空犬通信

本・本屋好きが、買った本、読んだ本、気になる本・本屋さんを紹介するサイトです。

SF読みなのに、ぜんぜん読めていない年間ベストについて……

毎年、年度版が出るのを楽しみにしています。



書影 SFが読みたい 2016版

海外篇の1位はもちろんこれだろうなあ。個人的にも、昨年、もっとも強く印象に残った1冊です。



2015年のベストSFランキング、国内篇・海外篇の上位各10位は、版元のサイトで公開されています。こちら


ところで。毎年この季節は同じようなことをしている気がするんですが、このところ毎晩の読書タイムはこの『SFが読みたい!』に取り上げられている本のうち、読んでいなかった本を(ランクイン本だけでもけっこうたくさんあるので)片端から読むのにあてています。


そのジャンルが好きだと公言している読み手ならば、そのジャンルの本をそれなりにたくさん読んでいてしかるべきで、自分の読んだたくさんの本のなかには、ランク入りしたものもあれば、そうでないものあり、その一致や不一致をみながら、ああでもないこうでもないと盛り上がる、そして、ランクインした本のうち、読み漏らしていたものを拾って読む、それが本来のファン読者の姿でしょう。



ところが、ぼくの場合、読むほうがぜんぜん追いついていなくて、SF好きを名乗りながら、年間ベスト10に入っているのものでさえ、ぜんぜんカバーできていなかったりするていたらく。だから、ここ数年は毎年、この『SFが読みたい!』が出てから、そのランキングを参考に、ランクインしたの「だけ」を読むことになっているわけです。うー、こうしてまとめてみると、我ながら、大変にやれやれだなあ……。


今年はひどくて、国内篇の作品はベスト1含めて、ぜんぜん読めていなかったものですから(昨年のうちに読み終えていたのは『エクソダス症候群』だけ。とほほすぎる)、このランキングを見ながら、今さらという感じで、順に読んでいるというわけです。


海外のほうは少しましで、1位は発売前から楽しみにしていて、発売後にすぐに手にとって読んでいましたし、表題作を含む数作は、何度も読み返したりまでしました。(余談ですが、10年に1作のレベルの傑作でしょう。出会ったときの衝撃でいえば、テッド・チャンやイーガンのレベルだと思います。こんなふうに言っても言いすぎではないし、同意してくれるSF読みはたくさんいることでしょう。)数えたら、上位10点中、8点が購入、4点が読了でした。


それにしても、ランク上位、ケン・リュウ、バチガルピ、イーガンはいいとして、大御所作家たちの占める割合の高さはいったいどういうことでしょうね。ウルフにレムにディレイニーにオールディスだからなあ。作品名を伏せられたら、2016年のランキングだなんて思えませんよね(笑)


復刊や新訳で過去の名作や定番をが読めるのも、長らく翻訳がされてこなかったものを読めるのも、すばらしいことだし、海外文学読み・SFファンとしてはうれしいことには違いないんですが、ランキングの半分を旧作(的な立ち位置の作家の作品)が占めるのは、ジャンルの発展や未来という意味ではどうなのかなあ、という気がしないでもありません。


ちなみに、『SFが読みたい!』ランクイン未読作品読破計画は順調に進んでいて、『SFが読みたい!』購入以降だけで、これらを読了しています。


  • ラヴィ・ティドハー『完璧な夏の日』(創元SF文庫)
  • ブライアン・オールディス『寄港地のない船』(竹書房文庫)
  • 高山羽根子『うどん キツネつきの』(創元日本SF叢書)
  • オキシタケヒコ『波の手紙が響くとき』(ハヤカワSFシリーズJコレクション)

書影 完璧な夏の

↑ディドハーの上下本は、表紙画を合わせるとこんなふうになります。


次にこれらが控えています。


  • 円城塔『エピローグ』(早川書房)
  • 円城塔『シャッフル航法』(河出書房新社)
  • 牧野修『月世界小説』(ハヤカワ文庫JA)
  • 谷甲州『コロンビア・ゼロ 新・航空宇宙軍史』(早川書房)
  • パオロ・バチガルピ『神の水』(新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

……うー、いっぱいあるなあ。読むのは愉しいし、どれも楽しみではあるんだけど、大変だなあ(苦笑)


