空犬通信

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『小さな出版社のつくり方』

こんな本をいただきました。



書影 小さな出版社

版元のサイトから内容紹介を引きます。《ライフワークとして出版業界を見つめ続けてきた永江朗が、新しく創業された「小さな」出版社、11社12人にロングインタビューを敢行。硬直化した出版業界のなかでいつしか忘れていた「本」への気持ちを思い出させてくれる一冊。出版社のみならず、書店、取次など「本」を仕事として選んだすべての人たちにおすすめです》。


本書に登場する版元は以下の11社です(サイトから;登場順)



大変興味深く、またおもしろく読みました。およそ出版関連の記事で、「出版不況が叫ばれるなか」といったたぐいの書き出しをもたないものはないのではというほど、出版=不況というのがメディアではもうすっかり定番になってしまった感がありますよね。


それでも本をつくりたい、本を届けたいという志を持つ人たちがいなくなったわけではありません。そんな志ある人たちがおこした小さな出版社を紹介する本書は、出版にできることはまだまだたくさんあるのだということを実感させてくれる1冊だと言っていいと思います。小さな出版社の活動、その出版物に興味のある方にはおすすめの1冊です。



以前の記事で紹介した西山雅子編『“ひとり出版社”という働きかた』(河出書房新社)と併せて読まれるといいのではないかと思います。



何かというとすぐに不況だ不況だと言われがちなこの業界でがんばっている人たちのことを、きちんと世に紹介してくれる本については大歓迎ですし、今後も出てきてほしいと思います。


そのように思うからこそ、関心も愛もある分野の本だからこそ、そういう本が出るなら、こうだといいなあ、こうでないといいなあ、というこまかなことも気になってしまいます。


以下、読んでいて気づいたこといついて、少しふれておきます。(あくまで、この分野にふだんから非常に関心の高い立場の者が読んで気がついた個人的な感想で、本書の価値を否定するようなものではありません。)


個人的に気になったのが、出版社のセレクトです。類似テーマの先行書として、『“ひとり出版社”という働きかた』やムック『一度は読んでほしい 小さな出版社のおもしろい本』が出ていることかもあきらかですが、ひとり出版社、小さな出版社は出版界にはたくさんあります(前者に登場する版元と今回の『小さな出版社』で取り上げられている版元もほとんど重なっていません)


もともと、出版業界は、それなりの規模の社は業界全体のほんの一握りで、世間の企業規模に比すればほとんどが「小さな出版社」といっていいような業界です。だから、「小さな出版社」は当たり前と言えば当たり前の存在なんですが、でも、最近、こうした本が続けて出ているのは、昔から小さい出版社が多いのだという話ではなく、出版の苦戦、不況が言われるようになったこの時代に、あえて小さな版元を立ち上げる人たちが多いことにスポットをあてたい、そういう存在のことを知らしめたいという思いからのものなのだろうと思います。


今回の11社のなかにSPBSが入っています。公式サイトに「手打ち蕎麦屋さんや手作りパン屋さんのように“そこでつくってそこで売る”出版社」とありますし、出版業が重要な業務の1つであるのはまちがいないでしょうが、ユニークな本屋さんとして取り上げられる機会も多い社ですので、11社しかない枠の1つに入れるのかはちょっと微妙にも思えます。


また、コルクも入っています。「漫画家・小説家などのクリエイターのエージェント集団」を名乗り、「クリエイターのエージェント業」を事業内容としてあげているわけですから、「小さな出版社」としてここに取り上げるのはちょっと疑問を感じます。


それにこの2社、とくにコルクは講談社のエース編集者が立ち上げたエージェントということで話題を呼び、メディアでの取り上げられる頻度も他の小出版社とは比較にならないほど多く、テレビなどにも単独で取り上げられたりしていますから、こういう本でわざわざ取り上げる必要があるのかなあと、そんなことも思ってしまいました。


当方の知り合いの範囲でも、苦楽堂、ビーナイス、猿江小會(本書の出版元)といった「ひとり出版社」がありますし、以前紹介したハマザキカクさんのパブリブもそうでしょう。また、面識はありませんが、以前の記事でふれた『漫画編集者』に登場している江上英樹さんも退社後、ブルーシープを立ち上げています。


先の2社が選ばれたのは、一般的な知名度のある社も入れておこうという意図的なセレクトなのかもしれませんが、この2社の代わりに、メディアで取り上げられる機会の少ない、でも、興味深い出版活動をしている、他の「小さな出版社」の紹介を読みたかったなあと、そんな気もしてしまいました。


あとは、こまかいことで、好みの範囲の話ですが、扉や表紙などにあしらわれている各出版社のロゴをのぞき、図版がまったくないのはちょっと残念でした。インタビューに応じている社主のみなさんの写真も、その社の代表的出版物の書影などもありません。本作りにもこだわりのある版元ばかりが取り上げられているので、その社の顔とも言うべき出版物の写真がまったくないというのはちょっとさびしいかもしれませんね。(直接比較してもあまり意味はないかと思いますが、『“ひとり出版社”という働きかた』には書影他の図版がたくさん使われていましたね。)


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