空犬通信

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全米図書賞作家、デニス・ジョンソンが亡くなりました

敬愛する作家がまた一人、旅立っていきました。



亡くなったのは、デニス・ジョンソン。67歳。日本での人気・知名度はお世辞にも高いとは言えませんが、全米図書賞作家です。



こちらは同じThe New York Times、ミチコ・カクタニさんによる亡くなったデニス・ジョンソンの記事。



日本での知名度や人気からするとしかたないのかもしれませんが、朝日新聞や読売新聞の訃報欄には出ていませんでした(5/29時点で)。毎日新聞と産経ニュースには訃報が掲載されていましたね。うち産経のを弾きます。「米小説家、デニス・ジョンソン氏が死去 ベトナム戦争題材の「煙の樹」で全米図書賞」(5/27 産経ニュース)


《肝がんのため24日にカリフォルニア州グアララの自宅で死去、67歳。ドイツ・ミュンヘン生まれ。アイオワ大で小説家、レイモンド・カーバーの教えを受けた。米地方都市の薬物中毒者らを描いた短編集「ジーザス・サン」で注目され、ベトナム戦争を題材にした「煙の樹」で07年の全米図書賞を受けた。ともに日本語訳がある》。


デニス・ジョンソンの名を知るきっかけになったのは、短編集『Jesus' Son』。本に書き込んであった記録を見たら(当時、読了日を本に書き込んでいたのです)、この本を買って最初に読んだのは1999年のこと。


書影 Jesus' Son

一読、引き込まれました。危ない人たちばかりが出てくる、とても読後感のいいお話ではないのですが(ちなみに、邦訳の内容紹介にはこうあります。《緊急治療室でぶらぶらする俺、目にナイフが刺さった男。犯罪、麻薬、暴力……最果てでもがき、生きる、破滅的な人びと。悪夢なのか、覚めているのか? 乾いた語りが心を震わす短編》)、とにかく強烈に引き込まれてしまったのでした。ノックアウトされてしまったわけです。


要チェック作家群の仲間入りしたわけですが、読みたくても、なにしろ翻訳がない。出ない。しかたないので、かなり背伸びして、原書をチェックしては挑戦する、という日々が始まったのでした。『Jesus' Son』に出会った時点で、初期の作品、『Fiskadoro』などはもう新刊が手に入らなかったので、アメリカのオンライン古書店で、初版の単行本を探して買ったりした記憶があります。


書影 Fiskadoro

以来、デニス・ジョンソン作品は何冊も読んできましたが、彼の作品のなかで個人的にはいちばん好きで、いちばん読み返しているのは『Jesus' Son』です。ぼくにとっては、特別な作品集の1つです。


初めての出会いからずいぶんたってからのこと。白水社の海外文学シリーズ「EX-LIBRIS」から柴田元幸さんの翻訳で『ジーザス・サン』が刊行されました。2009年のこと。うれしくて、当時、こんな記事を書いています。「ジーザス・サン、エル・スール……好きな作品がらみの翻訳が続いて刊行に」(2009/3/3 空犬通信)


さらには三省堂書店神保町本店で行われた刊行記念イベントに駆けつけ、こんな記事を書いたりもしていました。「エクスリブリス」『ジーザス・サン』刊行記念イベントに行ってきましたよ(2009/3/6 空犬通信)


と、個人的にはこんなにも思い入れのある作家なんですが、このデニス・ジョンソン、その作風のせいなのかなんなのか、日本ではあまり読まれないということなんでしょう、翻訳が2冊しか出ていません。ちなみに、もう1冊も白水社の「EX-LIBRIS」からで、全米図書賞受賞作の『煙の樹』。このときも翻訳刊行がうれしくて、こんな記事を書いていました。「白水社EX-LIBRISにまたまたデニス・ジョンソンが登場です 」(2010/2/6 空犬通信)


先日記事にした後藤明生もそうですが、たくさんのすばらしい作品を残してくれた作家には、作品を通していつでも「会う」ことができるわけです。もしも、未読の作品が(運良く)残っていたりしたら、それはもう現役の作家の作品を読むのと、なんら代わりはありませんからね。……でも、やはりもう二度と「新作」にふれることができないというのはさびしいものです。


以下、手元の本からです。それぞれの本をきちんと紹介する技量はないので、書影だけをあげておきます。


書影 Already Dead書影 Seek: Reports from the Edges of America & Beyond書影 Nobody Move

↑左から、『Already Dead: A California Gothic』『Seek: Reports from the Edges of America & Beyond』『Nobody Move』。うち『Seek』はエッセイ集。


書影 The Name of the World書影 Train Dreams書影 The Laughing Monsters

↑左から『The Name of the World』『Train Dreams』『The Laughing Monsters』。


書影 Angels

↑この2冊は残念ながら単行本ではなくペーパーバックで所有しているもの。処女小説『Angels』と『Resuscitation of a Hanged Man』。


こんなのも持っています。『ジーザス・サン』のオーディオブック。朗読は俳優のウィル・パットン。本で読むほうが好きだけど、この朗読は作品の雰囲気に合っていて、けっこう好きだったりします。



今回、記事を書くために、本棚をひっくり返してみたんですが、作家のほぼすべての本を、それも数冊をのぞいてすべて初版の単行本で持っていることがわかりました。翻訳が出ないからというので、がんばって原書で読んできたからなあ……。今後も翻訳は出ないだろうから、これらの本を大事に大事に読んでいきたいと思います。


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