空犬通信

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ロンドン書店回り その3……続個性派書店、その他編

ロンドン本屋巡りレポート、今回は前回の続きで、大型書店以外の中小規模店、個性派店をご紹介します。(店内写真はすべてお店の方に断って撮影したものです。写真は3月頃の様子で、お店の様子は変わっている場合があります。)



コミック・アニメなどに特化した、おたく向けのお店。書店街として知られるチャリングクロスロードと交差するシャフツベリー沿いにあります。フランスでのコミック・アニメ人気はよく知られるところですが、イギリスにもちゃんとあるんですねえ、こういうお店が。こちらも今回訪問を楽しみにしていたお店の1つです。


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↑お店のショーウインドーの上には「THE CULT ENTERTAINMENT MEGASOTRE」の文字が。


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↑外観。店のマークはロケットですね。店名はもちろん、SF映画『禁断の惑星』から。ぼくも大好きな映画です。入り口脇にはストームトルーパー。



日本でも、アニメガやアニメイトは、出版不況などということばは無縁とばかりの別世界のにぎわいを見せていますが、こちらでも事情は同じのようです。今回の旅で立ち寄った書店のなかで、もっともたくさんのお客さんが集まっていたのがこのお店でした。単に店内が混んでいるというだけでなく、独特の活気があり、みんなちゃんと買い物もしているようで、レジにも常に人の列が。いやはや。


1階はフィギュア、おもちゃなどグッズがメインです。アメコミ関連が人気なのは日本と同じかそれ以上という感じで、ポケモンなど、日本のものもそんなに多くはありませんが、並んでいました。あと、日本ではあんまり知られていませんが現地では大人気らしいドクター・フーのグッズがたくさんありました。グッズのほかに、Tシャツ、帽子など、衣類もたくさんありました。子連れ、ファミリー客もいましたが、子ども用にということではなく、どちらかというと自分用に求めているという感じの客層が中心のようでした。


地階は、本・雑誌関係。外から見た印象よりも広めのフロアに、ペーパーバックから雑誌から豪華本から何から、おたく向けの本・雑誌のセレクションがぎっしり。そして、こちらもお客さんでいっぱいです。ここでも人気は、アメコミと日本のマンガ。アメコミのセレクションは物量的にすごくて、グラフィックノベルと合わせると、フロアの3分の1ぐらいを占めていたかもしれません。


日本のマンガの人気も負けていません。日本の人気作、主要なもの(といっても、ぼくが見てわかる範囲のもの、ですが)はたいがい英語版が出ていて、こちらもすごい量です。あれもある、これもある、こんなのまで、ということで、棚を眺めているだけで、ちょっとうれしくなります。後日、うちの本好きっ子を連れて、短時間再訪したんですが、やはりこの棚にはびっくりしたようで、何々は日本版と表紙が違う!とか、いろいろ盛り上がっていました。


やはりアジアの作品ということで、英語版になってはいても元のタイトルとの違いなどの問題もあるのか、レジに、「探しているmangaがあったら声かけてね」という貼り紙がありました。「商品」ではなく、「manga」と、わざわざ「manga」に限定してお客さんに呼びかけているのがおもしろいなあと。同じく、貼り紙で、入れてほしいmangaがあったらリクエストしてね、というのもありました。mangaの人気ぶりと、それをさらに広げようとしているお店の姿勢とがうかがわれます。


SF、ファンタジー、ホラーなどのジャンル小説も大変な量です。ジャンル小説の品ぞろえだけでいったら、FoylesやWaterstonesなどの大型店のそれを上回っているのではないでしょうか。先に、ジャンルの下位区分表示などがあっさりめだという話をしましたが、相手がマニアだからということなのか、こちらは逆に、棚によってはこまかく分けられているところもありました。たとえば、ホラーのなかでも、ドラマなどで人気のヴァンパイア・ロマンスもの(実際の表示は失念してしまいました)などは棚がわけてありました(しかも、量もすごい)


