空犬通信

本・本屋好きが、買った本、読んだ本、気になる本・本屋さんを紹介するサイトです。

第23回東京国際ブックフェアを見てきました【更新】

追記(9/27):以下は、開催中に書いた記事です。「新文化」の記事によれば、来場者数は、前年比約3000増の4万0564人(主催者発表値)だったそうです。



ビッグサイトで、第23回東京国際ブックフェアが開催中です。


今年のブックフェアは、《読書推進に特化した本の祭典》(9/1付朝日新聞「本の祭典「第23回東京国際ブックフェア」 23日から」より)ということで、一般の読者向けを意識したものになるとされていました。初日、23日(金)の午後に会場を訪問しましたが、平日なのに会場はたくさんの人でいっぱい。受付をするともらえる入場証代わりのホルダーを見ると、「読者」となっている方も多いようでした。


TIBF2016

親子連れのお客さんもけっこういて、ノンタンと撮影ができる偕成社のブースや、図鑑クラフトブックの体験ができる小学館のブース、たくさんの絵本・児童書が並ぶ児童書共同ブースには、子どもの姿や親子連れの姿が多く見られましたし、「こども基地」と名づけられた遊び場にもぺたんと座りこんで本を読んだり、遊具で遊んだりしている子どもたちの姿が見られました。


本のイベントに人が集まっているのを目にすると、それだけでうれしくなりますよね。不況だ苦戦だといっても、まだこれだけたくさんの人が、本のお祭りを楽しむために集まってくれるのだなあ、と。子どもたちの姿があるとなおさらです。


ブックフェア、ツイッターなどの反応・評価を見ていると、年に1回の本のお祭りを楽しんでいる声も多く見られる一方で、ただの本の安売り市ではないかという批判、揶揄も見られます(今年にかぎったことではなく、毎回言われることですが)


でも、「ただの安売り市」などと切り捨ててしまうようなものでもないと思うんですよね。


たとえば、河出書房新社、みすず書房、国書刊行会、青土社、白水社、平凡社など、「その出版社が出している本が好き」というファンがついている版元があります(例としてあげただけで、他の版元がそうではないということではありません)。これらの版元のブースに行くと、当然ながら、その社の出版物がずらりと並んでいるところを見ることができますが、実はこういう「特定の出版社の本だけがまとめて展示されている状態」を目にするのって、けっこう貴重な機会なんですよね。


国内最大級の品ぞろえをほこるジュンク堂書店の池袋本店クラスには、こうした版元の本はたくさん並んでいますが、ジャンルに分かれているため、その社の出版物を一つの場所で一望することはできません。でも、ブックフェアのブースならば、文学書も人文書も芸術書も一度に眺めることができます。


ジャンルで棚が分かれてしまう書店や図書館では、ふだんはどうしても自分の興味のある棚にしか足が向きませんから、自分が好きな本を出している出版社の本でも、興味外はもちろん、隣接ジャンルの本でさえ見逃しがちです。つまり、通常の陳列形態では、出会いにくい本というのがあるわけです。新刊情報をこまめにチェックし、頻繁に書店に出入りして特定ジャンルの本については棚をあきるほど見ている当方のような者でも、こういうブックフェアのブースで、ある版元の本を端から眺めていくと、へー、こんな本が出てたのか!というのがいくつも出てきます。ふだん大型書店に出入りする機会の少ない方ならば、発見と出会いだらけになる可能性だってあるのではと思うのです。


「安売り」、値引き販売についてはどうか。ぼくは書店が好きなので、新刊は書店で正価で買っています。でも、1年に1回のブックフェアでは、多少の値引き販売はあっていいと思うのです。会場のビッグサイトというのは、ふらりと立ち寄れるような立地ではありませんから、ここに集まっているのは、交通費を出して、時間をかけて、わざわざブックフェアにやってきた人たちです。そのような人たちに半日の買い物を楽しんでもらおうというのですから、それぐらいのサービスはあっていいと思うんですよね。それが批判されるようなものだとは、ぼくは思いません。


それに、よく見ると、値引き販売以外にも、いろいろと自社出版物を知ってもらう、楽しんでもらうための工夫をしている版元はけっこうあるんですよね。先にあげた児童書の例はまさにそうですし、大人向けでも、ブースでミニ講演会・トークを実施しているところはいくつもあります。創業130周年を迎えた河出書房新社のブースは、ブースの外側壁面に過去の出版物が展示されていました。昔読んだ本、買った本など、なつかしい本もたくさん並んでいましたよ。


