空犬通信

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単行本未収録原稿が多数掲載!……後藤明生の対談集&座談集が2点同時刊行(でびっくり)

大好きな作家の本が2冊同時刊行になり(びっくりし)ました。



書影 後藤明生2点 つかだま書房

2012年に幻戯書房から未完長篇の初書籍化『この人を見よ』が刊行されたときも驚きましたが、今回も本気で驚いてしまいましたよ。対談と座談だけをまとめた大部の函入り本が2冊。合わせて7600円(税抜)。安価な本で手軽に読める作家だとも内容だとも思いませんが、それにしてもファンにも即買いがためらわれるボリュームと値段です。好きな作家の本が出るのはうれしいけれど、こんなすごい本が一度に出ちゃって大丈夫かなあ、などと(まったくよけいなお世話であることはわかっているんですが)ちょっと心配になったりもします。


書影 この人を見よ

以前の記事で「後藤明生・電子書籍コレクション」(アーリーバード・ブックス)を紹介した際に少し書きましたが、後藤明生、大好きな作家の一人なんですよ。どれぐらい好きかというと、主要な著作はすべて初版の単行本でほぼそろえているぐらい(素人の調査なので漏れはあるかもしれないけれど、当方調べでは、入手できていないのはあと3冊。先の記事にも残り数冊と書きましたから、状況は変わっていないわけです;苦笑)


そんな作家の「単行本未収録」作品を集めたものが出たとなると、それは買わないわけにはいきませんよね。


版元の内容紹介によれば、こんな本です。まず【対談篇】。《収録した計22本の対談では、五木寛之、小島信夫、蓮實重?、柄谷行人、島田雅彦らを相手に、敗戦による引揚体験や、小説の技法・文体・喜劇性、ゴーゴリやカフカなど海外文学からの影響、日本近代文学の起源などをテーマに、アミダクジのように話を脱線させながら饒舌に語り尽くす。後藤ファン必携の書》。


次に【座談篇】。《後藤明生はじめ、阿部昭、黒井千次、坂上弘、古井由吉など、サラリーマンをしながら小説を執筆した「内向の世代」の作家たちが集結した「伝説」の連続座談会をはじめ、1970年代から1990年代に行われた、全て単行本初収録の座談集。また、実作者でありながら優れた理論家でもあった後藤が提唱した「小説を読まずに小説を書いた人はいない」という考えに基づく「千円札文学論」など独自の文学論を開陳。全ての文学ファン&研究者が必携の書》。


170525 往来堂書店 後藤明生

↑2点を購入したのは東京・千駄木の往来堂書店。同店の文芸書の棚前平台には、この新刊2点が(この規模の店にはちょっと多すぎるのではと心配になるくらいに)どーんと積まれていて、さらにその周りにも国書刊行会のコレクションや講談社文芸文庫の『「内向の世代」初期作品アンソロジー』など後藤明生関連本が並び、さながら後藤明生祭りのような状態になっていました。後藤明生の読者を長くやってますが、新刊書店の平台に後藤明生本がこんなにもたくさん集められている光景を目にするのはおそらく初めてのことだと思います。往来堂書店、さすがです。


版元のつかだま書房は、東京・練馬区にある出版社。版元のサイトの新刊情報によれば、『壁の中』も今年じゅうに復刊されるそうです。相当に強い後藤明生愛がないと出せないラインナップですよね。


これ、元本を持っていますが、実を言うと後藤の主要小説作品のなかで、唯一読了できていない本なんです。原本は中央公論社刊、2段組で560ページ超。目に優しい最近の組に慣れた目からすると、この字の小ささはほとんど罰ゲーム。大好きな作家が物故作家の場合、今回のような未収録作品・新発見作品が出てくることはまれにあっても、基本的に「新刊」は読めないわけですから、なんとなく、未読の小説作品も残しておきたい、残っていてもいい、という気分も働いて、読み切れずにいたのでした。


書影 壁の中 旧版

今回の復刊は、新しい組版でとわざわざうたったうえで約700ページと、大幅にページ数が増えていますから、その分、読みやすい組になっているのでしょう。うーん、これは迷うなあ。読みやすい新しい版を買い直して、再挑戦するか。あくまで元版にこだわるか。たいそう悩ましい……。


……とまあ、そんなことで悩みたくなるくらいに気になる作家、好きな作家だというわけなのです。


大好きな作家なので、好きな作品もたくさんありますから、これ、というのをあげにくいのですが、3冊だけ、手元の後藤明生コレクションからあげておきます。


書影 吉野大夫

↑後藤の代表作の1つで、個人的に大好きな作品の1つでもある『吉野大夫』。平凡社の単行本は箱入りで、堅牢な造本、装丁もご覧の通り、なかなかかっこいい。


書影 挟み撃ち書影 挟み撃ち サイン

↑同じく代表作の1つで、同じく大好きな作品の1つ、『挟み撃ち』。これはサイン本。後藤明生のサイン本は運良く入手できたものが何冊か手元にありますが(今でこそ、サイン本はあちこちの新刊書店に並んでいてさほどめずらしいものではなくなってしまいましたが、ひと昔前は、古本屋や古書展、目録などで運良く出会うことができたときに、それなりの値段を出して入手するほかなかったのでした)、これがいちばんうれしい。ちなみに、ぼくが本作を初めて手にしたのは、装丁がかっこいい河出文庫の文藝コレクションで新刊として出たときでした。


小説以外からも1冊。後藤明生は文学について、真剣に考え続けた作家でもありましたね。小説論的な著作がいつくかあるなか、思い出深いものの1つがこちら、『小説は何処から来たか 20世紀小説の方法』。


書影 小説は何処から来たか

京都の出版社、白地社のシリーズ「叢書レスプリ・ヌウボオ」は、昨年新刊が出ていますから、現在も刊行継続中のシリーズのようですが、初期の巻には、ぼくの前後の世代で似たような本の趣味をお持ちの向きにはなつかしく感じられるものが多いのではないでしょうか。安原顕『『編集者』の仕事』、鈴木貞美『モダン都市の表現』、和田博文『テクストの交通学』、内堀弘『ボン書店の幻』など、今も我が書棚に並んでいる本たちが巻末のシリーズ一覧に並んでいます。


後藤明生本 書棚

↑後藤明生本が並ぶ我が書棚の一部。


……というわけで、長々と我が敬愛する作家について書いてきました。今回の紹介本は、さすがに万人におすすめです、とはしづらいものなんですが、後藤明生読みのみなさんは、ぜひ手にするべき本だと思います。



追記:後藤明生といえば、昨年こんなことがありました。『ぼくのミステリ・クロニクル』にはさみ込みの「国書刊行会 新刊案内2016秋・冬」。


見れば、同じページに《後藤明生コレクション》の案内が出ているではありませんか。


国書 新刊案内 ぼくミス 後藤明生

自分の名前が表紙に載っている本が、敬愛する作家と同じ版元から刊行され、新刊案内の同じページに並ぶ日がやってくるとはなあ。感無量なり(涙)



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