ところで、SFと言えば、こんなものすごい本を買ってしまいました。



書影 SF大クロニクル

これまでにも、SFの大鑑・集大成・クロニクル的な出版物はいくつか出ていますよね。大判ではないけれど、ハヤカワ文庫の『SFハンドブック』も同じたぐいの本ですし、上掲書の訳者、北島明弘さんの大著『世界SF映画全史』なども含めてもいいでしょう。


過去に出たその手の本はだいたい持っていたりしますし、即買いするには値段が値段なのでけっこう迷いました。でも、こういうレファレンス的な本は、これからは紙の書籍の形では出しにくくなるのだろうなあ、もしかしたら最後かもなあ、などと思いながら、結局買ってしまいました。ぼくのようなSF者が買うのを渋っていたら、それこそ、このような本は今後、書籍市場に出てこなくなってしまうかもなどと思ったからです。別に使命感にかられたわけではないですが、キャシャーン(本書には日本のSFアニメも取り上げられていますが、キャシャーンは単独項目としては立っていませんね、って余談も余談ですが)にならえば、私が買わねば誰が買う、ってところでしょうか(←違うと思う)


で、肝心の本はというと、B5判570頁超のボリュームで、税込み5940円也。ずっしりと持ち重りします。


版元のサイトによれば、《スター・ウォーズ ブレードランナー アべンジャーズ バットマン エイリアン 猿の惑星・・・ 壮大かつ緻密な作品世界の全貌! 250以上の名作と1700以上の項目で SF史をビジュアルに紹介》という1冊。この紹介文通りの内容なんですが、編者も主要執筆陣もイギリス人ということで、日本人的な感覚では、どうしてこれが入ってるの?とどうしてあれが入ってないの?が出てくるのはある意味当然ということで、そういうあれがないこれがない的な突っ込みは控え、そのセレクトや評価の感覚の違いも含めて、丸ごと楽しむのが良さそうです。


ざっと見たところ、文字情報も図版もたっぷりで、買ってしばらくは、うれしくて、毎晩のようにぱらぱら眺めて楽しんでいました。こまかく読み込んでいるわけではないので、情報の精度や適否まではわかりませんが、とにかくぱらぱら見ているだけでもSF好きなら楽しいことは間違いありません。中身はいいんですが、残念なのが装丁。文字だらけでSF感に欠けるこの装丁は、SF本っぽくなくて、個人的にはちょっと残念。ここはやはりSFアートでくるんで欲しいところですよね。


書評などには取り上げられにくい本かもしれませんが、こんな紹介記事が目につきました。「えっ、電子書籍版ないの!? KADOKAWAが576ページ・厚さ5cmの紙の本『SF大クロニクル』を発売」(2/2 ネタとぴ)。紙の本で出ていること自体に驚かれています(笑)


SF話のついでに、最近読んだSF本の紹介も。



書影 ロックイン書影 レッドスーツ

長いけど版元の内容紹介を引きます。《意識はあるのに体をまるで動かせない「ロックイン」状態を引き起こすパンデミックが発生した後の世界。ヘイデンと呼ばれる患者たちは、アメリカ国内で400万人以上にのぼる。だが疫病の最初の発生から20数年後の現在、ヘイデンは脳にニューラルネットワークを埋め込み、ロボティクス技術と専用オンライン空間の利用で通常の生活を送れるようになっている。そのひとりシェインは、ロボット「スリープ」を操る新人FBI捜査官。先輩捜査官とともに、ヘイデンがかかわる殺人事件の捜査にあたるのだが……。アメリカSF界屈指の人気作家スコルジーが贈る、近未来SFサスペンス》。


スコルジーは昨年読んだ『レッドスーツ』もおもしろかったし(往年のSFドラマ・映画のパロディで、おばかSFに近いテイストのユーモアSFかと思いきや、最後にほろりとさせられる)、今回のもおもしろかったなあ。あとがきによれば、複数の作品の映像化が決まっているようですが、それもうなずける感じの、絵や映像が目に浮かぶような作品です。


新☆ハヤカワ・SF・シリーズ、第3期が始まりましたが、版元によれば《グレッグ・イーガン(『クロックワーク・ロケット』の続篇)、ジーン・ウルフ、アダム・ロバーツの作品などを予定》とありますね。4月刊は『紙の動物園』のケン・リュウの初長篇『The Grace of Kings』とのこと。これは楽しみだなあ。こんなに新作、翻訳が待ち遠しい作家も久しぶりです。


