空犬通信

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題名がすごすぎる……山中峯太郎版ホームズ全集が作品社から刊行

『SHERLOCK』人気がひとつのきっかけになったんでしょうか、『SHERLOCK』以降、ホームズ関連本がすごい勢いで出ている気がするのですが、まさか、このシリーズまで復刊されるとは。驚きです。「『名探偵ホームズ全集』刊行(1/27 読売新聞)


いわゆる「山中峯太郎版」のホームズ全集です。山中峯太郎版といっても、知らない読者もいるでしょう。先の読売新聞の記事によれば、《昭和30〜50年代に全国の学校図書館によく置かれていたポプラ社版の全20冊のシリーズ》で、それを3冊にまとめて復刻したものです。



版元、作品社のサイトよりも紀伊國屋書店のほうがくわしいので、詳細はこちらをどうぞ。


このシリーズは、翻訳というよりも翻案といったほうがよさそうな、訳者独自の世界が展開されていることで、ホームズ好きや推理マニアの間では知られています。Wikipediaの山中の項には《1956年よりは名探偵シャーロック全集(全20巻)として刊行されたシャーロック・ホームズものの翻案は、題名や設定を大幅に変更した怪作として知られている》などとあります。「怪作」(笑)。そのあたり、新聞記事ではさすがにそこまでは書けないのか、ちょっと控え目な表現になっていますが、こんなふうに書かれています。


《「深夜の謎」「恐怖の谷」「怪盗の宝」……。作品の題名を眺めるだけでも、怪しい展開に胸を弾ませた記憶がよみがえる》。「怪しい」が展開にかかっていますが、はてさて(笑)


このシリーズ、こうして復刊されるぐらいですから、長く版元品切れだったはずですが、全20巻の題名が見られる一覧は、現在もポプラ社のサイトにあがっていますね。こちら。本体「150円」と、当時の値段が表示されているだけでなく、「土人の毒矢」といった、現在では絶対に出せないような書名もそのままで、あがっています。


読売の記事は、《山中版の「ホームズ」は、大食いで快活な人柄であるなど、細部が変わったり、読みやすくされたりしている》と続きますが、その《独自に解釈された部分》には《細かな注をつけて指摘》がされているそうです。どんなふうに指摘(つっこみか;笑)されているのか、そちらのほうがちょっと気になりますよね。


この山中峯太郎版のホームズ全集、『ぼくのミステリ・クロニクル』で、戸川さんに取材をしているとき、戸川さんが幼少時代に親しくふれた本として、何度もそのお話に出てきたシリーズなのです。ぼくはだいぶ後の世代ということもあり、本シリーズにはとくに思い入れはなかったんですが、講談調とも言うべき独特の文体、原題あてクイズに使えそうな独自過ぎるタイトル訳など、戸川さんの話を聞いていると、俄然興味がわいてきて、これはこれで読んでみたいなあと、強く思わされたりしたものでした。


ちなみに、ぼくの子ども時代のホームズ体験ですが、小学生のころ、あかね書房の『少年少女世界推理文学全集』で『シャーロック・ホームズの冒険』を読んだほか、山中版にもポプラ社文庫版(新書サイズのものです)「名探偵ホームズ」で数冊出会ったような記憶はありますが、シリーズを読むぞと意識して手にとり、正典をすべて読了したのは、延原謙訳の新潮文庫版でした。古本屋さんに安く出ていたのを1冊ずつ買いそろえたのをなつかしく思い出します。長く親しんできた愛着のある本なので、今も手元にありますが、今ホームズものを読み返すときは、深町眞理子先生による新訳の創元推理文庫版を手にとることが多いですね。


……と、ちょっと脱線しました。今回の作品社の復刊全集、読んでみたい気がするものの、3巻そろえると2万円超というのは、他の版でさんざんホームズを読んできた身にはややためらわれますね(苦笑)。ちなみに、元版の古書価を「日本の古本屋」で調べてみると、本稿執筆時点ではそろいは出ていないようで、ばらで見ると、巻による値段の差が激しく、平均の相場はわかりませんが、少なくとも20巻をばらで買いそろえようと思うと、2万円では難しそう。


昭和の雰囲気全開の装画や挿絵や雰囲気も楽しめる元版を古書で探して手に入れるか、簡単に入手できて読みやすく、註などの補足情報・資料も充実した今回の復刊で手に入れるか……これから読んでみようという人は悩みそうですね。って、そんなに悩む人、いないか(苦笑)。ぼくはけっこう悩んでいます。お金云々よりも、ほかに読みたい本読まなくちゃいけない本がこんなにたくさんあるのに、それらをさしおいて山中版ホームズかよっ!と、脳内の比較的冷静な空犬さんに突っ込まれていまして……(苦笑)


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