく、ふつうの4拍子なんだけど、6と2に分けて弾いているので、ちょっと変拍子っぽい感じにも聞こえるメインのアルペジオがいいし、ハープシコードとエレキを重ねているのもいい。曲調的にはストリングスを重ねたくなるところですが、途中でシンセ(モーグ)が入ってくるのもいいですね。


サビを含む各パートの最後の和音がディミニッシュという、終止感をあえておさえた構成もこの曲の感じに合っています。しかも、アルバム構成的にみると、1曲を通して軽やかなアルペジオが鳴り続ける「ヒア・カムズ・ザ・サン」の後に、同じアルペジオでバッキングを構成しながらも、まるで雰囲気の違う曲を持ってきて、あえてディミニッシュで不安な終わり方をしたところに、次からメドレー。このあたりの流れの妙は、「アルバム」という単位で音楽が聴かれなくなってきている現在ではあまり意味をもたないことなのかもしれないですが、こうして通して聴いてみると、やはりいいんですよね。


アルペジオと言えば、A面ラストの「I Want You (She's So Heavy)」の、8分の6拍子パートの不穏な響きのアルペジオもいいですね。本盤は捨て曲なしのアルバムですが、個人的にいちばん好きな曲は、この「アイ・ウォント・ユー」です。ジョンのいいところやばいところが全開だし、他の3人も含めて演奏がかっこいいし、後半の繰り返しにノイズが暴れ回るあの構成。ほんと、たまらんです。ビートルズに行儀のいい音楽というイメージしかない人にはフルコーラスで(それも大音量で)聴かせたい1曲です(笑)



……と、こうして書いていて気づきましたが、「サムシング」も「ビコーズ」も、今回のアニバーサリーエディションでどうなったか、ではなく、曲の構造の話ばかりしてしまっていました。


ジャケ アビー・ロード 日本盤

↑こちらは中高生のころから愛聴してきた日本盤LP。


ジャケ アビー・ロード ピクチャージャケ アビー・ロード ピクチャー裏

↑アナログではこんなのもの持っています。ピクチャー盤。帯付き日本盤も出ていたようですが、手元にあるのはアメリカ盤。それにしても、このジャケ・フレームのデザイン、なんでこうなっちゃったんでしょうね。まったく内容に合っていないという……。


来年は、『レット・イット・ビー』のアニバーサリーエディションも出るんだろうなあ。いったい、死ぬまでに、あとどれだけお金を使うことになるんだか(苦笑)。ビートルズの熱心なファンで居続けるのはなかなかに大変だということですね。



なんてことを書いていたら、この稿の準備中に、またまたビートルズ関連で、こんなニュースが流れてきましたよ。



どんな盤かというと。《忠実に再現された日本を含む世界各国盤のピクチャー・スリーヴに23枚のヴィニール・シングルが収録された完全生産限定のボックス・セット》。


「なんだ、ビートルズのシングルなら、もちろんもう持ってるよ」というファンも多いと思いますが、くせ者なのが《日本を含む世界各国盤のピクチャー・スリーヴ》というところ。これ、シングルによって、どの国の版かが違っているんですよね。当然、シングルによっては、知らないジャケ、見たことないジャケの盤があるわけです。


日本盤シングルは全部持ってる、UK盤は持ってる、シングル・ボックスは持ってる、などなどというファンは多いと思いますが、さすがに、ポルトガルだの南アフリカだのイスラエルだのまでおさえている人は少ないでしょうし、だいたい、そのような買い方をする意味もないしですしね。でも、こうして、各国のバラエティを楽しめるようなかたちで集められてしまうと、とたんに気になってしまうんですよね……。


UKのシングルは22枚では?という点に気づいた方もいると思いますが今回は、《ボックス限定として「フリー・アズ・ア・バード」「リアル・ラヴ」の両A面シングルを収録》ということで、これを入れて23枚。


ちなみにぼくは、UK盤のシングル・ボックスを所有しています(関係ないけど、EPボックスも持ってます)。日本盤のシングル(後期に出たジャケが共通のやつではなく、「当時盤」などとされる、その前のもの)も、残念ながらコンプではないんですが、ばらでいろいろ所有していたりするんですよね。そのようなファンは、今回のこのボックス、いったいどうすれば(泣)


《付属の40ページのブックレットには、写真やチケットの半券などに加えて、ビートルズの研究家のケヴィン・ハウレットの詳細なエッセイも掲載されている》というのも気になるしなあ……。


ほんと、(よくも悪くも)ファン泣かせとしかいいようのない企画ですよね、これ。



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