空犬通信

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『東京の編集者』……そして山高登さん周辺の作家たち

夏葉社らしい、としかいいようのない本ですね。



書影 東京の編集者


夏葉社のサイトによれば、こんな本です。《今年91歳になった山高さんに、その美しい本作り、作家とのエピソードについて聞き書きいたしました。武井武雄、谷内六郎、島村利正、小沼丹らも登場します》。


《そのほかに、いくつかの書影、書票、そして、山高さんが撮影したすばらしいモノクロ写真が32ページにわたって収録されています。計148ページの贅沢なバラエティブックです》。


山高登さんは、《戦後間もなく、新潮社に入社され、内田百閒、尾崎一雄、上林曉、香月泰男らの本を担当され》た編集者。編集だけでなく、写真や装丁にも腕をふるった方としても知られています。東京のなつかしい姿をとらえたモノクロ写真は本書にもたくさん収録されていますし、編集だけでなく装丁を手がけた作品の書影も紹介されています。


そのなかには、山高さんが編集を手がけた1冊で、夏葉社の出発点ともなった1冊、関口良雄『昔日の客』の三茶書房版の書影も掲載されています。夏葉社のサイトには《山高さんは昭和53年に『昔日の客』をつくった編集者でもあり、弊社にとっての恩人です》とあります。


名編集者の仕事を見渡すことのできるすばらしい本です。内容紹介でふれられているような名前に関心のあるみなさんはぜひ手にとってみてください。



ところで。この本、表紙や背には著者表記はありませんが、奥付には著者は「山高登」とあります。ただ、本の副題には「山高登さんに話を聞く」と、山高さんではなく、夏葉社島田さんの視点と思われる表現が用いられています。だからどうだということはないのですが、ちょっと不思議な感じを覚えました。



さて。本書には、先に書きました通り、山高さんが手がけた本のいくつかが書影入りで紹介されています。本書を読んでいたら、それらを読み返したくなりましたので、そのなかの1冊、尾崎一雄『随想集 四角な机 丸い机』(新潮社)を引っ張りだしてみました。


書影 四角な机書影 四角な机2

同書に収録されている随想の一篇に、上林曉、木山捷平、尾崎一雄、関口良雄、山高登が一緒に出した句集『群島』の話が出てきます。版元は木山の遺著『わが半世紀』を出した永田書房。ちょうどこの『わが半世紀』も、尾崎の本と一緒に引っ張り出して読んでいたところだったので、あちこちでつながっているなあと、ちょっとうれしくなってしまいました。


書影 わが半世紀

それにしても、このころの文芸書は本当にぜいたくな、美しい造りですね。『随想集 四角な机 丸い机』は、存在感のある貼り箱に、本体は布クロス装で継ぎ表紙、書名は箔押し。これ、豪華本とか限定版とかではなくて、ふつうの単行本として出た本ですからね。いま、通常の文芸書でこんな仕組みで出版企画を出したら、冗談だと思われかねませんし、仮に実現するとしたら、いったい定価がいくらになるのか、って話ですね。


ひと昔前の文芸書を読みやすいかたちで提供してくれる講談社文芸文庫や小学館P+D Booksのようなレーベルは、文芸書読みには大変ありがたい存在ですが、でも、やはりこうして元の本にふれ、この何十年かで文芸出版がどんなふうに変わってしまったのかに思いをはせながら、当時の作品を当時出たかたちで楽しむのもいいものだなあ、などと思うのです。幸い、古書店では、(三茶書房版の『昔日の客』のような例外はもちろんありますが)これらの本は、それほどの値段はついていませんから、割に気軽に買えますしね。



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