空犬通信

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1979年に続く第2弾、『1984年の歌謡曲』……そして『ギター・マガジン』も歌謡曲特集

「歌謡曲」関連で、興味深い本が続けて出ました。



書影 1984年の歌謡曲書影 ギタマガ1704


まずは、『1984年の歌謡曲』。こういう音楽本が読みたかったのだなあ……そんなふうに思わせてくれる1冊です。


内容紹介を引きます。《バブル経済前夜、1984年は日本の歌謡曲においても大きな転回点だった。70年代から始まった「歌謡曲とニューミュージックの対立」は、「歌謡曲とニューミュージックの融合」に置き換えられた。同時に、「シティ・ポップ」=「東京人による、東京を舞台とした、東京人のための音楽」が誕生。それは都会的で、大人っぽく、カラカラに乾いたキャッチコピー的歌詞と、複雑なアレンジとコードを駆使した音楽であり、逆に言えば、「田舎」と「ヤンキー」を仮想敵とした音楽でもあった。1984年とは、日本の大衆音楽が最も都会的で、最も洗練されていて、そして、最もおしゃれだった時代ではなかったか?》


同じ著者の前著『1979年の歌謡曲』(彩流社)もおもしろかったけど、今回もすばらしいなあ。おもしろくてなつかしくて、一気読みでした。


あちこちに引用したくなるような、うんうんうなずきたくなるような記述がいっぱいの本で、どこをどう紹介していいかわからず、とにかく読んでほしいとしか、ぼくの技量では書けないのが大変残念ですが、あの「当時」の音楽シーンが、というか、あの当時の時代感そのものが浮かび上がってくるような本になっています。


著者が本書で1984年の音楽シーンの金字塔とする薬師丸ひろ子「Woman“Wの悲劇”より」(帯にもジャケ写が使われています)を、とくに、あの印象的で(本書の表現を借りれば)「浮遊感のある」サビを、コード進行とメロディの関係を丁寧に解説しながら読み解いていく一節は本書の白眉でしょう。


ジャケ Wの悲劇

薬師丸ひろ子の「Woman“Wの悲劇”より」といえば、2、3年前(いま調べたら2013年でした)に紅白で本人が歌い、当時と変わらぬ声と独特の歌唱を披露して話題を呼んだことがありましたね。ぼくもそのとき番組を観ながら久しぶりに聴いて、これ、歌うの難しいだろうなあ、などと思ったもので、後日、CD(ドーナツ盤も持ってます)と楽器を引っ張りだして、コード進行を拾ってみたことがあったのです。ですので、よけいに同曲の解説はわくわくしながら読むことができたのでした。


何曲かについては、コードやメロデイに関する記述が出てきますので、楽典に関する知識や興味がある方ならば、よりおもしろく読めるかと思いますが、基本的には、専門知識の要る内容にはなっていませんので、コードや楽譜のことはさっぱりわからん、という方も安心して手にとっていただければと思います。


ところで、著者のスージー鈴木さん、ほぼ同世代で(あちらが少し先輩です)、同じく高校時代を大阪で過ごしたこと、ハードロックに入れ込んだギター少年だったことなど、当方と共通点がいくつもあります。そんなことが関係あるのかないのか、前著『1979年の歌謡曲』のときもそうでしたが、音楽の見方や文章の感じに、とても親近感を覚えるのです。


なつかしい歌謡曲に関するあれこれを読んでいると、そういえば、西荻窪にあったブックカフェ、beco cafeでたまにやっていた音楽イベント、beco recoを思い出しました。テーマを決めて音楽をかけながら、その音楽について語るというイベントで、歌謡曲をテーマに開催したこともありました。けっこう盛り上がって楽しかったなあ。ちなみに、そのときの選曲のしばりは偶然にも「1984年までの歌謡曲」でした(ほんとです)。本書を読みながら、そんなことも思い出したりしました。


ちょっと脱線しましたが、音楽を身近に感じながら育った人で、本書に出てくるような音楽をリアルタイムで聞いていた人におすすめなのはもちろんですが、世代が違っているために、この時代の音楽をリアルでは聞いていない人、カラオケやYouTubeなどで後から知ったという方にもおもしろく読めそうな気がします。


個人的に1つ残念なことがあるとしたら、同じテーマ同じ著者の前著『1979年の歌謡曲』と並べておきたいところなのに、判型がそろわないこと。(いつか『1979年の歌謡曲』も新書入りしないかなあ。)


一方の『ギター・マガジン』、特集は「歌は世につれ 世は歌につれ 恋する歌謡曲。」。版元の内容紹介によれば、こんな特集です。


《今回はおもに70〜80年代をターゲットとし、数々の輝かしきスターが歌った楽曲のギター・プレイと、その弾き手たちの物語をお送りしたい。また、同時代の歌謡界において、ギターをアイデンティティとしていた野口五郎とCharがなんと40年ぶり(!)に邂逅した特別対談も実現。さらに“歌謡曲以降=J-POP”の目線から、小室哲哉も登場してくれた。さまざまな切り口による本誌初の歌謡曲特集、全力の104Pをぜひご一読あれ》。


