空犬通信

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ロンドン書店回り その1……大型書店編

昨日予告だけしましたロンドン本屋巡りレポート。まずは大型書店編から。


ぼくが今回の本屋巡りで、必ずおさえておきたいなとピックアップしたのは、ぼくが勝手にロンドン3大書店と呼んでいるこれらのお店。(店名の後のかっこは、地下鉄での最寄り駅。)



では、大型書店編、訪問順に。(店内写真はすべてお店の方に断って撮影したものです。写真は3月頃の様子で、お店の様子は変わっている場合があります。)



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↑老舗感全開の外観。看板にさらりとうたわれた創業年が、「1797」となっているのがすごい。日本の元号でいうと寛政9年……かえってよくわからない(苦笑)



デパートや有名店が軒を連ねる大通り、ピカデリー沿い、フォートナム&メイソンの隣にある老舗です。外観からして重厚な雰囲気ですが、中がこれまたすごい。


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↑店内は撮影しなかったので、せめて入り口だけでも。


店内に入るとすぐに螺旋階段があります。各フロアはそれほど大きくはありませんが、左右2つのスペースに分かれていて、途中いくつかの通路でつながっているようなかっこうになっています。それぞれの区画は独立性の高いスペースになっていて、一つのフロアを書棚で区切っただけの単純な造りとは対照的な、起伏に富んだフロアレイアウトになっています。


面陳や平台・ワゴンなどの展開は控えめで、背差し中心の書棚がずらりと並ぶ、オーソドックスな見せ方です。フィクション、ノンフィクションとも、ハードカバーが多いのも特徴的。ぼくには無縁なのでよくは知りませんが、稀覯本を扱う古書店はこんな感じなのだろうと思わせる、英国ならではという雰囲気で、日本の新刊書店にはないタイプのお店ですね。


落ち着いた雰囲気で長居したくなるお店なんですが、短時間ではこれぞという本を選び出せず、1冊も買えなかったのが残念。今回の書店回りでは(ちょっとのぞいてみるだけにしようと決めていた店は除き)、訪問店では最低1冊は買うようにしようと決めていたんですが、唯一、買い物ができなかった店、ということになってしまいました。


ちなみに、ぼくが訪問したとき、最上階では、人気作家とおぼしき方が書店スタッフの方に付き添われてサイン本を作っていました。ぼくが学生時代に本屋めぐりをしたときは、サイン本なんて一度も、一冊も目にしたことはありませんでしたが、今回の旅ではあちこちでSigned Editionを見かけました。作家の書店回りやサイン本が当たり前になっているのは、イギリスも日本も同じ、ということなんでしょうね。



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↑入り口の様子。


Foylesと並ぶロンドン屈指の大型書店ですね。先のハッチャーズと同じ、ピカデリー沿い、ハッチャーズとは徒歩で1、2分の至近距離にあります。ご近所の大型書店ですが、2店の雰囲気はまったく異なります。神保町のお店になぞらえると、ハッチャーズが東京堂書店、それもひと昔前の東京堂書店だとしたら、こちらは三省堂書店神保町本店という感じでしょうか。


ウォーターストーンズはチェーンで、イギリスのあちこちに支店があり、ロンドンだけでも複数のお店がありますが、このピカデリーにある店が同チェーンで最大。ロンドンの書店全部のなかでもおそらくは最大のお店でしょう。


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↑入り口の両脇は大きめのウインドーになっていて、両側とも凝ったディスプレイになっていました。左は1冊だけで、かなり大きくスペースを使っていることがわかります。右は、後述する同店の児童書の賞を受賞した作品のディスプレイ。


地下は地図・ガイド、1階はベストセラー・新刊、中2階は文具など、2階はフィクション、3階は児童書、4階はアート・ファッション、5階にはレストラン・バー。1階の新刊コーナーは、半円状の壁面に面陳で本がずらりと並ぶ様は圧巻。フロア中央のエリアには、文房具やおみやげグッズなども並んでいます。


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↑正面入り口を入ったところ。手前の円形のスペースの壁に新刊がずらりと並んでいます。フロアの中央には、いくつかの台が置かれ、ジャンル別に新刊が平積みに。写真奥に見える明るいところは、カフェです。


各フロアはとても広々していて、棚や台の配置もゆったりしたものになっています。フロアごとにレイアウトも工夫されていて、あちこちを歩いて見て回る楽しみに満ちたお店です。