書影 河出130周年

↑ブースでは同社の歴史をまとめたこんな冊子も無料配布されていました。1万円以上買うともらえるという同社のトート、ちょっと欲しかったけど、さすがに1万円は買えず……。


あと、このイベントは「国際ブックフェア」です。中国、台湾、韓国、トルコ、イラン、マレーシア、フィンランドなど、(数が多いか少ないかは見る人の印象もあるでしょうが)海外の出版社もブースを出しています。翻訳や海外版権関連の仕事に関わってでもいなかぎり、英語以外の出版物にふれる機会は一般読者にはそう多くはないでしょうから、それらに手にすることのできる貴重な機会でもあるわけです。


というわけで。明日までのブックフェアを、前日夜に紹介するのもなんですが、記事をご覧の方で、明日ご予定のない本好きは足を運んでみてはいかがでしょうか。(とくに業界外の一般の方にとっては)めったにない新刊の値引き販売を楽しむもよし、各出版社の講演などを聞くもよし、海外出版社のブースで(英語圏以外の)海外の出版物にふれるもよし。


会場はかなり混雑していますから、手荷物は少なめ、軽めで、身軽な格好で行かれることをおすすめします。また、(値引き販売の誘惑に負けそうな予感のする)買い物をたくさんしちゃいそうな方は、大きめのトートなども用意していかれるといいでしょう。(昔は、ちょっと歩くと、あっちでもこっちでも資料のたくさん入った紙袋や薄手のトートなどを手渡されたものですが、最近はどの社もそうした袋類や資料類のばらまきはあまりしていませんからね。)



本日、9/24(土)も会場に足を運んだんですが、今日は、ブックフェアではなく、しばらく前の記事で紹介した「本の学校 2016 in 東京」の講演・シンポジウムを聞いてきました。その報告も少しだけ。


午前中は特別講演に、午後は出版産業シンポジウムの第二分科会と第四分科会に参加してきました。


本の学校2016 分科会資料1本の学校2016 分科会資料2

第二分科会「町の本屋は地元で支える 留萌ブックセンターby三省堂書店の5年間」には、留萌ブックセンターby三省堂書店の店長今拓己さん、三省堂書店応援し隊の武良千春さん、塚田亮二さんが登壇。


『本屋会議』(夏葉社)に掲載のルポのために留萌を訪問したのは2年前のこと(そのときの様子は、こちらの記事で報告しています)。こちらのことを覚えてくださっているかどうか、不安だったんですが、シンポジウム終了後にお声をおかけしたら、みなさん覚えていてくださって、ほっとしました。まさか、東京で留萌のみなさんにお会いできるとは。とても楽しかった取材のことを思い出して、うれしくなってしまいました。


ちょっと宣伝めきますが、『本屋会議』(夏葉社)に寄せた留萌のルポ「【町の人たちが支える本屋さん】留萌ブックセンターby三省堂書店」は、ぼくがこれまでに書いた書店訪問記のなかで、いちばん自信のある、というか、いちばん思い入れのある文章なので、留萌ブックセンターby三省堂書店と三省堂書店応援し隊の活動に、留萌という町に興味をお持ちの方には、ぜひお読みいただければと思います。


第四分科会は「『雑誌販売戦略』を再構築する 売るための考え方、技術、仕組みetc.」。ぼくは仕事では雑誌編集にも販売にも関わっていませんし、読者としてもどちらかというと単行本派で、雑誌を買う読む機会がそれほど多い読者ではないんですが、このシンポジウムは大変に勉強になりました。


登壇された書店員、ブックエースの奥野康作さん、ブックファーストの梶野光弘さん、紀伊國屋書店の百々典孝さんは、みなこの業界では雑誌販売のプロフェッショナルとして有名な方々ですが、お三方ともさすがとしかいいようのない話で、ちょっと圧倒されてしまいました。


ぼくが簡単に要約できるような話ではないので、ぜひ来年には刊行されるはずの記録集を待ちたいと思いますが、書店関係者というよりは、むしろ出版関係者にとって、大いに刺激と示唆に富む話だったように思います。


書影 本をめぐる新たな

↑分科会は有料ですが、昨年のシンポジウムの記録集、『「本」をめぐる新たな見取図 本の学校・出版産業シンポジウム2016への提言』(出版メディアパル)がもらえますので、参加無料のようなものですね。来年刊行される版に、今年の分が掲載されるはずですので、今回、シンポジウムの話を聞けなかったという方は、そちらでチェックしてください。


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