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空犬通信

本・本屋好きが、買った本、読んだ本、気になる本・本屋さんを紹介するサイトです。

本を読んでいないのは、大学生だけではない、と思う

先日、全国大学生活協同組合連合会(大学生協)による「第53回学生生活実態調査」の概要報告が発表されましたね。




(そういえば昨年もこの調査に関連して似たようなことを書いたなあ、と調べてみたら、一年ほど前にも同じような記事を書いていました。こちら。以下の記事は、自分で書いたものを再読する前に書いたもので、内容がかぶっています。)


この調査は、 毎日新聞・全国学校図書館協議会が行っている「学校読書調査」のような、読書・本関連に絞った調査ではなく、大学生の大学生活・日常生活・経済生活など広汎な項目にわたるものなんですが、なぜか毎回、大学生の読書時間、不読率「だけ」が話題になっている感じがしますね。典型的なのはこのような報道です。



後者から記事の一部を引いてみます。《全国大学生協連(東京)は26日、1日の読書時間について大学生の53%が「ゼロ」と回答したとの調査結果を発表した。半数を超えたのは、調査に読書時間の項目が入った2004年以降初めて。「本離れ」が若い世代で進行している実態が明確になり、アルバイトをする学生に読書時間ゼロが多いとの結果も出た》。


(《「本離れ」が若い世代で進行している実態が明確になり》と、あたかもごく最近になってそのような事態がわかったかのような書き方になっていますが、事実かどうかとは別に、20年前、30年前にも若者は本を読まない、活字離れだ、みたいなことが言われたり書かれたりしていますから、この点にも言いたいことはありますが、ここではさておき。)


先に書きました通り、「学生生活実態調査」は、大学生の生活状況全般に関する詳細な調査ですが、生活費に占める書籍費にふれている以外は、他の項目・要素にはまったくふれずに、読書時間のことだけが取り出された記事になっています。日経新聞のサイトを検索してみると、同日の記事として「大学生の小遣い、40年ぶり低水準 月1.4万円」という「学生生活実態調査」の結果をベースにした記事がほかにも見つかりましたが、それにしても、読書時間だけをなんだか特別に取り上げている感じは否めません。


「学生生活実態調査」は《全国の国公立・私立30大学の学生1万21人が回答》という大規模調査ですから、大学生の生活の実状が相当程度反映されていると見ていいでしょう。ですから、本に関わる仕事をしている身にとって、気になる結果、気になる数字であることはまちがいありません。


ただ、記事の最後に、《電子書籍も「読書」に含む。勉強や趣味など、読む目的や内容がどこまで読書に入るのかは、回答者の判断に委ねた》とあるのを見ますと、調査の精度がどうなのか、「読書」の定義がどの程度きちんと共有されているのか、という点は多少気になりますね。長くなりますので詳述は避けますが、別の読書関連調査で、サイト/アプリなどで小説・マンガを読ませるタイプのサービスを利用している学生が、読書をしていない、本を読んでいない、という回答をしている例などが見つかっている事例を目にしていたからです。(関連資料はたとえばこちら。非常に興味深い調査結果になっていますので、本に関心のある方は、とくに若年層の読書に関心のある方は、大部ですがぜひ一読を。)


サイト/アプリなどで読む、といえば、先に引いた記事2つのうち、前者、リセマムの記事には、こんなくだりがありました。《1日のスマートフォン利用時間の平均は177.3分。全国大学生活協同組合連合会が調査年ごとの読書・スマホ・勉強時間の推移を算出し、読書との関係性を分析した結果、「読書時間減少にはスマホ時間による直接的な強い効果はみられない」としている》。


