空犬通信

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くすみ書房の久住さんのこと

数々のユニークなフェアで、地元の本好きに本の魅力を広く伝えるだけでなく、全国の本屋さんにたくさんのアイディアと、本屋はここまでできるんだ、こんなふうにやってもいいんだという勇気を与えてくれた、くすみ書房の久住邦晴さんが亡くなりました。


関連記事は、こちら。「久住邦晴さん死去 66歳 元「久住書房」社長」(8/29 北海道新聞)「札幌で名物書店、魅力の本屋を追求 死去の久住邦晴さん」(8/30 北海道新聞)



前者の記事の一部を引きます。《久住書房が経営する「くすみ書房」は46年、現在の札幌市西区琴似に開店。久住さんは99年に社長となり、「なぜだ!?売れない文庫フェア」「中学生はこれを読め!」などのユニークな企画を打ち出し、全国的に注目を集めた》。


ただ、《全国的に注目を集め》るほどの取り組みをした書店でも、その経営状態は決してラクなものではなかったようです。2009年には、琴似から同じ札幌市内の厚別区に店舗を移転。移転後も、経営状態は苦しかったようで、ネットで資金を募るクラウドファンディングを利用して経営再建をはかり、その件では出版書店関係者や一般の本好きの方からも賛否両論あったようですが、結局はそうした策も功を奏することなく、2015年に自己破産、閉店ということになってしまいました。


久住さんは、まだ66歳だったとのこと。早すぎるとしか言いようのない死で、ご本人にもまだまだやりたいことがあったのではないか、と思われ、あらためて驚きと哀しみを感じざるを得ません。


ぼくが、琴似のお店を訪ねたのは10年ほど前のことです。東京で、吉祥寺書店員の会「吉っ読」という集まりをやっている。年若い書店員たちに、くすみ書房のユニークな取り組みの数々を伝え、参考と刺激とにしたい。そんなことを言って、お店に押しかけたのでした。


縁もゆかりもない地域の、よく聞けば書店員でもない、しかもへんてこな筆名の出版関係者が突然話を聞きたいなどと図々しいことを言ってきたというのに、久住さんは、あたたかく迎えてくださり、たっぷりと時間を割いて、それまでのお店のこと(経営的に苦しかったときの、かなり生々しいことも含め)、これまでに取り組んできたユニークなフェアのこと、これからやりたいと思っていること、などなど、お店のことについての諸々を出し惜しみなしで、たくさんの資料を使いながら、懇切丁寧に話してくださいました。そのときの久住さんの熱い語りっぷりや、久住さんの思いがお店のあちこちに具現化された、とても地方のいち町本屋には見えないユニーク過ぎる店内の様子は今も鮮明に覚えていて、忘れられません。


2007年に訪問し、久住さんにお話をうかがったときのことは、当時、記事にしていました。こちら。「くすみ書房はやっぱりすごかった!」(2007/7/15 空犬通信)


PCのファイルを探してみたら、2007年7月に訪問し、久住邦晴さんにインタビューしたときのメモや原稿が出てきました。お店を案内してもらった後、琴似の店では地下にあったソクラテスカフェで話をうかがったのでした。そのときのインタビュー資料を読み返していると、久住さんのお人柄と書店人としての本気度が、資料やメモのあちこちから浮かび上がってきて、ほろりとさせられてしまいました。自分で書いたブログ記事と複数の訃報記事を読み返して、ユニークなフェアを次々にしかけていたころの久住さんにお会いできたこと、そのころの店内の様子を目の当たりにすることができたことの幸運をあらためて思いました。


くすみ書房の閉店が報じられたときにも、記事を書いています。「くすみ書房のこと」(2015/06/14 空犬通信)。この記事の最後で少しふれていますが、閉店になる少し前の、お店のやり方については、個人的には、必ずしも共感も賛同もできてはいませんでした。でも、そのことと、それまでに久住さんが、くすみ書房でやってきたこととは別だと思います。本屋の世界に、確実にそれまでになかった新たな何かを残してくれた、そんな希有な書店人だったのだと、あらためて思います。


久住さん、おつかれさまでした。そして、本当に、ありがとうございました。



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