空犬通信

本・本屋好きが、買った本、読んだ本、気になる本・本屋さんを紹介するサイトです。

ボウイのこと

2016年1月10日、デヴィッド・ボウイが亡くなった。


享年69歳。誕生日を迎えたばかりだったという。その誕生日(1/8)に発売されたのが、最後のアルバム『★(ブラックスター)』。


ジャケ ★

ボウイについては、いろいろ書きたい気持ちがないわけではない。でも、たくさんの人がたくさんのことを語っているから、いまさらという感じがどうしてもしてしまう。でも、個人的な思い出について、ちょっとだけ書いておきたい。(以下、ほんとに個人的なことです。)



ぼくが最初にボウイの音楽に(それと意識するかたちで)出会ったのは、1983年のこと。新作として発表された『レッツ・ダンス』が、当時中学生だったぼくが出会った最初のアルバムだった。


このアルバム、今聴くと悪くない、というか、けっこう好きだったりする。でも。当時のぼくは、それまで大好きだった歌謡曲を「卒業」、洋楽に目覚めて少したったころで、同時代だけでなく、世代的に前の時代の音楽を「発掘」するなどし始めていた。骨のあるロックにそれなりに出会ったりもしていたし、何よりギター少年だったものだから、このアルバムで聴けるような、80年代的な雰囲気にどっぷり浸かった感のあるダンサブルな音楽は、なんというか、とても軟弱なものに聞こえてしまったのだった。


ボウイがある種のカリスマであることは、音楽雑誌を隅から隅まで読みまくっていた(当時から何事も活字から入るタイプだった)音楽少年にはもちろんわかっていたが、少なくともこのアルバムではそのすごさは実感できなかった。


同じ年。ぼくが自室で勉強していたら、外から、何やら、はっきりと聞き取れはしないものの、でも、あきらかにロックなビートが聞こえてきた。大阪万博記念競技場で行われていた(ぼくの自宅は、万博記念公園が見える高台にあった。)ボウイのライヴの音だった(ライヴが行われることはポスターなどの案内で知っていた)。いま調べてみたら「Serious Moonlight Tour」で来日したときのことで、1983年10月30日の公演だったようだ。


そんなに好きではなかった。でも、気にはなっていた。だから、その、風に乗って流れてきた、もごもごはしているものの、カラオケスナックから漏れ聞こえてくるような音とは明らかに違った、意外にもロックなその音を、空気が揺れているような存在感のあり過ぎるその音を聴きながら、ああ、いま、デヴィッド・ボウイが、この街に来ているんだなあ、こんなに近くでライヴをしているんだなあ、そんなことを思ったのだった。そして、ライヴ、生で見てみたかったなあと、大阪の中学生(時期的にいって、受験勉強をしていたんだろうと思う)は、大してファンでもなかったくせに、そんなことも思ったのだった。


後に、ボウイのグラム時代を「発見」して、ボウイの音楽に入れ込むようになった。こんなにかっこよかったんだ!と思ったのだ。グラムのボウイに出会ってからは、このときのライヴを逃したことが、なおのこと悔やしく感じられるようになったのだった。


ボウイのことを考えるとき、今でも、風に流れて受験勉強中の中学生にまで届いた、あのときの万博でのライヴのことを思い出す。



映画にまつわる思い出も少し。死が報じられて以降の記事やSNSでの反応を見ると、ボウイの映画というとやはり『戦場のメリークリスマス』に言及している人が多いようだった。ぼくも好きだけど、でも、ボウイの映画出演作なら、タイトルそのままの異星人を演じた『地球に落ちてきた男』、(すごく好きかというとそういうわけではないのだが)ジム・ヘンソンのマペットたちに囲まれて魔王を嬉々として演じている(ように見える)『ラビリンス 魔王の迷宮』、吸血鬼ではなくその恋人を演じた『ハンガー』、などの作品が、そのB級感も含めて印象深いし、ボウイっぽい気がする。


出演作以外ではないが、ボウイの音楽が印象的に使われた映画2作にもふれておきたい。1つは、ウェス・アンダーソン監督作品の『ライフ・アクアティック』。出演者の一人、セウ・ジョルジが作中で、ボウイの曲をギター1本で弾き語りしている。これがなかなかいい味を出していて、すばらしいのだ。周囲の評判もよかったそうで、カバーアルバムまでつくられている。グラム時代のボウイの曲を、アコギ1本の弾き語り、しかもポルトガル語の歌詞で聴かせるというもの。こうして文章にすると、奇天烈な企画にしか思えないかもしれないが、これがなんというか、はまっていて、実にいいのだった。


