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空犬通信

本・本屋好きが、買った本、読んだ本、気になる本・本屋さんを紹介するサイトです。

『星をつなぐ手 桜風堂ものがたり』

地方の小さな本屋さんを舞台にした『桜風堂ものがたり』の続編です。




書影 星をつなぐ手

版元の内容紹介を引きます。《郊外の桜野町にある桜風堂書店を託され、昔の仲間たちとともに『四月の魚』をヒット作に導いた月原一整。しかし地方の小さな書店であるだけに、人気作の配本がない、出版の営業も相手にしてくれない、という困難を抱えることになる。そんな折、昔在籍していた銀河堂書店のオーナーから呼び出される。そのオーナーが持ちかけた意外な提案とは。そして一整がその誠実な仕事によって築き上げてきた人と人とのつながりが新たな展開を呼び、そして桜野町に住む桜風堂書店を愛する人たちが集い、冬の「星祭り」の日に、ふたたび優しい奇跡を巻き起こす》。


(本書は、ネタバレがどうこうというタイプのお話ではありませんが、物語後半の出来事などにも少しふれていますので、未読の方はご注意ください。)


いまの書店が置かれている状況はきわめて厳しいものです。リアルに書こうと思ったら、読んでいて楽しい話になりようがありませんし、かといって、現実に書店が直面している問題に正対せずに物語をつくったとしたら、それはつくりものめいたものにしかならないでしょう。


そのバランスをどうとるか、が、本屋を舞台にする物語の肝だといっていいかと思いますが、前作が多くの支持を、それもこの業界で働く多くの人からの支持を得た(本屋大賞にノミネートされ、5位になっています)のは、まさにそのバランスの取り方が絶妙であったからだろうと思うのです。


今回も、小さなお店の新刊の仕入れなど、難しい問題をうまく物語にまとめあげているなあと、とそんなふうに思いました。扱いが難しいという点では、ある意味、前作以上に試されるところ大だったのではと思います。前作で、若き書店人が独立して小さなお店を始めることになったわけですが、難しいのは、スタートよりも、そのお店を継続維持していくことのはずで、当然、その様子をどう描くかも、前作のとき以上に大変なことであったろうと思うからです。


古巣でもあるローカルチェーンの支店になること、売り場を拡充すること、本に知見のある人物の手助けを得ること、ブックカフェ化を検討すること、話題を呼べるようなイベントを手がけること、それも地域の人・店舗・施設を巻き込んだ地域密着型のイベントを手がけること。いずれも、リアル書店が現実にとっていたり、チャンスさえあればとりたいと思っていたりするような施策でしょう。それらが、物語のなかで、うまくつながっているような、そんな印象を受けました。


前作の読者が気になっていたであろう、登場人物たち同士の(とくに男女間の)思いの交錯も、それとなく、しかし、きっとこうなるであろうかたちで描かれていますから、そうした部分にも、ほっとしたり喜んだりする読者がたくさんいそうです。


この物語は、多くの本屋さんを実際に訪ね、たくさんの書店人たちとの交流を重ねてきた書き手にだからこそ、可能になったものなのかもしれません。この書き手の本屋への思いは、このような文章やインタビューにもよく現れています。



というわけで、本と本屋さんを愛する人に、広くおすすめしたい1冊です。前作を読んでいる方におすすめなのはもちろんですが、前作を読んでいない方でも、お話のうえではこちらを先に、またこちらだけを読んでも問題ありません。気に入ったら、前に戻ってみるのもいいですし、同じ舞台の『百貨の魔法』(ポプラ社)を手にするのもいいでしょう。



本の紹介よりも先に記事にしてしまいましたが、本書の刊行記念として、こんなイベントが開催されます。



ところで。本作には「風猫」=藤森章太郎という、元編集者が出てきます。当方がモデルになっていると、村山さんのあとがきにはありますが、なんというか……かっこよすぎですね(笑)。当方との共通点は、「(元)編集者」「ギター弾き」「特撮好き」の設定三点「だけ」じゃないか、と、当方のことを知る人からは言われそうです(笑)。名前も、藤子マンガと石森マンガで育った身には、恐れ多いようなものに(笑)


上のイベントのゲストに呼んでいただいたのは、こういう事情もあってのことなんですが、村山先生のファンのみなさん、桜風堂シリーズ愛読者のみなさんから、「イメージと違う!」「だまされた!」「わたしの風猫を返せ!」などと怒られないか、いまから戦々恐々です(笑)



追記:ちなみに、本書を手にしたのは7月28日で、読み終えたのは翌日29日です。7月29日は、我が町吉祥寺の本屋さんの1つが、営業を終える日でもありました。もちろん、ねらってそのようなタイミングで本を手にしたわけでもなんでもありませんが、パルコブックセンター吉祥寺店の最終営業日に、この物語を読み終えた、というのは、何かの縁のようなものなのかもしれないなあと、そんなことを思ったりもしたのでした。




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