空犬通信

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アラン・ホールズワースのこと その3……大好きなアルバムたち

アラン・ホールズワースの参加作品は、リーダー作、参加バンド作、セッションワークスすべて含めるとそれなりの数になります。Wiki英語版のアランのページには、本稿執筆時点で、スタジオ作品が12、ライヴが3、コラボが5、コンピが3、他のアーティストとの共演・セッションワークとして16アーティスト、計27、合計で50枚のアルバムがあがっています。


ここではとくに思い入れの深い作品についてだけ簡単にふれてみたいと思います。


  • 『Road Games』

ジャケ ロードゲームス

アランの1枚といえば、個人的にはなんといってもこちら、『ロード・ゲームス』。発売は1983年。ぼくと同世代にはなつかしいだろうと思い、日本盤の帯も一緒に撮影してみました。アランのベストであるだけでなく、個人的には、ギターアルバム(ギターが主に活躍しているアルバム)のオールタイムベストです。


1曲目の「風に舞うシーツ(Three Sheets to the Wind)」からもうアラン節全開で、バッキングでもソロでも、典型的なアランのプレイが聴けます。テーマは複雑な複音のプレイですが、そんなことを感じさせないやさしいメロディ。ベースがAのままコードが展開していくギターソロ前のコードプレイもすばらしい。


ギターソロもよくうたっていて、とてもメロディアス。実際にはところどころにものすごいパートがあるので、鼻歌で歌えたりはしないんだけど、歌えそうに感じさせるようなプレイになっています。速弾きパートがものすごいのは言うまでもないのですがが、単なるテクニカルなプレイ、メロディ感に欠ける速弾きプレイではありません。流れるようなレガートなプレイもすばらしいのですが、アーミングをビブラートやベンドの代わりに使うなどして、ニュアンスをこまやかにつけるあたりも、速弾きだけのソロイストとの違いを感じさせます。


B面1曲目の「東京ドリーム(Tokyo Dream)」は、タッピング(当時はライトハンド(奏法)と呼ばれていましたね)を使った、それでいて聞いている分にはまったく技巧的な感じのしない美しいテーマが印象に残る名曲。


アルバム製作側との不幸なすれ違いから、アラン本人にとっては不本意な部分も多く残ることになってしまった作品だといいますが、それでこのクオリティ。アランが思う存分、自分の世界を繰り広げることができていたとしたら、いったいどのような作品になっていたのか。この盤には「完全盤」のような音源は存在しないでしょうが、そんなことを考えたりもします。


  • 『Velvet Darkness』

ジャケ ベルベットダークネス

アラン本人が気に入らず、公式ディスコグラフィからもはずされている初リーダー作。本人の思いはともかく、ファンとしては聴かないわけにはいきませんよね。


CD時代になってからはふつうに買えるようになりましたが、その存在を知ったころは中古レコード屋でも見かけないし、見かけてもいい値段がついているしで、なかなか買えなかった記憶があります。廉価の再発盤をようやく手に入れたときはうれしかったなあ。


ベースがアルフォンソ・ジョンソン、ドラムがナラダ・マイケル・ウォルデンという、今にして思えば豪華な、しかしアラン・ホールズワースらしくない感じもするリズム隊が脇を固めています。らしくないと言えば、ジャケに写るSGを抱えた姿にも、ストラト時代以降のイメージが強いファンにはらしくないものに写るかもしれません。鍵盤はいくつものアルバムで共演しているアラン・パスカ(パスクァ)


  • U.K.『U.K.』

ジャケ UK

ここはやはりかっこいい邦題『憂国の四士』をあげておきたいですね。4人時代のU.K.が遺した唯一のアルバムで、楽曲もいいし、各メンバーの演奏はハイレベルだし、先頃亡くなったジョン・ウェットンの歌もいいし、アラン・ホールズワースのギターものっているし、作品としての完成度も高いしで、いろいろな意味で最高の1枚。


この後、U.K.はギターレストリオで2枚のアルバムを出します。それらも個人的には大好きなんですが、4人時代のUKはやっぱり格別です。4人時代のUKはライヴ音源がいくつかあって、プライベート盤が出回っていましたが、オフィシャルなものとしては『Live in Boston』が出ています。アランの演奏が散漫だという意見・評価もあるようですが、スタジオ録音としては残されなかったトリオ時代の楽曲でアランがギターを弾いている曲もあるので、この時代のUKが好きなファンは聴いておくべきでしょうね。


以上3枚はCDももちろん持っていますが、アナログで持っていて、ふだんはもっぱらアナログで聴いています。写真はいずれもアナログ盤のジャケ。


  • 『I.O.U. Live』

ジャケ IOUライヴ

公式リリースではありませんが、やはりこれはあげておきたい。ジャケには1985年の来日時のライヴ音源だとありますが、実際には1984年5月の初来日時のライヴ音源をCD化したものですね。映像作品『Tokyo Dream Allan Holdsworth in Japan』を持っていると重なってしまうけれど、音質もいいし、これはこれでやはり持っておきたい1枚です。ただし、映像作品の完全CD化ではなく、3曲がカットされているのは残念。


先の記事にも書きましたが、ぼくは高校生のときに、この年の初来日ライヴを大阪で観ているので、この時代のライヴ音源には特別な思い入れがあります。バックもいいんですよね、この時代は。(ベースがジェフ・バーリンでないのはちょっとだけ残念ですが)ジミー・ジョンソンのベースもすばらしいし、なんといっても最高なのが、ドラムのチャド・ワッカーマン。1980年代にフランク・ザッパのバンドでドラマーをつとめていた(ザッパ時代のプレイもすばらしいけれど、それはまた別の機会に)ことでも知られる凄腕ですが、いやはや、とにかくここでの彼のドラムは最高です。アランとの相性もよかったのでしょう。その後、何度も共演していますし、チャド・ワッカーマンのソロアルバムに客演したりもしていますね。ボーカルは(個人的にはあんまり好みではないけれど)アランの旧友・ポール・ウィリアムズ。