《スマホ時間による直接的な強い効果はみられない》などと断言していますが、大丈夫でしょうか。現代社会において、スマホの影響を「直接的に」(「間接的に」とどう違うのかはここではさておき)受けていないメディアなりジャンルなりなんて、いったいあるのかなあ、と、一応メディアの端くれで仕事をしている者として素朴にそんなことを思います。これだけ大規模な調査をし、このような結果が出てきたのを前に、「スマホの影響なし」というような大づかみな分析をしていて、はたして大丈夫なのかなあ、という気がどうしてもしてしまいます。


なぜ不読率が半分強のような事態になったのかについて、《調査結果の分析を担当した浜嶋幸司同志社大准教授(学習支援)は、「高校までの読書習慣が全体的に身に付いていないことの影響が大きい」と指摘する》と日経の記事にはあります。これについては、「読書習慣が身についていても、高校時代にそれを継続維持できない子が多い(増えている)」可能性もあるのでは、と個人的に思いました。


というのも、身近に良いサンプルがいるからです。高校生ってこんなにも忙しいものだっけ、と自分の高校時代を思い出しながら、そんなふうに思ってしまいます。それほど、なんだか、いまの高校生というのは、忙しい、ように見えるのです。受験期だけではありません。高校に入ってすぐの時期からそうなのです。


授業、宿題、定期試験、部活、学校行事、友人・先輩・後輩(ときに先生まで)たちとのSNS……とにかく日々の生活が忙しすぎる。これでは、せっかく小中で読書習慣がついた子(先にふれた「学校読書調査」でも、とくに小学生はよく本を読んでいることが統計上明かになっています)でも、よほど強い読書欲なり興味なりがないと本から離れてしまうよなあ、などと毎日、実例を前にして考えさせられているのです。


このようなことをツイッターでつぶやいたら、大人による強要云々といった反応をされたりもしましたが、大人が無理に読ませたいのに子どもに読む時間がない、読まない、などという話ではまったくありません。本人が読みたがっているのに読めない、そんな子もいるのでは、という話です。どれぐらい「読みたいのに読めない感」にさいなまれているかというと、「読書だけができる別の人生がほしい」などと、並行世界で読書に没頭する自分を妄想する域に達するくらいです。この発想自体は、それでこの世界のきみは幸せなのかね、と突っ込みたくなる点も含めて、微笑ましいというか楽しいものなのですが、それくらい本を読む時間がとれていないらしいということを思えば、笑ってもいられず、気の毒だとしか言いようがありません(涙)。なんとかならないものか、と思うのです。自分の分の読書時間を分けてあげたいと本気で思っています。


これが我が家だけの特別な事例だとは思えません。きっとそんなふうに感じている本好きの子もいるだろうと想像されるのです。


電子関係を中心に出版関連ニュースが週単位で簡潔にまとめられている便利なサイト、鷹野凌さんの「見て歩く者」の3/5付記事「「アマゾンが取引先に協力金を要求」「外務省が小学館に圧力」「コミックス売上、紙と電子が逆転」など出版業界関連の気になるニュースまとめ(2018年2月26日〜3月4日)の、調査に関連する記事にふれたくだりにこうありました(ちなみに、引用部分の前段には、当方と同じく、読書時間だけが取り沙汰されていることに関する違和感が表明されていました)


《18歳人口と大学入学者数・進学率の推移(文部科学省調査)を見ると、18歳人口はピークから4割ほど減っているのに、大学進学率は伸び続けているため、大学入学者数はここ20年ほどあまり変わっていない(むしろ微増)という全体傾向も考慮する必要があるでしょう。つまり、「大学生が本を読まなくなった」というより、「本を読まない層も大学へ入るようになった」と捉えるべきなのかな、と》。


なるほど、という感じですね。


さらに言うと、本を読まないのは、大学生だけではない、ってことですよね。小学生はよく本を読んでいるのが、中学生になると少し不読率が上がり、高校生になると(スマホを手に入れる影響が大きいのに加え、先に書いたように学生生活が一気に忙しさを増し、それが受験期にピークを迎えるため)不読率が一気にアップ。そのような高校生が大学に入るのだから、不読率が半分強で済んでいるのはむしろ僥倖ではないかとも思えてしまいます。