座り読みのスペースがあちこちに用意されています。フロアによって、座り読みスペースの位置や形態が異なっていて、各階で扱われているジャンルにふさわしいスタイルがとられているようです。ゆったりと座れるソファ席になっていて、書棚の本を持ち込んで読んでいる人がいるほか、座り読みコーナー自体にそのフロアで扱われている本でしょうか、複数の本が並んでいるところもありました。


照明は全体におさえ気味ですが、入り口側(ピカデリー側)と正面から見ていちばん奥の壁は、どちらも窓が大きくとられていて、採光は充分のようでした。


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↑左がフロア中央あたりからピカデリー側を見たところ。右はその逆。それぞれ、奥に大きめに窓がとられ、採光が充分であることがわかります。


ウォーターストーンズは、自店のチェーン独自の児童書の賞を展開するなどこちら、児童書にも力を入れているようです。3階の児童書のフロアは、スペースをぜいたくに使った展開になっていて、同店の力の入れ具合がよく伝わってくる充実ぶり。壁際の棚には、年齢対象別に本がずらりと並んでいます。フロアのあちこちに配された台には、新刊絵本や、テーマ別に集められた絵本・書籍が並んでいました。


おもちゃ・知育玩具・ぬいぐるみなど、本以外の雑貨類もたくさん扱われていました。写真で雰囲気が伝わるでしょうか、什器をうまく使って、広いフロアのあちこちを仕切り、それぞれのコーナーをコンパクトにまとめる工夫がされているのが印象的でした。これは、子どもが、そういう隠れ場的なスペースを好むのに合わせたという意味合いもあるでしょうし、子どもがあっちこっちに勝手にいかないように、という安全策・防犯策的な意味合いもあるのでしょう。


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↑2階の児童書フロア。微妙な角度の写真になっているのは、とにかく子どもを含む人の波が途切れず、写真が撮りにくい状態だったので、やむなく階段のところからぱちり(それでも、客が写り込んでしまった……)。テーマ別にいくつかの台が並んでいることや、レジ前に什器で区切ったスペースが設けられていることや、天井から多くの飾りがぶら下がっていることなどがわかるでしょうか。


めずらしいのは5階(現地の表示では4階。階数表示は基本的に、現地表示ではなく日本式で示します)にロシア語書店(The Russian Bookstore)があること。棚を数本あてただけのコーナー扱いではなく、書店内書店のような扱いで、とにかく量が半端ではありません。ロンドンでロシア語書籍のニーズがどれぐらいあるのかわかりませんが、大型書店内に、その国の公用語でない言語の書籍をこれだけの規模で集めたショップインショップというのは、なかなか例がないのではないでしょうか。


今回の本屋巡りでは、本屋本のほかに、野鳥本の棚も必ずチェックしてきましたよ(野鳥好きです)。イギリスはバードウォッチング発祥の地ですから、どの店にも野鳥本の棚はありましたが、こちらのお店は「Bird Guides」だけで棚3本分たっぷりの本があり、うれしくなりました。ネイチャーライティング全般も充実。ガーデニング本家の国でもありますから、ガーデニング関連本にも多くのスペースが割かれていました。


同店はカフェ併設店ですが、おもしろいのは、地下と中2階にカフェがあるだけでなく、最上階の5階にもカフェ(Bar & Restaurantという表示になっていました)があること。


このお店だけでも、ちゃんと見て回ろうと思ったら、半日では足りないぐらいのサイズなので、全体を駆け足で見て回ることしかできなかったのが残念です。



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↑お店の外観。赤がお店のテーマカラーであることがわかります。


書店街として知られるチャリングクロスロード。坂を上り、地下鉄駅トッテナムコートロードの手前あたり、坂下から見て、道の左側にあります。


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↑チャリングクロスロードの様子。


同店は、2014年6月に移転新装オープンとなっています。以前もチャリングクロスロードにありましたが、ぼくが大昔に訪ねたときとは違う店になっているわけですね(以前は坂下から見て通りの右側にあったような記憶もありますが、あやふやです)


別レポートで紹介するDaunt Booksのテーマカラーは深緑ですが、こちらは赤。ロゴも、建物正面入り口上部に掲げられたお店の旗も赤で、目を引く外観です。ちなみに、お店のビニールも赤でした。


