空犬通信

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こういう音楽本を読みたかった……『プリンス論』をあらためて

プリンスの追悼番組(これ、すごく良かったです)を観ていて、そういえば『プリンス論』について、記事を途中まで書いていたっけなあ、なんてことを思い出しました。



版元の内容紹介にはこうあります。《それは一人の天才音楽家による“紫の革命”だった――。奇想天外なヴィジュアル、ポップにしてアヴァンギャルドな作曲術とド助平で崇高な歌詞でヒットを連発、世界の頂点に立ったプリンス。彼を師と仰ぐ著者が、同じ音楽家ならではの視点で、その生い立ちから現在に至る、孤独な表現者の栄光の旅路を追う。《パープル・レイン》しか知らない人も、ディープなファンも、脳内にその音楽が高らかに鳴り響く、革命的プリンス論!》


これ、実におもしろく読みました。


ブラックミュージック、ことにファンクを愛する身には、プリンスは好き嫌いを超えた大きな存在です。でも、正直をいうと、個人的にはそんなに思い入れはなく、代表作はほぼ聴いてきましたが、決していいリスナーでもありませんでした(と思っていたんですが、先の番組を観ていたら、出てくる曲出てくる曲、知ってるわ、歌えるわ、印象に残っているわで、番組最後の「パープル・レイン」では落涙おさえるをあたわずてな状態になっていましたから、自分で気がついていなかっただけで、深く心にその楽曲や存在が刻まれていたようです)。それなのに、こんなにおもしろく読める不思議。これ、ファンならばたまらないだろうなあ。


『プリンス論』は単独でもいいですが、ぜひ『ウィ・アー・ザ・ワールドの呪い』(NHK出版新書)との併読をおすすめします。80年代洋楽を熱心に聴いていた身には、なつかしくておもしろい話がいっぱいで、プリンス(は、ご存じの通り、「ウィ・アー・ザ・ワールド」には参加していないわけですが)への言及もあります。個人的には、『ウィ・アー・ザ・ワールドの呪い』のほうを先に読んでおいてよかったなあと感じました。(もちろん、どちらも、一方が未読でも楽しめる内容になっていることは言うまでもありません。)


西寺さんの本や、少し前の本だと、この空犬通信でも紹介している冨田恵一さんの『ナイトフライ 録音芸術の作法と鑑賞法』(DU BOOKS)もそうだと思いますが、これらの音楽本のすばらしいところは、ふつうに読んでおもしろいというだけでなく、1冊の読み物として完結しているところ。つまり、取り上げられている音楽を視聴している(に越したことはもちろんないのですが)ことが前提でなくてもおもしろく読めるところ。


さらにすばらしいのが、取り上げられているアーティストや作品を、深く、じっくり聴いてみようという態度に向かわせるところ。これらの音楽本は、聴き放題(を利用する人すべてがそうではないだろうとは思いますが)のような視聴スタイルに伴いやすい、音楽のBGM化、なんとなく流して聴いてしまう態度へのカウンターのような存在になっているように感じられるのです。


ぼくは、(本業では)編集の仕事は離れてしまったけれど、編集者ならば、こういう本をつくりたいなあ、と切実にそんなことを思いました。


……と、話が脱線してしまいましたが、先の『プリンス論』、プリンスのファンなら必読の1冊だと思いますし、名のみ知るばかりでその音楽はよく知らないという方にもおすすめしたい1冊です。『ウィ・アー・ザ・ワールドの呪い』と合わせて、ぜひ。



プリンス、最近の作や過去の代表作たちについては、たくさんの人がふれているでしょうから、CD棚から、あえてこんなのを引っ張りだしてみました。ザ・ルイス・コネクション『The Lewis Connection』


CD LewisCon

ブレイク前の若き殿下が参加していることでその筋では有名な、ミネアポリスのファンクバンドによる1枚。復刻前はレア・グルーヴ界の至宝とか、幻の名盤とか言われていたそうですが、こういうのが1300円で買えちゃうんだからなあ。


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