空犬通信

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『天地明察』読者はぜひ……『天文学者たちの江戸時代』がおもしろい

いやはや、実におもしろい1冊でした。



書影 天文学者たちの

版元の内容紹介によれば、このような本です。《「日本の天文学」の大転換は、江戸時代に起こった。日本独自の暦を初めて作った渋川春海、西洋天文学の導入を目指した徳川吉宗と麻田剛立、全国の測量で名を馳せた伊能忠敬、地動説に取り組んだ理論家の高橋至時、「機械おたく」の商人の間重富、シーボルト事件で獄死した悲運の秀才高橋景保…。先行するヨーロッパや中国の知識と格闘し、暦と宇宙の研究に情熱を燃やした江戸時代の天文学者たちの人生と思索をたどると、日本の宇宙観の変遷が見えてくる》。



紹介文中にも登場している渋川春海といえば、冲方丁『天地明察』を小説や映画で楽しんだ方には説明不要の名前ですよね。同作で大変に印象的かつ魅力的な人物として描かれていたのを思い出す方も多いと思います。本書を読むと江戸時代の天文人には、渋川春海のほかにも、才能や人間的魅力にあふれた人物が何人もいたらしいことがわかり、読んでいてわくわくさせられます。個人的には、高橋至時、間重富らの人物像には強く惹かれました。単独の評伝や資料があれば、読んでみたいくらいです。


本書がすばらしいのは、単に江戸の天文人の人となりや業績を紹介するにとどまらず(もちろん、そのような紹介部分が非常にわかりやすくコンパクトにまとまっていること自体、大きな魅力なのですが、それに加えてさらに、という意味で)、手紙や著書など、残されたものから、その人物が当時どこまでの天文学的知識を手にしていたかを推察するなど、ちょっとミステリー的な読み解きをしているところもあったりして、フィクションのように楽しむこともできます。


コンパクトな分量ですし、天文学に関する知識も必要としませんから、当方のような超文系の読者でも難なく読み進めることができます。1点だけ注文のようなものがあるとしたら、人名の読みがもう少し多めにふられていたら、なお親切だったかなあ、ということぐらい。難読のものはもちろんとしても、字面が簡単でも、歴史上の人物の場合、音読みか訓読みかがわかりにくい場合があったりしますしね(両方通用している例もあります)。上に出てきた例で言うと、「春海」は『天地明察』では「はるみ」としていたかと思いますが、人名辞典などでは「しゅんかい」も併記されていたりしますね。あと、「高橋至時」も難しい字面ではありませんが、ぱっとは読めない読者もいるでしょう(「よしとき」のようです)。ただ、これはまあ、こまかな問題で、本書の価値を減じるような問題ではないことは明記しておきたいと思います。


というわけで、この『天文学者たちの江戸時代 暦・宇宙観の大転換』、天文本好きには言うまでもありませんが、ふだんは天文本を手にとらないという方でも、『天地明察』を楽しく読んだり観たりした方であれば、きっと楽しめると思いますので、強くおすすめしたいと思います。



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