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空犬通信

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『乱歩謎解きクロニクル』……読み応えのある乱歩関連新刊が出ました

久しぶりの乱歩関連ニュースです。刊行自体は半年ほど前のことになりますが、乱歩関連で、読み応えのある新刊が出ましたよ。




書影 乱歩謎解きクロニクル

版元の内容紹介によれば、こんな内容です。《乱歩はなぜ自伝を執筆したのか? そして乱歩最大のトリックとは? 「本格探偵小説」「怪奇趣味」「猟奇趣味」……容易に全体像を掴ませない作家・江戸川乱歩の生涯を、さまざまな角度から辿ることによって、その秘められた側面をあぶりだす画期的な謎解き評伝》。


著者は名張市立図書館乱歩資料担当嘱託を務めた方で、「江戸川乱歩リファレンスブックの3冊、『乱歩文献データブック』『江戸川乱歩執筆年譜』『江戸川乱歩著書目録』の編者ですから、我々乱歩読みにとってはキーパーソンの一人といっていいでしょう。


そのような方の手になる文章がおもしろくないわけがありません。書き下ろしではなく、各所に書かれた文章をまとめ直したもののようですが、目次には、
「涙香、「新青年」、乱歩」
「江戸川乱歩の不思議な犯罪」
「「陰獣」から「双生児」ができる話」
「野心を託した大探偵小説」
といったタイトルが見えます。基本的には、乱歩についての文章が集められていますが、「「鬼火」因縁話」と、横溝正史関連のものも一本収録されています。


乱歩関連のものは、見るからにだめそうだったり、興味の持てないつくりになっていたり、高額で買えなかったりがないかぎりは、ほぼ必ず、買って目を通してきました。なので、それなりにすれた読者ではあるのだろうと思います。だから、残念なことにというかなんというか、乱歩関連書の新しいものを手にしても、知らなかったことがたくさん書かれている、新情報が満載である、ということで驚かされることは、そんなに多くはありません。(直近の例外でいうと、この記事で紹介した評伝2冊は発見の多い本でした。)


で、本書ですが、予想外に、というと書き手に失礼かもしれませんが、大変おもしろく読みました。内容紹介にある「乱歩はなぜ自伝を執筆したのか?」「乱歩最大のトリックとは?」を解き明かしていくあたりは、乱歩関連文献を多く読んできた人にも新鮮に読めるものになっているのではないかと思います。さすがは「名張市立図書館乱歩資料担当」、乱歩の基本レファレンス3部作を編んだ人の本領発揮という感じがします。


惜しむらくは、タイトルが内容に合ってないような気がしないでもないことでしょうか。たしかに、執筆動機など、乱歩にまつわるいろいろな「謎」が解き明かされていますし、著者自身があとがきに書いている通り、巻末には作品年譜もあり、クロニクルとしての側面があるにはありますから、別に間違いではないとは思うのですが、単なる「謎解き」を超えた記述になっているように思いますし、正史の「「鬼火」因縁話」も含まれるなど、カバー範囲が幅広いことも思えば、もう少し強者の乱歩読みをぐっと引きつけるようなタイトルの付け方があってもよかったのかなあと、そんな気もします。だからといって、ここで代案が出せるわけでもないのですが……。


ところで。乱歩関連本は常にチェックしていますから、これまでも見落としのようなものはほとんどなかったのですが、この本、今年の3月に出た新刊なのに、新刊案内でも店頭でも気づかなかったんですよねえ。こういう小さな版元の新刊にも目配りがされている東京堂書店の軍艦でも見かけなかった気がするなあ。本書は、ブログ『探偵小説三昧』を主催されているsugataさんのツイート(@sugatama)で気づいた次第。探偵小説読みのsugataさん紹介記事は、当方の雑な紹介とは違って、本書が丁寧に紹介されていますので、ぜひそちらもチェックを。


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