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空犬通信

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小沼丹の「新刊」ラッシュ?! 【更新】

先日、こんな本を買いました。少し値ははるのですが、好きで読んできた作家の、入手困難な作品を収めたもので、しかも初版1000部限定などと言われたら、手にしないわけにはいきません。




書影 不思議なシマ氏

「小沼丹生誕百年記念刊行」の第3弾として刊行されたもので、版元の内容紹介には、《生誕100年 小沼文学の異貌をあらわす、変幻自在の娯楽作品集。全集単行本未収録の5篇》とあります。


収録作は、「剽盗と横笛」「不思議なシマ氏」「ドニヤ・テレサの罠」「カラカサ異聞」「初太郎漂流譚」の5編で、時代ものにミステリーにと、バラエティに富んだ娯楽系の作品が集められています。


小沼丹といえば、著者を思わせる人物が登場する、「大寺さんもの」と呼ばれる一連の私小説作品群を思い浮かべる読者も多いでしょう。ぼくも「大寺さんもの」は長く愛読していますが、このジャンルのファンならば、小沼はこんなのも書いていたのかと、思わされることになるかもしれない、そんな作品集になっているようです。


巻末には、全集の編集委員をつとめた大島一彦氏による解説も収録。小沼丹の前期と後期の作風の違いなどがコンパクトにまとめられています。


ところで、この小沼丹、本好きに長く地道に愛されてきた作家ですが、それにしてもこのところ、「新刊」が続いていますね。つい先頃、同じ幻戯書房から、未刊行少年少女小説集2冊が出たばかりです。



さらに、今回の『不思議なシマ氏』の帯には、純文学短篇集と随筆集が続刊予定とあります。講談社文芸文庫の『藁屋根』(大寺さんものです)も3月に出たばかり。


書影 藁屋根

小沼丹の「新刊」が読めるのは、とくに全集未収録だったり文庫になっていなかったりする作品群を読めるのはうれしいけれど、さすがにこれだけ続くと、お金のほうが大変だなあ。さしもの小沼丹ファンも、うれしい悲鳴がただの悲鳴になりそうなペースと金額ですからね……。


でも、愛読者を自認する以上、ここでお金を惜しんでどうする、という気も当然するわけで。やっぱり、全部買うことになるんだろうなあ……。


最後に、大島一彦さんの解説から一文を引いておきます。《本書に収められた五作品はどれも楽しく読める娯楽作品であり、読者は先に出版された『春風コンビお手柄帳』と『お下げ髪の詩人』を併せ読まれるなら、前期の小沼丹がいかに多様な「面白い話」を作らうとしてゐたかがよく判り、後期の小沼丹だけからでは窺ひ知れない側面を見出すことであらう》。


……小沼丹ファンには、全部買うという選択肢しか残されていないことがようくわかりますね(苦笑)



追記(8/14):本稿ですが、幻戯書房の一連の小沼丹「新刊」の値段が高いということが言いたくてものしたものではありません。


本の送り手側に所属する者として、高い本には高い本なりの、安い本には安い本なりの、値付けの理由というか事情があることは、充分過ぎるほど承知しています。また、本を買う側としても、いまの日本の新刊が高いとはまったく思っていません。


ただ、それはあくまでも個人の印象です。なかには、2000円を超えたら、3000円を超えたら、内容や出版の事情に関係なく、「高い!」と感じる方もいるでしょう。また、1冊ならともかく、それが続くと、やはり「高い!」と感じる方が出てくるでしょう。


ある作家の単行本が出たとして、今月は2冊で5000円超、翌月は1冊で4000円超、(次がいつかは明示されていませんが)さらに続刊が複数あって、おそらくは同じくらいの値付け、となると、これは、熱心なファン以外は簡単には買えないペースと金額になってしまっていると言われてもしかたないところでしょう。


また、小沼丹の名前に反応するような本好き本読みは、ほかにもおそらくは買いたい本読みたい本がいくつもあるでしょうから、これだけにお金をつぎこめばいいということではないでしょう。


つまり、本の内容「以外」の理由で買うのをあきらめてしまう人がいるのではないかと心配させられるのです。そんなふうに、買い手をあきらめさせたりすることがないような工夫はできないか、刊行ペースや値付けの工夫はできないのかなあ、と、そんなことを思って書いたのが上の記事でした。


ちなみに、ひとりの小沼丹読みとしては、高くてもなんでも、本が読めるのはうれしいし、「新刊」は大歓迎です。結局、全部買うことになりますしね。


物故作家で、すでに複数の著作集・全集が出ている作家の「新刊」が出ること自体が、ふつうではありえないことなわけです。ファンは、そのような出版が今後も可能になるよう、本を買うことで、すばらしい本を世に送り出してくれた版元に感謝の気持ちを伝えたり、応援したりするのがいいのではないかなあ、と、そんなふうに思うのです。


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