ピカデリーのウォーターストーンズ同様、こちらも大型店です。正面入り口を入って1階は、右側が新刊とグッズというのはわかるとして、左半分が芸術書というのが一般的な新刊書店の配置的にはちょっと変わった感じ。中央にインフォメーションがあり、その周辺に新刊台が配されています。インフォメーションの奥には階段があります。中央が吹き抜けで、それを階段が囲むようなかたちになっており、店内全体が立体的な造りになっています。奥の半地下(LGの表示)のスペースには児童書フロアが広がっています。


階段のところのウォールにこんなメッセージが描かれていました。
「Welcome book lover, you are among friends」
あなたの回りはみんな同好の士、というわけですね。これだけで、店内を見て回るのが楽しくなりますよね。


2階はフィクション、3階はサイエンス、4階は芸術、5階は語学、6階はカフェ・ギャラリー。2階では本の本を、3階ではもちろん野鳥本をそれぞれチェック。後者は、Waterstones同様、なかなか充実しています。ジャンルガイドの表示も「Ornithology」(鳥類学の意)となっていて、Waterstonesに比べると、専門的な本や高額本などが多く扱われている印象でした。


4階の芸術フロアでは、書籍だけでなく、CDなどの音楽ソフトも扱われていましたが、驚いたのは、アナログ盤の扱いまであったこと。いま日本でもアメリカでもアナログ熱が再燃などと言われていますが、まさか、大型書店の店内にまでアナログのコーナーがそれなりの規模で設けられているとは思いませんでした。


フロアでおもしろかったのは、半地下にある児童書売り場。什器や壁でこまかく仕切られたスペースが集まったような複雑な空間になっていて、Waterstonesの児童書売り場とはまた違った意味で、迷路のような雰囲気の、楽しい売り場になっていましたよ。


イギリスの書店にはブックカバーはありませんが、レジの近くなどで、包装紙を売っていて、それでラッピングしてくれるシステムをとっているところもあるようです。Foylesでは、1階のレジ横に、客が自分で包装するスペースが設けられていました。スーパーによくあるようなシステムですね。


後述するWaterstonesのOxford Streetの店で、手書きPOPを見かけたので、他の店では店員のおすすめがどのようなかたちで表現されているか、興味津々だったんですが、日本でいうPOPはほとんど見かけませんでした。Foylesでは「STAFF PICKS」というリコメンドカードが使われていました。お店共通のフォーマットのカードにおすすめコメントが書かれたものですが、こちらは手書きではなく印刷されたものでした。数もそれほど多いわけではなく、日本のように描き文字やイラストなどが使われているわけではないので、見た目は地味でした。


このお店ではちょっとした掘り出しがありました。1階にロンドン関連本を集めたフェア台があったので見ていると、『BOOK LOVERS' LONDON』なる本が並んでいるではありませんか。もちろん早速購入。今回の本屋巡りで得た戦利品については、別記事でまとめて報告したいと思います。


たまたま現地で手にした新聞に、Foylesの旗艦店が移転新装オープン後1年で黒字に転じたことを報じる記事が載っていました。店内のにぎわいぶりを見ると、好調だというのもうなずける感じでした。


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↑こちらがその新聞記事。


同店を訪問される方は、ぜひ、たっぷりと時間をとって訪問されることをおすすめします。



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↑外観。


オクスフォードストリート沿いにある、2フロアの中規模店。ショッピングセンターの一部になっていて、1階の入り口は独立していますが、中で建物とつながっているらしく、2階の出入り口は、そのままショッピングセンターのフロアにつながっていました。


入り口を入るとすぐ左脇に、新刊やおすすめ本がずらりと並ぶ書棚がありました。見ると、本の中には棚板に小さなカードがついたものがあります。他の店ではあまり見かけなかったリコメンドカード(POP)でした。カードは店名の入った統一のフォーマットのものですが、中身は手書きです。後で、写真の許可を得るときに聞いたら、お店のスタッフが書いているものだとのこと。手書き文字の感じからして、複数のスタッフが手分けして書いているようです。


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↑入り口脇の新刊棚。POPは、書棚に添付されていて、ご覧の通り、イラストや色文字・飾り文字などデザイン的な要素はなくて、テキストのみ。