サイン本の棚も独立してもうけられていました。ざっと見てみましたが、知らない名前ばかり(苦笑)。店内、階段の壁などにサイン会の案内が出ていましたが、そちらも知らない名前ばかり。あ、一人だけ知っている名前が、と思ったら、SF作家、ラヴィ・ティドハーの名前がサイン会の案内のなかにありました。


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↑店の前に出ていた看板には、ラヴィ・ティドハーのサイン会の案内が。その下にはポケモン(ピカチュウ)


このほか、このジャンルのアート書、映画・テレビ書なども充実していましたし、通常イギリスでは書籍と雑誌は分けて扱われるため、雑誌は書店内にはないことが多いのですが、こちらでは雑誌のコーナーもちゃんとありました。とにかく、イギリスのオタ向けのニーズはほぼまんべんなくカバーしているようでした。


客層もいろいろです。絵に描いたようなおたくもいれば、当方のような観光客っぽいのもいる(これがけっこう多め)し、若者も、子どももいれば、けっこう年輩のマニアっぽい感じの人もいました。男女の偏りもなく、客層が思ったよりも広いことにも驚かされ、そしてちょっとうれしくなりました。


この手のジャンルに興味のない方だとスルーしてしまいそうなお店ですが、でも、本の世界、本屋の世界に興味のある方は、見ておかれるといいと思います。もちろん、コミックやアニメなどの世界が好きな方にはおすすめです。


書影 FPカタログ

↑A4判オールカラーで50ページもある同店のカタログ。後ろのほうに豪華本とフィクション新刊の案内が少し出ていますが、ほとんどがグッズ類の紹介に割かれています。



フォービドゥン・プラネットの近くにあるコミック専門店。入り口は狭いんですが、細長くて奥行きのある店で、外から見た印象よりも取扱量は多めでした。フォービドゥン・プラネットと比べてもしかたないのですが、一般客も含めてにぎわっていたあちらと違い、こちらは店内の雰囲気も品ぞろえもよりマニア向けといった感じでした。


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↑入り口の雰囲気を見るだけで、フォービドゥン・プラネットとの違いがなんとなく伝わってくるという……。店内はそうでもないのに、店頭がややさびれた感じに写っているのは写真のせいというよりは実際の雰囲気がそうだからで、観光客がふらりと立ち寄る雰囲気ではなさそうにも見えました(なんか、入り口脇にずっと座りこんでいるおじさんとかいるし……)。店頭にはスパイダーマンが。1階入り口にはショーケースがあって、ウルトラのソフビ(しかも、なぜかキングとレオ)が並んでいました。



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↑なかなかかっこいい外観。Foyles同様、テーマカラーは赤で、通りを歩いていて、目を引く外観になっています。ウインドーには「THE WORLD'S LARGEST MAP AND TRAVEL BOOKSHOP」とあります。


地図・ガイドの専門店として知られる本屋さん。地図ガイド以外に、一般の小説などもありますが、メインはあくまで地図・ガイド。1階には、地図・ガイドが並び、文具やおみやげグッズなどもありました。1階奥はカフェになっています。2階では、オーダー地図も受け付けていました。


  • HMV(ボンド・ストリート)

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↑人通りの多い通りでは、外観の写真もうまく撮れません。


オクスフォードストリート沿いにあるこのHMVは、音楽メディア全般を扱う大型CDショップですが、アナログの扱いがすごくて、ちょっとびっくりしてしまいました。アナログコーナーとして別になっているのではなく、新譜コーナーにCDと同じ扱いか、下手したらCDよりも目立つかっこうでふつうにずらりと並んでいました。なつかしもの(シン・リジィとか、キャロル・キングとかがふつうに面陳になっている)だけでなく、新譜のアナログ盤もけっこうたくさん出ています。とにかく、数量・種類とも充実していて、とても一部のマニア向けとは思えない見せ方になっていました。


ここでいうアナログは、12インチ、LP盤のこと。以前(四半世紀前)に来たときは、店頭には7インチ盤(シングル盤)もけっこうたくさん並んでいたものでした。LPと違って値段的にも荷物的にも買いやすいし、おみやげにもいいからというので、何枚も買って帰った記憶があります。今回は、7インチはほとんど見かけませんでした。


