空犬通信

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「書店ゼロの自治体、2割強に」なって大変……でも、大事なのは、じゃあ、どうするのか、なのではないかなあ、などと思う

「書店ゼロの自治体、2割強に」という8/24付の朝日新聞の記事、ずいぶんたくさんRTもされているようで、話題になっているみたいですね。



記事は、このように始まっています。《書店が地域に1店舗もない「書店ゼロ自治体」が増えている。出版取り次ぎ大手によると、香川を除く全国46都道府県で420の自治体・行政区にのぼり、全国の自治体・行政区(1896)の2割強を占める。「文化拠点の衰退」と危惧する声も強い》。


書店の未来に関する悲観的な記事は、新聞の得意とするところで、今さらめずらしくもないと思うのですが、「書店ゼロ」という表現や、「2割強」、つまり自治体の数でいうと400超という数字が目を引いて、話題を呼んだ、ということなんでしょうか。


朝日新聞の記事では、《宮崎県最南端の串間市》にあった《創業約100年の「つまがり書店」》の倒産や、広島の《店舗兼住宅の典型的な「街の本屋さん」だった「高田書店」》の閉店などにもふれられています。


一方、こうした書店減少の流れに、一矢報いたようなかっこうの例としては、《官民一体の誘致で書店が再生したのが、人口約2万2千人の北海道留萌(るもい)市》の例が1件、紹介されているだけです。(賛否はともかく)地方自治体が書店の減少に危機感をもって、具体的なアクションに出た例として特筆されるべき八戸ブックセンターにはふれられていません。


このほか、《財団法人「出版文化産業振興財団」(東京)は1992〜96年度、書店も図書館もない自治体を支援する事業を実施》した例にもふれられていますが、《1千万円分の約1万冊を提供し、各自治体が書店を運営する「公営書店」が北海道礼文町、岩手県三陸町(現大船渡市)、福島県飯舘村、長野県北御牧村(現東御市)、大分県耶馬渓町(現中津市)の5カ所に誕生したが、現在残っているのは礼文町のみという》と、試みとしてはうまくいかなかった、というニュアンスでの事例紹介になっています。


書店ゼロ云々といえば、2年程前にも、書店ゼロの自治体が300超(そのときは332市町村)になったという記事が話題になったことがありました。たとえば、こちらの記事。「書店減少深刻化15年間で8500店減少 新刊書店ゼロ自治体は全国20%に」(2015/1/12 エキサイトニュース)


それから2年。事態は予想されたペースで進んで(悪化して)いる、ということになります。そりゃあそうだろうなあ、と思わざるを得ません。この間に、書店の減少を食い止めるための業界をあげての試みなど、何もなされていないのだから。


新聞も、こうした問題提起をしてくれるのはいいのですが、単に、出版業界が、書店業界が大変だ、というだけでなく、何か、具体的なアクションを起こしてもいいのでは、という気もします。


というのも、若者の新聞離れ、定期購読&宅配システムの崩壊などがささやかれる新聞業界も、今後について楽観できないのは、出版・書店業界と同様だと思うからです。


新聞の紙面を見ればあきらかですが、出版広告は、以前から新聞と相性がよく、現在でも、新聞の主要な広告は出版物関連の広告が占めています。新聞の広告の切り抜きを片手に、この本を探しているんだけど、と書店に来店するお客さんの姿は、書店では日常的な光景でしたよね。


これまでは。


出版業界が力を失って、新聞に広告を出す余裕がなくなったり、新聞が力を失って、これまで新聞の広告で出版関連情報を得ていたお客さんに情報が届かなくなったりしたら、双方の業界にとって大きな打撃となるはずです。新聞業界にとっても、出版・書店業界の苦戦は他人事ではないはずだろうと思うのです。


問題提起も大事ですが、それだけであれば、SNSがこれだけ隆盛の今ならば、個人でも素人でも簡単にできます。大きなメディアに求められているのは、出版・書店業界の苦戦を指摘すること「だけ」ではないのではないか、具体的なアクションに出てもいいのでは、とそんなふうに思えてならないのです。


かつて、ぼくは夏葉社の島田潤一郎さんや往来堂書店の店長、笈入建志さんと「町には本屋が必要です会議」、通称「町本会」という活動を一緒にしたことがあります。書店のない自治体がどんどん増えていっているような状況に、何かできないか、という思いから発した活動でした。個人レベルの活動で何をどう変えられるかなんてわかりませんでしたし、何を変えられるとも思いませんでしたが、でも、何かせざるを得なかったのでした。本屋を愛する者のひとりとして。


でも、残念ながら、町本会は単なる個人レベルの活動に過ぎません。活動当時は、全国で関連のトークイベントやシンポジウムを行い、関連の書籍にまとめて刊行することまでしましたが、大きなメディアに取り上げてもらえることはほぼありませんでした。個人レベルの活動が、大きなうねりをつくりだすことなどとうてい無理なのだ、ということを思い知らされるかたちになったわけです。


朝日新聞の記事には、《書店は紙の本との心ときめく出会いの場で、知識や教養を養う文化拠点。(……)何とか残していく必要がある》《文化の灯が消えた》などの表現も見えます。


もしそのような危機感を共有しているのであれば、不安感をあおるような悲観的な論調の記事を紙面に掲載するだけでなく、何か他にできることもあるのではないでしょうか。




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