壁際には書棚が整然と並び、フロアの中央には、テーマ別に本を集めた台がいくつか並んでいます。台のテーマは、文学好きが喜びそうなフィクションを集めた「Cult Fictions」、短篇小説と中編(Novella)を集めた「Small Packages」(表示はうろ覚えです。容れ物は小さいが中身は云々みたいなことを書いた説明書きがたしか添えてありました)、先のカルト小説とは違った意味での変わった本を集めた「Not Ordinary...」(これも表示はうろ覚えです。ふつうでない世界にようこそみたいなことが書いてありました)など、スタッフが手をかけたり工夫したりしたのがわかるセレクトになっていました。このあたりの工夫は、日本の書店のそれとも通じるものがありますね。


別記事でレポートするDaunt Booksやアレフブックスのような中規模店にはコミックは置いていませんでしたが、ここには日本のマンガのコーナーが、数は少ないけどありました。(VIZメディアの名が入った日本の店頭では、厚紙絵本を差すのに使われる回転台のような什器に入っていました。)そういえば、ピカデリーのウォーターストーンズも、アメコミの棚は大変なボリュームでした。


2階には、語学書、児童書・YAのほか、歴史などの人文書、芸術書など。歴史は、「世界大戦」「英国史」など、下位区分が少なめであっさりしたジャンル表示のDaunt Booksに比べると、こまかくジャンル分けがされていました。野鳥を含む自然関係もこのフロアでした。


Daunt Booksでは気づかなかったんですが、「Small Packages」の台に並べられた本のなかに、ちょっと目を引く表紙の本が並んでいたので手にとってみたら、Daunt Booksが版元の本でした。日本にも紀伊國屋書店、丸善、東京堂書店など、出版部門を持つ書店がありますが、Daunt Booksもそうだということですね。


書影 Daunt Books

↑こちら。C. D. Rose『The Neva Star: a story』。本文30頁足らずの小冊子のような本です。


2階で目を引くのは、児童書コーナー。スペースがたっぷりとられていて、ディスプレイにも工夫がされています。ぼくが訪問したときは、店内には子どもの姿はそんなに多くはなかったんですが、とても楽しい雰囲気のコーナーになっていましたよ。


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↑2階の児童書コーナーの様子。写真が暗めなのでちょっと雰囲気が伝わりにくいかもしれませんが、実際は、写真の印象よりもずっと華やかな雰囲気でした。


あと、Waterstonesの支店は、トラファルガー・スクエアにもあります。そちらも訪ねてみましたが、漏水と電気トラブルで閉店中とありました。残念。


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そうそう、残念といえば。このほか、ぼくが学生時代にロンドンを訪れたときは、大型書店としてはディロンズ(Dillons Booksellers)もあったんですが、そちらはなくなってしまいました。1995年にHMVに買収され、さらに1998年にWaterstonesのグループに買収され、ブランドとしてなくなってしまったのは翌年1999年のことのようです。あと、チャリングクロスロードにあったブラックウェル(Blackwell's)も閉店になってしまったようです。


というわけで、ロンドン本屋巡りレポート、まずは大型書店編をお送りしました。レポートは、まだまだ続きます。


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コメント

詳細レポートに大興奮です。

いつも楽しく拝見しております。

ロンドンレポート、すごいです…!!
空犬さんのブログで、いつも、
行きたくても(すぐには)行けない本屋さんの情報を
うっとり眺めたり、想像したりしているのですが、
今回のはまた、すごいですね、

もう外観をみるだけで、ドキドキでした。
そして、海外のものなんか、特になかなか情報が得られない、
POPの情報や、ジャンル分け、フェアのことなんかまで…!!
いつか行ってみたい…という気持ちが強くなりました。

書店まわりは1日だったとのこと、
それなのに、これだけの分量のものをチェックしてくるなんて
考えただけですごいです…。
そしてこの連載がまだ続くなんて、夢のようです。
続き、本当に楽しみにしておりますね。

  • 2016/04/30(土) 00:41:34 |
  • URL |
  • れこ子 #eP1cGWnA
  • [ 編集 ]

しばらく続きます

れこ子さん>
訪問&コメント、ありがとうございます。

読んだ人に、行ってみたいなあと思って
もらえるのが、書き手としてはいちばん
うれしいです。

> 書店まわりは1日だったとのこと、
> それなのに、これだけの分量のものを
海外まで行っても、日本と同じことしてる!
と、読んであきれている人もいるのでは
ないかと(苦笑)。しかも、これが第一弾で
まだまだ続いたりするもので(苦笑)。

あと数回続く予定なので、よかったら
続きも読んでみてください。

  • 2016/04/30(土) 19:33:43 |
  • URL |
  • 空犬太郎 #-
  • [ 編集 ]

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