信頼できる共演者に恵まれたこともあってか、とにかくこのときのアラン・ホールズワースのプレイはほんとにすばらしい。白いジャケットをはおり、シャーベル製の赤いストラトモデルを抱えたこのころの若々しい演奏姿は、ビジュアル的にもいちばん好きです。老成した顔と雰囲気に加え、孤高の音楽仙人みたいなところがあるため、実年齢よりも年上に見えますが、いま考えると、このときって、まだ40になる前、30代後半だったんですね。



というわけで。買ってしまいました。


  • 『Man Who Changed Guitar Forever』(Manifesto Records)

ジャケ アラン・ホールズワースBOXジャケ アラン・ホールズワースBOX2

ソロ名義の作品12枚のリマスター盤を収めたボックス。内容については、こちらの記事をどうぞ。「アラン・ホールズワースの12CDリマスターボックスセット『Man Who Changed Guitar Forever』が4月発売」(2/8 amass)


アルバム全部持ってるのに、なかにはアナログとCDの両方で持ってるものまであるのに、いったい何してんねんって感じですね(苦笑)。というわけで、も何もないわけですが(苦笑)


でもね、晩年のアランは、離婚して、自宅スタジオも手放し、機材の一部も処分するなど、家庭的にも経済的にも恵まれない状況にあったといいますからね。ミュージシャンからあれだけの尊敬を集めていたとはいえ、その高い音楽性がアランに商業的な成功をもたらしたかというと、そうとは言えないところもあり、実際、資産のようなものはほぼ残さなかった(残せなかった、か)とする文章も目にします。


死去が報じられた直後には、残された家族が葬儀代を捻出することすらままならず、クラウドファンディングを始めたことなども報じられていました。詳細はこちら


このようなものを目にしてしまったら、長年のファンとしては何かしないわけにはいきません。というわけで、ボックスを買っちゃったという次第なのです。ファンがいちばん簡単にできることは、作品、コンテンツにお金を出すことですからね。


で、肝心のボックスです。せっかくのアルバムコレクションなんだから、ボックスとか紙ジャケとかはもう少しがんばってほしかったなあ、という感じのぺらっとした造りなんですが、でも、まあ、こうしてアランのソロ全作品が同じ紙ジャケ仕様でずらりとそろうのはなかなかうれしいものです。しかも、ジャケ、全部ゲートフォールド仕様なんですよね。


40ページのブックレットがついています。そんなに期待していなかったんですが、写真がいろいろ載っていて、ただのアルバム解説に終わっていないのがうれしい。日本公演のポスターとか、アランが表紙に登場している各国のギター誌の書影前回の記事で紹介したシンコーの2誌も)の他、CDの内ジャケとか雑誌記事でも見たことないかもなあ、という写真などもあります。


このBOXを手に入れて古いCDは全部売っちゃえばいいやって思う「買い直し派」もいるでしょうから、参考までに少しだけ補足を。盤によっては、買い換え時にちょっと注意が必要かもしれませんよ。


唯一のライヴ音源として収録されている『THEN!』(それが日本での演奏を収めたものだというのは、なんだかうれしいことですよね)は日本盤のみボーナストラックが1曲収録されていますが、今回のものには収録されていませんでした。


『Wardenclyffe Tower』は日本盤にはボーナス・トラック3曲が収録されていましたが、こちらは無事に今回の盤にも収録されました。『Sixteen Men Of Tain』は、ボーナストラックが2曲追加されています。


ソロ名義の作品は本人が認めていない『ベルベット・ダークネス』以外はすべて収録で、ライヴも『THEN!』が収録されていますが、『All Night Wrong』(こちらも日本でのライヴ音源ですね。2002年六本木ピット・イン)は収録されていません。権利の関係なのか、同じ日本でのライヴ音源が重なるのを避けたのか。


あと、音源に比べるとどうでもいいことかもしれませんが、一応、ジャケ関係も気づいた点を。『I.O.U.』には赤ジャケと黒ジャケがあって、どっちが正式なのかとか、なぜ2色あるのかとは不勉強で知りませんが、今回収録は黒ジャケです。


『Metal Fatigue』はぼくの持っているCD(輸入盤)と日本盤アナログではAllan Holdsworth名義ですが、今回収録された盤のジャケでは「WITH I.O.U.」とジャケに入っていますね。いつから変わったのかなあ。


『SAND』『Sixteen Men Of Tain』は手元の盤と比べると、色味がずいぶん違います。『Wardenclyffe Tower』は、日本盤と輸入盤でジャケ違いがありますが、今回は塔のイラストのジャケ。ゲートフォールドジャケですが、日本盤の内ジャケにあった曲ごとのパーソネル表記はありません。『Hard Hat Area』も日本盤とはジャケ違いです。


ジャケ比較 AH1ジャケ比較 AH2ジャケ比較 AH3
ジャケ比較 AH4ジャケ比較 AH5ジャケ比較 AH6

↑違いのあるものを並べてみました。左が元のCDのジャケ、右が今回のBOXのジャケです。


というわけで、ジャケの(こまかな)違いで両方とっておきたいなどと考える人がどれぐらいいるのかはわかりませんが(苦笑)、一応、参考までに。曲の出入りでいうと、アルバムごと収録されていない『All Night Wrong』を除くと、未収録は『THEN!』のボーナストラック1曲だけですね。『ウォーデン…』の3曲が収録されているだけに、なぜこの1曲が入れられなかったのか、未収録が惜しまれます。


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