HMVは本も扱っています。一般のFictionのペーパーバックのほか、音楽本なども扱っていました。本のセレクトについては、特筆すべき点はないようでした。『Vinyl: The Art of Making Records』というアナログ盤関連の書籍が並んでいて、大変気になったのですが、大きくて(ほぼLPサイズ)重くて、さすがにこれは旅行途中で買うのがためられわれました。ちなみに値段は19.99ポンドでしたが、他の何かを買うと9.99になるよ、という表示が出ていました。「BUY ONE / GET ONE /HALF PRICE!」とちがって、組み合わせは自由のようでした。(同じ本が別の店で、抱き合わせなしで10ポンドになっているのも見かけました。)


このHMVが想像していたよりも元気で、充実したショップだったのは音楽好きとしてもうれしかったんですが、ただ、音楽ショップをめぐる事情はイギリスでも日本と同じなのか、レコード屋さん、CD屋さんはやはり少なくなっていますね。街中を歩いていても、ぜんぜん見かけませんから。


  • FOPP(コヴェント・ガーデン)

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↑外観。通りと通りが交差する角っこのお店です。


音楽と映画がメインのお店ですが、本の扱いもありました。地下、1階、2階の3フロアですが、それぞれのフロアは小さめの、中規模店。地下が映画、1階が新譜と本、2階が音楽。本は「本もあります」ぐらいの量でしたが、それなりにそろえてあり、大型店のHMVよりも多いくらいでした。


HMV同様、こちらもアナログの扱いが大きく、そして多いのが印象的です。日本でいくらアナログ人気が再燃中とはいえ、ディスクユニオンのようなお店をのぞくと、一般のCDショップで、ここまでアナログを目立つように取り扱っている店はさすがにありませんからね。音楽好きとして、アナログ好きとしては、ちょっとうれしくなる光景でした。


ただ、アナログ盤、決して安いわけではなくて、値段を見ていると、日本で輸入盤で買うのとそんなに変わらないかもなあ、という感じでした。



最後に、行けなかった店についてもちょっとだけふれておきます。



チャリングクロスロード沿い、Foylesの先、坂を少しのぼった辺りにあるお店です。アダルトとエロティカの専門店ということで(上記リンクも、お店のものではなく、Time Outのものにしています。)、これはこれでのぞいて見たい気もしたんですが、店の前を通るだけでスキップ。外観写真もなしです。後で、一般書の扱いもあるらしいと知り、やっぱり少しでものぞいてくればよかったなあ、と後悔したりも。



大英博物館近くにあるウォーターストーンズの支店です。チェーン店でも、お店ごとに品ぞろえや雰囲気が違うことがあるのは日本でもよくあることですが、こちらの支店は場所柄なのかなんなのか、アカデミック関連に強いとのことで、チェックした2店との違いを見たかったんですが、残念ながら時間切れとなってしまいました。



2015年に新規オープンした、話題のお店。『出版ニュース』2016年3月下旬号掲載の「海外出版レポート イギリス 新規書店の新しい試み」によれば、目を引く店舗デザインで、従来のジャンル分けを廃した独自の分類がなされた品ぞろえ・見せ方のお店だそうです。訪問を楽しみにしていたんですが、エリア的に、他のお店から少しはずれているため、ルートにうまく組み込めず、結局時間切れとなってしまいました。うーん、残念。


店内ではスマホ・タブレットなどの電子機器の使用を一切禁止しているというのも、WEBでは話題になっていましたね。リアル本屋にしかできないことをしたい、ということらしいです。そういう方針のお店、店内がどんな雰囲気なのか、お客さんがどんなふうに本を見ているのか、ぜひ見てみたかったなあ。


これからロンドンで本屋さんを楽しもうという方は、ぜひルートに組み込まれるといいと思います。ただ、これまでに紹介してきた、チャリングクロスロードやピカデリー周辺とは場所がちょっと離れているので、順番などを工夫されるといいかもしれません。



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