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空犬通信

本・本屋好きが、買った本、読んだ本、気になる本・本屋さんを紹介するサイトです。

『市場のことば、本の声』……ウララの宇田さんの新刊を読む

読み終えて、すぐにもう一度読み返したくなるような、そんな1冊でした。




書影 市場のことば

市場の古本屋ウララの店主、宇田智子さんの新刊エッセイです。版元の内容紹介にはこのようにあります。《沖縄の本を地元で売ることにあこがれて、那覇に移住して9年。店先から見えてきた、そして店先で考えてきた、本のこと、人のこと、沖縄のこと……。古本屋の店主にして気鋭のエッセイストが新たな視点で綴る、珠玉のエッセイ集》。


読み始めたら、止まらなくて、買ったその日に早速読了。掲載紙誌で読んでいる文章も多いのですが、既読未読再読に関係なく、楽しく読める本になっていました。


ご覧の通り、カバーもいい雰囲気ですが、本体がこれまた美しいので、読むときはぜひカバーをはずして読むことをおすすめします。


この空犬通信でも紹介した宮里綾羽さんの『本日の栄町市場と、旅する小書店』が出たのが昨年、2017年の11月。沖縄の、市場の、古本屋に関わる女性による、という共通点の多い本が、わずか半年ほどの間に2冊も出たことになります。すごいことですよね。さらに。どちらも本屋さんの本なのに、いわゆる本屋本に(いい意味で)なっていないという共通点もあります。


そう、本屋本ではありませんから、本書には、店内の様子や同店の品ぞろえがわかる写真やイラストは掲載されていません。宇田さんのお店がどういう店なのか、宇田さんがどういう書店人なのか、この本は、そういうことを伝えようという本ではないのだと思います。


代わりに、というわけではありませんが、お店のことをご本人の本以上に鮮やかに伝えてくれる本があります。今年5月に発売になった、『本の雑誌』の巻頭人気連載のうち、書店の棚を集めてまとめた本の雑誌編集部編『ニッポンの本屋』(本の雑誌社)に、市場の古本屋ウララが登場しています。


書影 ニッポンの本屋

『市場のことば、本の声』は、本屋のオペレーションや、本屋の品ぞろえのことを書いた本ではありませんので、棚の絵がないと話がわからないようなところはまったくないのですが、このすてきなエッセイの書き手がふだんどんな店にいるのか、どんな本を売っているのかを、読前読後に写真で確かめることで、『市場のことば、本の声』に書かれていることが違ったかたちで伝わってくるかもしれませんし、同書を読む楽しみがもしかしたらより増すかもしれません。


ちなみに、『ニッポンの本屋』には、沖縄からは、石垣の本屋さん、山田書店/タウンパルやまだも登場しています。『本屋図鑑』(夏葉社)にも登場しているお店です。



ところで。『市場のことば、本の声』にも少し関連の話が出てきますが、宇田さんというと、いつかの記事に書いた、山之口貘のこと、全集が出たときにたときのことを思い出します。


『市場のことば、本の声』を読み終わったら、今度は、貘さんの本がが読みたくなりました。山之口貘を読むときは、講談社文芸文庫や童話屋文庫や岩波文庫などの小さな本を引っ張り出すこともあれば、宇田さんに背中を押してもらって購入した新版の全集を手にすることもあります。『市場のことば、本の声』を読み終わったそのときは、講談社文芸文庫の『山之口貘詩文集』を手にとりました。しょっちゅう手にする本なので、だいぶくたびれてきています。でもきっと、ぼろぼろになるまで読むことになるだろうなあ、と、手にとるたびに、そんなふうに思える1冊です。


詩を読んで笑ってもいいのだなあ、ということを教えてくれたのが山之口貘作品だったのかもなあ、と思いながら、何度も何度も読んでいる文庫なのに、そのときも、本のあちこちで、やっぱりくすりと笑ってしまうのでした。


……すみません、毎度毎度のことで脱線が……。


『市場のことば、本の声』も、手にした人にとってきっと、何度も何度も読み返したくなるような、そんな1冊になることでしょう。ぜひ装いもすてきなこの本を、本屋さんの店頭で手にしてみてください。



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