空犬通信

本・本屋好きが、買った本、読んだ本、気になる本・本屋さんを紹介するサイトです。

ロンドン書店回り その7……買ってきた本たちのこと

ロンドン書店回りレポート。買ってきた本の報告です。


学生のころにイギリスに旅行したときは、今と違って、オンライン書店で手軽に洋書を買えるような時代ではありませんでした(なにしろ、四半世紀前のことなので(苦笑)から、ここぞとばかり、貧乏学生には不相応なほどたくさん本の買い物をしたものです。あまりにたくさん買ったので、当然スーツケースには収まりきらず、あちらから船便で送る羽目になりました(苦笑。2、3か月ほどかかったうえ、やっと届いたら外箱がぼろぼろになっていて、びっくりした記憶があります)


当時(1980年代の終わりごろ)、都内には洋書屋さんがたくさんあって、リアル書店の洋書店という意味では今よりもずっと充実していたんですが、ただ、なんといってもやはり貧乏学生には洋書は高かった。それに、いくらリアル書店が充実しているとはいえ、日本では見かけない本、入手できない本もありましたしね。ですから、海外旅行の主目的のひとつが、現地で本を買うことというのは、おそらくそんなに特別なものではなかったろうと思うのです。


時代は変わり、今では、洋書は通販でずっと手軽に買えるようになり、レートも最新のものが適用されるため、値段もずいぶんこなれています。なので、現地で本を買うことの重要性は、相対的にはずいぶん薄れてしまいました。


ただ、そこは、ふだんからリアル本屋さんでの買い物を大事にしている身のことですから、やはり、すてきな本屋さんがあったらそこで本を買いたい。後で通販で買えるとわかっていても、その本との出会いを作ってくれたお店で買いたい。そういうものですよね。それでも海外旅行の場合は、荷物と移動の問題もありますから、日本でと同じ感覚で買いものをするわけにはいきません。


今回の旅では、広義の本関係にテーマを絞って、買いものをしてきました。全部ではありませんが、ロンドンでの書店回りに役立ちそうな本屋本などもありますので、うちいくつかをご紹介します。




書影 18 Bookshops

ドーント・ブックスのノンフィクション棚で見つけたもの。お店のレポート記事にも書いたことなんですが、ノンフィクション棚はサブジャンルの表示がまったくないか充分でないため、外国人には、このなかから自分に興味のある分野の本を探すのがけっこう大変です。自分でもよくぞ見つけたものだと思います。


本書は、書名の通り18のブックショップを取り上げた本。これがイギリスまたはロンドンの有名書店18店を紹介する本……であったらよかったんですが、本屋ガイドではなく、本屋さんをめぐる随想といった趣の本です。登場するお店には、アトランティス・ブックスなど、現存するイギリス/ロンドンの書店もありますが、ニューヨークのお店や、かつて存在したが今はないお店などにもふれられています。本屋をめぐる読み物としてはおもしろく読めますが(まだ全部は読んでいませんが)、本屋巡りのガイドとして使える本ではなさそうです。



書影 Quiet London

これも、ドーント・ブックスで買った本ですが、こちらはロンドン関連本の棚にありました。「美術館」「図書館」「小規模店」「書店」「カルチャーセンター」「ギャラリー」に章が分かれていて、うち「書店(Bookshops)」の章には新刊書店・古書店併せて17のお店が取り上げられています。「小規模店(Small shops)」の章にも店名にrare booksのある店が取り上げられていて、これも含めれば18店になりますが、そちらはアンティークがメインの店のようです。


Quiet Londonというシリーズ名にある通り、静かなたたずまいの小さめのお店がセレクトされているのでしょう。一般の旅行者向けガイドブックに載っているような大型店は掲載されていないようで(Foylesが出てきますが、チャリングクロスロードの本店ではなく、別の店です)、知らないところ、訪問したことのないところばかりでした。


1ページに1店または2店が紹介されていて、各店は写真プラス簡単な解説と、情報量はそれほど多くはないのですが(本自体、日本の文庫よりひとまわり大きいぐらいの判型で、128ページ)、地下鉄、電車の最寄り駅のほか、バスの路線番号などがアクセス情報が載っているので、ガイドとして役に立ちそう。車いすの方が入れるかどうか(wheelchair accessible)の情報が載っているのも目を引きます。


