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空犬通信

本・本屋好きが、買った本、読んだ本、気になる本・本屋さんを紹介するサイトです。

商業誌では初めて?!……『本の雑誌』でスリップ(短冊)特集

「スリップ(短冊)」が商業誌のメインの特集になるというのは、ひょっとして初めてのことでしょうか。




書影 本の雑誌 スリップを救え

特集は「スリップを救え!」。版元の内容紹介を引きます。《スリップをご存じだろうか。そう、購入前の本に挟まっている細長い紙片である。表面が補充注文カード、裏面が売上カードになっている大変便利で本を売るのに欠かせない(はずの)この紙片が、なんといま絶滅の危機にあるという。この春、角川文庫が突如、スリップを廃止、他社にもそれに追従する動きがあるのである。この流れは本の世界に何を及ぼすのか!?》。


出版・書店関係者にとっては大事な存在ではありますが、はたして、それだけで雑誌の特集が成立するのか、と心配になるところ。でも、中身のほうは、《戸田書店掛川西郷店の高木久直店長による巻頭言「このままスリップを無くしていいのか?」から、出版業界勉強会「でるべんの会」とスリップレス化を進める一迅社への突撃取材、現場の様々な使い方ルポにスリップの歴史、書店員の本音対談にスリップ連想法、そして変わり種スリップまで》と、スリップにまつわるいろいろを広くカバーしたものになっているようで、まさに《スリップのすべてに迫る特集》とのことです。


書き手と記事は以下の通りです(敬称略;版元のサイトの掲載順)


  • 高木久直「このままスリップを無くしていいのか?」
  • 永江 朗 「突撃取材/“でるべんの会”と一迅社に行く!」
  • 「スリップを制す者は棚を制す!
  • 空犬太郎「スリップの歴史」
  • 「書店員座談会/スリップはお客様の足跡なのだ!
  • 矢部潤子「20世紀の書店員はスリップの夢を見るか?」
  • 久禮亮太「スリップ連想法」
  • 高頭佐和子「変わり種スリップ大集合!」

上の一覧にある通り、わたくし空犬も寄稿させていただきました。テーマはスリップの歴史。この特集テーマがめずらしく感じられるように、スリップについてはその歴史をまとめた文献というのは当方の知るかぎりないはず。『本屋図鑑』でスリップにふれたときに、いろいろ調べたのですが、そのときも苦労した記憶があります。


今回、このテーマでご指名を受け、あらためて調べ直してみました。やはり情報自体が少なくて、紙幅の関係(と、もちろん当方の技量の問題)もあって、表面をなぞるくらいのものにしかできませんでしたが、どのような経緯で考案されたのか、考案当初のスリップがどのようなものであったのかなどにふれていますので、興味のある方はぜひご一読を。スリップについては、機会があれば、もう一度きちんと調べて、文章にして残しておきたいなあ、などという気分にさせられています。


本の雑誌 2018年10月号 スリップ

↑『本の雑誌』424(2018年10月)号のスリップ。


当方の担当記事の出来はともかく、特集は、現役の出版関係者が読んでも勉強になるものになっています。それでいて、専門的になりすぎ過ぎることのない内容で、スリップがどのようなものであるのかを知らない一般の本好きの方が「スリップ」についてくわしく知ることのできる貴重な資料になっています。本好きのみなさんは、ぜひ手にとってみていただければと思います。


『本の雑誌』は9/10ごろの発売で、店頭に並び始めるのは、翌11日から12日ごろでしたが、偶然なのかなんなのか、同じタイミングで、スリップのことが(めずらしいことに)全国紙の記事になっていました。



記事の一部を引きます。《書籍に挟まれた短冊状の伝票が消え始めた。出版業界では「スリップ」と呼ぶが、出版不況でコスト削減などを理由に挟み込むのをやめる出版社が出てきた。書店ではPOS(販売時点情報管理)が普及し、スリップに頼らない注文・在庫管理ができるが、一部では惜しむ声も出ている》。


《出版社も書店の売れ行きを把握でき、販売に応じた報奨金を書店に支払っていた。ただ書籍の受発注システムが整備され、書店業務の自動化やオンライン化が進み、スリップの重要性は薄れていた》。


《出版社がスリップを廃止する理由》として、記事では《コスト削減だ。出版社は、取次会社から値上がりした物流費の転嫁を26年ぶりに要請されている。少しでもコストを抑えようとスリップの廃止を決めた》としています。このあたりの事情は、『本の雑誌』の特集でもふれられていますので、ぜひ『本の雑誌』の特集と合わせて読まれることをおすすめします。


スリップは、通常は会計時に書店員によって本から引き抜かれ、回収されますので、購入者の手元には残りません。なので、一般のお客さんの目にはふれないものでしたが、オンライン書店ではスリップを入れたまま発送するところが多いせいか、電車内で本を読んでいる人が、しおり代わりにでもしているのか、スリップをはさんだままにしていたりするのを見かけたりします。最初のころは、ぎょっとしたものですが(なにしろ、スリップは会計前の商品であることを示す重要な目印だと教わってきましたから、かつては、そのような光景は見られるはずがないものだったからです)、オンラインでの買い物が当たり前になった今は、別にめずらしいことではなくなりましたからね。


スリップがこのまま姿を消してしまうのか、復権があるのかどうか、わかりませんが、今回の『本の雑誌』の特集と日経新聞の記事は、本の流通やコストの問題について、いろいろ考えるいいきっかけになるのではないかと思います。


この記事で紹介した久禮亮太『スリップの技法』(苦楽堂)を併せて読むと、スリップについて、さらに理解が深まると思います。おすすめです。



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