同誌は中学生のころから読んでいますが、ぼくの記憶にあるかぎり、歌謡曲がメインの特集として取り上げられたのは同誌の歴史で初めてではないでしょうか。


ゴダイゴやツイスト、オフコースのようなバンドスタイルのアーティストの場合は、ギタリストがいるのが、視覚的にも音的にもわかりやすいのですが、ソロの歌い手の場合、とくにアイドルの場合は、仮にイントロやバッキングやソロにかっこいいギタープレイが聞こえてきても、誰が弾いているのかはわかりませんし、そもそも「誰」が意識されること自体が少ないでしょう。


たとえば。松田聖子の「チェリー・ブラッサム」の全編に流れる歪んだギターのバッキングも、短いけど印象的なギターソロも、中森明菜の「少女A」のロックなイントロもソロも、前後を含めぼくの同世代なら鼻歌で歌えない者はいないくらい、別にロック好きギター好きでなくてもみんなが知っているプレイですが、誰が弾いているかを言える人はほぼいないでしょうからね。(ちなみに、前者は今剛、後者は矢島賢。どうでもいいことですが、この2曲、どちらもバンドで演奏したことがあるので、今でも弾けます……たぶん。)


でも、こういうわかりやすくロックギターが入っている例にかぎらず、実は歌謡曲には、ギターが効果的に使われている例が、ギターの達人技が曲の盛り上げに大いに役立っている例が少なくないんですよね。ほかにも、いろいろありますよ。太田裕美「木綿のハンカチーフ」、コンプを効かせた音色のイントロが印象的ですが、歌バックのカッティングも効いてますよね。沢田研二は、イントロからギターのカッティングが鳴る「TOKIO」、また、UKパンク&ニューウェーヴの影響の色濃いエキゾティクスがバックについていた時代の楽曲ではかっこいいギターがいっぱい聞けますが、ぜんぜんロックっぽくない曲、たとえば「時の過ぎゆくままに」なんかも、イントロにけだるいギターのフレーズが入っていて、曲の雰囲気づくりに一役かっています。ブラックミュージック+ラウンジ歌謡といった雰囲気のもんた&ブラザーズ「ダンシング・オールナイト」は、ボーカルにからむオブリやソロ(コンプで音がぱきぱき)もいいですが、歌バックのカッティングもかっこいいです。


……と、歌謡曲で効果的に使われているギタープレイは枚挙にいとまがなく、こちらも好みの話題なので、書き出すととまらないのですが、こういうのがたくさん取り上げられているといいなあ。まだ読んでないので(音源と楽器を傍らに用意して読みたいので、週末でないと読めないのです)、どんなふうに取り上げられているのかわからずに書いていますが、おそらくはこうした、歌謡曲におけるギタープレイの数々を、専門誌ならではの観点で、丁寧に解説してくれているのだろうと思います。楽しみだなあ。


歌謡曲で育ったギター弾きにとっては、必読の1冊になりそうですよ。楽器プレイヤーでなくても、音楽を聞く際に、参加ミュージシャンをジャケやライナーでつい確認してしまうタイプならば、おもしろく読めそうですね。


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コメント

初めてコメントさせて頂きます。

突然、失礼致します。
特撮秘宝でツイ検した所、空犬様のグランデという箇所にグッと来て、こちらに伺いました。私は、恐らく空犬様より少し年上ですが、特撮秘宝を毎号グランデでフラゲするのが生き甲斐で、スージーさんの二冊もゲットしている者です。
楽器の知識は皆無ですが「チェリー」のギターソロは、いまだにエアギターするほど好きです。
ですから今回、ギタリストの名前を知ることができて嬉しいです。
本当にありがとうございました!
私は「本の雑誌」読者でもあるので、書店に関する過去ログも楽しみに拝見させて頂きます。 それでは、突然失礼致しました。

  • 2017/03/18(土) 10:08:53 |
  • URL |
  • 豆はんてん #-
  • [ 編集 ]

特撮本はグランデで買いたくなりますね

豆はんてん さん>
訪問&コメント、ありがとうございます。
失礼、どころか、大歓迎です。

特撮にグランデに歌謡曲にと、共通点がいろいろ
あるようで、そのような方に反応いただけるのは
こちらも大変うれしいです。

> 書店に関する過去ログも楽しみに拝見させて頂きます。
はい、そちらが本ブログのメインパートだったり
しますので、よろしければぜひご覧ください。

  • 2017/03/18(土) 22:41:10 |
  • URL |
  • 空犬太郎 #-
  • [ 編集 ]

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