同名のシリーズとして、「Quiet corners」「Food and Drink」なども出ています。手頃な本ですが、次に紹介する1冊を入手できたら、本書はなくてもいいかもしれません。



書影 Booklover's London

Foyles1階のロンドン関連本を集めたフェア台で発見。まさにこういうのを探していたんだよ!と思わず声をあげそうになったほど、ロンドン書店巡りという今回の目的にぴったりの1冊。A5判オールカラーで、330ページ超と、情報量も充分過ぎるほどです。


「Introduction」にざっと目を通すだけで、ああ、イギリスにも、ロンドンにも、本屋さんのことを大事に思っている本好きがまだまだたくさんいるのだなあ、ということが伝わってきて、うれしくなります。


本書の冒頭には、ブルームズベリー(Bloomsbury)、チャリングクロスロード(Charing Cross Road)、メイフェア(Mayfair)の3つのエリアマップが挙げられています。これらが、書店が集まっているエリアということなんでしょう。続く本文は、新刊、古本・古書、オルタナティブブックアウトレット、図書館、ブックアートなどに章分けされていて、それぞれの章では、アルファベット順にお店が取り上げられています。ざっと見たところ、先の3つのエリアだけでなく、それ以外のエリアのお店も取り上げられているようです。ロンドンだけでこんなにあるのか!とびっくりさせられるぐらい、たくさんのショップやブックスポットが取り上げられていますよ。


ただ、そのぶん、一店一店の情報は控え目です。店名の下に住所・最寄り駅などの情報が添えられ、本文として簡単な解説がついていますが、写真は全店ではなく、お店によってあったりなかったりで、写真なしの店のほうが多い感じかな。重要なお店は見開きで取り上げられ、丸丸1ページが解説にあてられていたりもしますが、一方で、数行程度とか、ほとんど解説のない店もありますから、訪問優先度の判断の参考にもなりそうです。


これを事前に入手できていれば……と、本書を入手したその日の夜、宿で本書をぱらぱら流し読みしながら、そんなことを思わずにはいられませんでした。ただ、今回のぼくの旅のように、ロンドン書店回りにあてられる時間が一日程度だとしたら、一般の旅行ガイドにも載っている書店情報でも充分、というか時間が足りないぐらいですから、むしろ、このようなものがあったら、行きたくても行けない店がたくさんあるのが事前にわかってしまって、かえって悔しい思いをすることになっていたかもしれませんね。


その意味では、ロンドンのブックスポット巡りに充分な時間を割ける人向けの1冊と言えるかもしれませんが、紹介しているお店をどの程度カバーできるかはともかく、今後、ロンドンで書店を楽しもうという人は必携と言っていい一冊なので、できれば渡英前に、通販で事前に入手しておくといいでしょう。


ちなみに、本書、年度版というわけではなさそうですが、内容が更新されて何度か版があらためられているようです(本の奥付には版数表示はありませんが、版元のサイトの紹介ページには5th Editionとありました)。ぼくが入手したのは2015年の版です。したがって、昨年できたアレフ・ブックストアやリブレリアは載っていません。やはり最新情報をカバーするには、Webの情報などを活用して補う必要がありそうです。


書店関連本と呼べそうなのは以上です。「本の本」「本屋本」を探して気づいたのは、そもそも、そのようなジャンル自体の扱いがロンドンの本屋さんにおいてはそんなに多くはないようだ、ということです。このジャンルにそれなりの棚が割かれていたのは、ぼくが回ったなかではFoylesぐらいでしたが、そのFoylesでも、棚は独立していたわけではなく、「Literary Criticism」の中にまとめられていました。


Foylesは、日本で言えば紀伊國屋の新宿本店やジュンククラスのお店で、専門書やかための本にもしっかりと棚をとっていましたが、それでもその程度の扱い。他のお店で、本屋本をジャンルとして立てているところはなく、少なくとも短時間の探索では発見することができませんでした。