そして、大学生は、卒業後も本を読みません。会社に入るのに(出版社や新聞社など、ごく一部の職業をのぞき)読書なんて必要ありませんし、会社に入ってみても、(出版社や新聞社など、ごく一部の職業をのぞき)仕事に読書が必要とされるケースは多くはありませんし、何より、周りの先輩のオトナたちに、読書をしている人なんていないからです。


この記事にも書きましたが、すでに「本を読んでいる人を見かけないことが当たり前の社会」になってしまっているということですよね。本の世界にいる我々は「残念ながら」と付け加えたくなりますが、一般の多くの人はそんなふうには思わないでしょう。そして、社会がそのようなありようなのだとしたら、それは我々がそのようにしてきた、ということなんですよね。


「『大学生の半分強が本を読まない』? じゃあ、誰が読んでるの?」
「『大学生の半分強が本を読まない』? 本を読んで、なにかいいことあるの?」
そんなふうに高校生や大学生に問い返されて、相手を気持ちよく読書に向かわせるような説得力に富むスマートな答えを即座に返せる大人はほとんどいないでしょう。


子どもたちに、小中高生に、大学生に、本を読んでほしいと考える大人がすべきことは、大学生が本を読まないことをことさらに記事にすることでも、それに過剰に反応することでも、スマホの影響なんてないなどと断言して若年層のデバイス利用状況を見て見ないふりをすることでもないと思うんですよ。


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コメント

空犬様 はじめまして空犬さんのブログはちょくちょくですが拝読しています。正直本離れは本好きにとって悲しいですが
本を読まない人は大学生の53%云々の記事すら興味も無ければ、目にしないし気にしないと感じてしまいました。

電車に乗ると本を読んでいる人がいない、皆スマホでゲームしているのが解ります。病院の待ち時間でお年寄りがスマホでディズニーツムツムしているのを見てこういう時代なんだなと思わされました。
若い世代だけでなく全体的に読書離れは多いと周辺を見て思います。

あと読書について読む時間が無いという人の話も聞きますが「読んで何も感じない」という人がいてちょっとびっくりした事があります。その人が言うには(その作家が書いた作品が自分に合わないでは無く)ただ文章を読んだだけで何の感想も無い、どの本を読んでもそう感じると言うのです。こんな長い文章読むぐらいなら映画の方がマシ、映像で表現してよって人も多くいました。

例えば緊迫したシーンとか血なまぐさい凄惨な場面とか普段日常生活に出てこない言葉で状況を表現したりとかあえてカタカナで表現したりとか句読点を沢山つけた表現とか本を読む人間はうっとり来た表現を発見できても、読まない人は発見出来ないし良さがさっぱり解らない。解らない人にとって長い時間掛けて読んだ読書は苦痛でしか無いと思わされました。

アメトーークとかで読書芸人がありますがああいった影響力のある人が伝えて下さるコーナーが増えて欲しいと思います。

初めてのコメントで長文失礼致しました。

  • 2018/03/08(木) 19:20:14 |
  • URL |
  • ちそう #-
  • [ 編集 ]

読書離れ

ちそう さん>
訪問&コメント、ありがとうございます。

読書という行為や本というものに対する距離感は
人それぞれで、誰かが離れようがどうしようが、
それはその人(たち)の自由ですからね。ある本が
わかる、おもしろいと感じる、いや、映像のほうが
いい、おもしろい、というのも同様ですね。
本離れ、読書離れについては、気にしない
のもいいと思いますし、何か自分にできることは
ないかなあ、などと考えるのもいいのかなと。

コメントの長さはまったく気にしませんので、
これからも何かありましたらお願いします。

  • 2018/03/09(金) 22:11:11 |
  • URL |
  • 空犬太郎 #-
  • [ 編集 ]

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