大好きなマンガの新作(といっても新装版なんですが)が出ると、それがたとえ、以前に持っているものとの重なりを含むものであっても、やっぱり買ってしまいますよね。
- 本秀康『レコスケくん 20th Anniversary Edition』(ミュージックマガジン)

タイトルに20周年記念とあるのは、版元の内容紹介によれば《「さすらいのレコスケ」の連載開始からちょうど20年になるのを記念して》刊行された版だからとのこと。今回の版について版元の内容紹介を続けると、《2007年に刊行した『COMPLETE EDITION』以後に描かれた「レコスケくん」は、94ページ分! 当社以外の出版物に掲載した作品やweb用の作品もすべて収録し、装丁も一新しました》となっています。
大好きなレコードマンガです。以前の版は、もう何度読み返したかわからないくらい、何度も何度も読んでいます。作者の本さんが出演するレコードイベントを観にいったことがあって、そのときサインをもらっているので、過去2版は両方ともサイン本だったりします。
それくらい思い入れのあるマンガですから、それを新しい版で読めるのは本来なら文句なしにうれしいことのはずなのです。たしかにうれしいんだけれど……追加は94ページのみで、残りは既出というのがどうもなあ……。
大好きな作品だけど、というか、大好きな作品だからこそ、この作品の版元の売り方にはちょっと釈然としないものも感じてしまったりします。
『レコスケくん』は今回のものも含めて3回刊行されています。
1)『レコスケくん』(2001)
2)『レコスケくん COMPLETE EDITION』(2007)
3)『レコスケくん 20th ANNIVERSARY EDITION』(2016)
2は、1に17話+初期テイクの72ページを加えた「完全版」とうたったもの。
2は全200ページで、1+72ページ。
3は全280ページで、2+94ページ。
1と2は約130ページが、2と3は約180ページが、それぞれ前の版と重なりとなるわけですね。これって、さすがにどうなのかなあ。何回同じものを買わせるんだ、っていう話ですよね……。まあ、買ってしまうんだけど……。
さすがに、なんとなくすっきりしなかったので、知り合いの書店員さんに、ちょっと愚痴めいたことをこぼしてしまったら、こんな返事が返ってきました。たしかに、こういう本の出し方をされると昔からのファンは腹が立つかもしれない。でも、新しく出会う読者もいるのだから、こうして版が新しくなって、絶版にならずにまた読めるようになること自体は喜んでもいいことなのでは、と。
なるほどなあ。そういう考え方もあるのかなあと。
先に引いた版元の内容紹介は、こんなふうに終わっています。《レコードと「レコスケくん」が大好きなら、2001年版や『COMPLETE EDITION』をお持ちの方も、そうでない方も、きっと楽しめるはず。ぜひお買い求めください!》
たしかに、今回も結局、重なりも何も関係なく通読して、やっぱり楽しく読めたのだから、これはこれでいいのかもなあ。そんなふうに思えるようになってきました。でも、3冊、本棚に並んでいるのを見ると、うーん、という気がやっぱりしないでもないけれど(苦笑)。
というわけで、すでに過去2版を持っている人に、強くおすすめしていいものかどうか、やや迷う本ではありますが、ファンなら買ったほうがいいかもしれませんし、過去の版を持っていない方、これまで雑誌掲載などで部分でしか読んだことがない方、でも、レコスケくんに興味がある、もっと読みたい、という方は迷わずに買うべきでしょう。
レコードを好きで良かった、そんなふうに思わせてくれる1冊です。
ところで。毎回そうなんだけど、『レコスケくん』を読むと、ビートルズや、ジョージ、ポールのソロ諸作を聴きたくなりますよね。もちろん、アナログで。