最近読んだコミックのなかからはこれを。



書影 鈴木式書影 いないときに

『鈴木式……』、なんのことやらよくわからないけれど妙に気になる書名と、「昭和的不思議的美少女的SF」という惹句(版元のサイトでは《昭和の美少女と異形の生物たちが織りなす不思議なSF漫画の数々》とも)と変な生き物が出てくるというのに引かれて手にしたものです。へんてこな世界観で、SF慣れしてない人には、何がどうなっているのかよくわからないところがあるかもしれないんですが、なんとも不思議なおもしろさがあります。ちょっとなつかしい感じの絵柄と美少女+SFの組合せということで、吾妻ひでおのSF作品が好きな人にはいいかもしれません。ただ、出てくる女の子たちがやたらに裸になるので、そのあたりは好みが分かれそう(ちょっとHなところも、吾妻作品と同じですね)


『鈴木式…』がおもしろかったので、先に出ていた『いないときに来る列車』も手にしてみました。同じような世界観のへんてこSFで、こちらも不思議におもしろいんですが、『鈴木式…』同様、女の子がやたらに裸になるところに眉をひそめる向きもあるかも。(内容的にはいたって穏やかなもので、性的なところはないんですが……。)


あと、本から離れますが、映画『オデッセイ』は実におもしろかったなあ。って、これについて書き出すと、ついで扱いでは済まないので、ふれるだけにしておきますが、宇宙映画、SF映画が好きな人は必見かと思いますよ。(映画『オデッセイ』、文句なくおもしろかったけど、でも、個人的には、2014年の『SFが読みたい!』海外篇のベスト1にも選ばれた、アンディ・ウィアーによる原作『火星の人』のほうが、よりおもしろいと思います。)
書影 火星の人

↑映画スチールの表紙に変わる前の装丁のほうが好きです。



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コメント

火星の人

空犬さん、こんにちは
いつも楽しく読ませて頂いています。

今日の朝日新聞の「天声人語」が「火星の人」から話がはじまり、
「オデッセイ」のことなどが書かれていました。
ふと空犬さんのブログを思い出し、ここに来た次第です。


SFは数えるほどしか読んでいないので、空犬さんの詳しくかかれた紹介本が参考になります。
「火星の人」も読んでみたいとおもっています。

  • 2016/03/06(日) 21:30:47 |
  • URL |
  • chat blanc #-
  • [ 編集 ]

Re: 火星の人

chat blancさん>
いつもありがとうございます。

「火星の人/オデッセイ」の話題で当方のブログを
思い出してもらえるなんて、うれしいですねえ(笑)。

> SFは数えるほどしか読んでいないので
という方に本文でふれた本がどれだけ訴えうるものか
よくわかりませんが、少なくとも、ケン・リュウ『紙の動物園』
は、SF読みでない方にもぜひ読んでみてほしいなあ
などと思います。

  • 2016/03/07(月) 20:51:09 |
  • URL |
  • 空犬太郎 #-
  • [ 編集 ]

SFの本

中、高校生の頃に眉村卓さんや星新一さんなどを好んで読んでいる
時期もありましたが、そのころに比べると数えるほどになってしまいました。
空犬さんの好きなSF本への思いを読ませていただいて、驚いてしまいました。
専門書片手にという感じなので。
ケン リュウさんの「紙の動物園」は不思議な世界に楽しみました。
いろいろな書評に出ていて有名ですよね。
ずいぶん前の作品ですが、ハインラインの「夏への扉」はとても好きです。やはり猫びいきでしょうか(?)

  • 2016/03/07(月) 22:57:31 |
  • URL |
  • chat blanc #-
  • [ 編集 ]

SF

chat blancさん>

眉村卓さんや星新一さんを読んでいたのなら、もう
立派なSF者ですよ(笑)。

> 専門書片手に
かための本もたしかに読むんですが、でも、
自分の読書全体に占める割合でいうと、
SF他のエンタメ本がけっこう多いんですよ。

だいたい、特撮好きを公言していて、特撮
関連本をじゃんじゃん読んでいるぐらいですから(笑)。
とてもじゃないけど、かたい本ばかり読んでます
なんて言えない読書生活を送っています。

「紙の動物園」、もう読まれているとのこと、
あれはいいですね。これを楽しめるのであれば、
今のSFで好きになれるものはほかにもいろいろ
あると思います。気になるものがあったら
ぜひトライしてみてくださいね。

  • 2016/03/08(火) 22:28:24 |
  • URL |
  • 空犬太郎 #-
  • [ 編集 ]

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