本屋本がそもそも少ないので、比較のしようがないこともありますが、たとえば、Foylesの棚に並んでいたものを見ると、本の本、本屋本の内容やタイプもけっこう違うことがわかります。日本だと、本屋本としては、さわや書店の田口さんの本が昨年出たばかりですし、リブロ/ジュンクの田口さんの本や『傷だらけの店長』のような本もあり、論創社「出版人に聞く」シリーズには書店人の巻がいくつもあります。このように日本のこのジャンルには現役または引退した書店人による本がいくつもありますが、イギリスでは、書店人の本というのは(ノンフィクションの棚やBiograrphyの中に埋もれてしまっている可能性はありますが)見当たりませんでした。


空犬通信では、洋書の本屋本として、以前にこんな本を紹介したことがあります。



著者のJen Campbellさんは、現役の古書店員。上掲本の続編を含む3冊の著書があり、1冊はそのものずばり『The Bookshop Book』で、Foylesにはこの『The Bookshop Book』がありましたし、『Weird Things...』が「Humor」の棚に並んでいる店もありましたが、どの店にも並んでいたというわけではなく、むしろ置いてあった店が少なかったので印象に残っているほどです。


ロンドンの本屋をあれだけ見て回り、しかも本屋本探索がメインの目的であった当方のような客の目につかなったのですから、そもそもないのか、あっても数・種類が少なく、ポピュラーでないのはたしかなんでしょうね。


本の本を続けます。



書影 Rare books

これは、あんなところからこんな値段で稀覯本が見つかっちゃってびっくり、という事例を集めて紹介した本のようです。1つ1つのエピソードが短めなのと、雑本読みの素人には無縁なウルトラ稀覯本(の話もなかにはあるようですが)ばかりではなく、ケルアック、ボルヘスや、『ターザン』『風と共に去りぬ』『フランケンシュタイン』など、なじみのある作家名・書名が目次に見えたので、手にしたものです。


目次を見ながら、気になるところを拾い読みしているところですが、古書エッセイとして、おもしろく読めています。



書影 Mobile Library

「移動図書館」という書名の本が、平台に並んでいて、しかも、「HALF PRICE」タグがついていたら、手にとらないわけにはいきませんよね。


ノンフィクションではなく小説です。移動図書館に集まる人たちのふれあいを描いたハートウォーミングな物語……などではぜんぜんなく、児童虐待、貧困、障害、誘拐、疑似家族と、けっこうハードでシビアな話でした……。


おもしろいのは、日本の移動図書館車との違い。ぼくが小学生のころに利用したことのある移動図書館車は、マイクロバスぐらいのサイズだったような記憶があるんですが(当時、自分が小さかったことを考えても、街中を走る路線バスよりずっと小さいものに見えていました)、本書に登場する移動図書館車は、かなり大きいトレーラーのような車らしく、中にトイレや炊事施設まで備え付けられているという描写があります。


小説の舞台はイギリスで、本書に出てくる移動図書館車がイギリスの一般的なものなのかどうかはよくわかりませんが、同じ移動図書館システムでも、国が変わればずいぶん事情も変わるものだなあと、読んでいて、そんなことも思わされました。


本書は「BUY ONE / GET ONE /HALF PRICE!」対象の本(2冊買うと、2冊のうちどちらか、通常は高い値段のほうが半額に)だったので、もう1冊は、同じく平積みになっていた本のなかから、こちらを選んできました。本の本、本屋本ではありませんが、紹介しておきます。



書影 H is for Hawk

ニューヨークタイムズの年間ベスト10冊(The 10 Best Books of 2015)にも選ばれていた、ネイチャーライティングの秀作。このタイトル、この装画ですから、野鳥好きとしては、もう1冊にこれを選ばないわけにはいきませんね。本書に出てくるhawkはオオタカ(goshawk)のようです。表紙に描かれているのもそうでしょう。旅行中は『Mobile Library』を先に読んでいたので、こちらはまだ冒頭の数ページですが、とても楽しみです。



このほかにも、シャーロック・ホームズ関連本とか、野鳥関連本とか、いろいろ買ってきたものはあるのですが、この調子で紹介していると長大な記事になりそうですし、おそらく空犬通信の読者の方の期待も本の本関連情報のほうにあるのだろうと思いますので、買い物報告はこのあたりで。


書影 野鳥本1書影 野鳥本2

↑野鳥本、書影だけでも。


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