もう1つはベン・スティラー監督作品の『LIFE!』。ベン・スティラー演じる主人公が憧れる女性(演じるはクリステン・ウィグ)がアコギを抱えて「スペース・オデティ」を歌う場面がある。これがとてもいい。ボウイ好きには、このシーンだけでも観てほしいぐらいだ。サントラを買ったら、「Space Oddity (Mitty Mix) [feat. Kristen Wiig]」となっていて、ちゃんと、劇中のバージョン(ボウイの曲に歌を重ねたものだけど)になっていて、ちょっとうれしかった。


ジャケ グラム時代6枚

↑後に発見して、大好きになったグラム時代のボウイの諸作。この初期6枚は、ほんとに好きで、どの盤も繰り返し聴いた。いちばん好きなアルバム、は選べないけど、聴いた回数でいくと、『ジギー・スターダスト』かなあ。


ジャケ レッツダンス

↑出会いの1枚、『レッツ・ダンス』。後で買い直したものだけど、これだけは日本盤のアナログだ。本文に書いた通り、なんだかなあ、と最初こそ思ったのだけれど、このアルバムでぼくはナイル・ロジャースに出会い、スティーヴィー・レイ・ヴォーンに出会っているのだった。後に、ファンクやブルースなどのブラックミュージックに傾倒することになるギター好きとしては、1枚でこの二人のプレイに出会えたわけだから、幸せな出会いだったと言っていいのかもしれない、などと後に思うようになった。


ジャケ ピクチャーボウイ

↑アナログ好きには、これらをチェックしている人もいるだろう。発売40周年記念7インチ・ピクチャー・ディスク・シリーズ。廉価版CDが2枚買えるぐらいの値段で2曲しか聴けないんだけど、でも、これはこれでやはり持っておきたくなるのだった。


ジャケ ネクストデー

↑アナログのシングル盤といえば、こんな珍盤も。前作『THE NEXT DAY』からのシングルカット「THE NEXT DAY」。盤自体が円形ではなく正方形の、変形レコード。文字はビニールに印刷されているだけで、盤自体は両面ともまっ白。


ジャケ セウジョルジュ

↑セウ・ジョルジ『Life Aquatic Studio Sessions』。ボウイが好きな人にはぜひ聴いてほしい1枚。


ジャケ LIFEサントラ

↑『LIFE! オリジナル・サウンドトラック』。写真は輸入盤で、国内盤はジャケが違う。なお、本作のサントラは、スコア盤も出ているので、お間違えのありませんよう(そちらには、「Space Oddity」他、作中で使われている楽曲は収録されていない)


ほんとはタイトルを「ボウイのこと(そして、ほんのちょっとだけグレン・フライのこと)」として、イーグルスのグレン・フライについてもふれたかったのだけど、ボウイだけで長くなってしまったから、グレン・フライについてはまたの機会にします。


スポンサーサイト

コメント

デヴィッド ボウイ

私がはじめてデヴィッド ボウイを知ったのは、伯母が好きで、遊びに行った時にプロモーションヴィデオ(多分「レッツダンス」だと思います)
を見ていて、嬉しそうにいろいろ話してくれたのが始まりです。確か、エルトン ジョンも好きですし、イギリス系が好きなのでしょうか。ビデオを見ている時に、祖母が「この人、かっこいいわよねー!」といっていたのを覚えています。なかなか粋な人です。その祖母も亡くなって13年ぐらいたちます。みなさんそれぞれに感慨深い思い出があるものですね。ゆっくりと読ませていただきました。

  • 2016/01/30(土) 17:50:56 |
  • URL |
  • chat blanc #-
  • [ 編集 ]

デヴィッド・ボウイ

chat blanc さん>

いつもありがとうございます。

最初の出会いが同じ曲ですね。
当時は、MTV全盛時代で、洋楽のヒット曲は
たいてい、ビデオクリップも込みで印象に
残っていたりします。

音楽も本もそうだろうと思いますが、
いつ、どこで、誰と、などの、
思い出があると、単に聴いたり読んだり
しただけの場合よりも、強く記憶や印象に
残ることがありますよね。

  • 2016/01/30(土) 20:06:44 |
  • URL |
  • 空犬太郎 #-
  • [ 編集 ]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://sorainutsushin.blog60.fc2.com/tb.php/2560-47914a1d
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)