空犬通信

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"「本と町」の可能性を教えてくれる名著"が復刊に……『移動図書館ひまわり号』

夏葉社の新刊は、同社としては久しぶりの復刊もの。今回は図書館がテーマの本です。こちら。



書影 移動図書館

個人的にもうれしい復刊です。というのも、この本、ぼくは以前に、筑摩書房版で読んでいるんですが、初読時、大変に感銘を受けた記憶があるからです。このような本が切れてしまっているのは惜しいなあと思っていたのでした。


本書の内容ですが、1988年刊の筑摩書房版の内容紹介にはこうあります。《東京都の日野市立図書館は、ひまわり号一台だけで出発し、一部の無理解や悪意に耐え、市民の圧倒的な支持を得ていった。初代館長が書きつづった感動的な記録》。


書名には「移動図書館」とありますが、移動図書館のこと「だけ」が書かれた本ではありません。目次を見ると、「市民のなかへ」「市民と図書館」といった表現が見えますが、まさに、地域の読者と図書館の関係について踏み込んだものになっています。版元の島田さんは、本書の刊行についてふれたツイートで、《図書館が1つもなかった市に、本が広がっていく歴史的な記録。感動します。本の可能性、「本と町」の可能性を教えてくれる名著です》と書いていますが、同感です。



最近は、図書館の話題というと、一連のいわゆる「ツタヤ図書館」の不適切(と報道ではされることの多い)な蔵書購入問題や、公共図書館の貸出猶予問題など、どちらかというと否定的な文脈で取り上げられることが多くなってしまっています。本来、図書館は地域住民に、とくに自分で自由に本を入手したり本にアクセスしたりすることが難しい子どもたちに本を届ける大事な存在のはずです。この本は、そういう利用者と図書館の関係について、いろいろな意味で考えさせてくれる内容になっています。図書館のことはもちろんのこと、本のこと全体に関心のある方に読んでいただきたい1冊です。


なお、図書館の世界では名著とされてきた本ですから、当方のように筑摩書房版ですでに手にとったことのある方もたくさんいらっしゃるでしょう。夏葉社島田さんの話では、元版にはない図版なども収録されているそうですから、元版を読んでいる方もあらためて手にとってみるといいかもしれません。何より、夏葉社の本ですから、元版(がそうではなかったということでは決してありませんが)とは装いをがらりとあらため、長く手元にとっておきたくなる本の造りになっています。その点も、本好きにはうれしいポイントですよね。ぼくも今回買い直した夏葉社版で、じっくり再読するつもりです。


著者の前川恒雄さんは、日野市立図書館のほか、滋賀県立図書館長などもつとめられた方で、本書以外にも図書館関連の編著書を複数お持ちです。『前川恒雄著作集』全4巻(出版ニュース社、1998〜1999)という著作集まであります。ぼくは前川さんの著作は、この『移動図書館ひまわり号』しか読んだことがないのですが、ほかの本も読んでみようと思っています。


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