空犬通信

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『本屋会議』も登場します……小橋めぐみさんの『恋読』に感激

読書日記が好きです。


本や本屋さんが登場しないふつうの日記も読み物としては好きなんですが、読書日記はさらにいい。読書日記のいいところは、書き手の生活や思いに関する記述と本に関する記述が混ざりあっているため、その人の生活のなかに本がどんなふうに溶け込んでいるかが、その人にとって本がどのような存在であるかが、とてもよく伝わってくるからです。登場する本が、自分が好きな作家・作品・ジャンルのものでなくてもかまわない。むしろ、そのほうが読み物としては楽しいかもしれないぐらいです。


さて、そんな読書日記好きが、最近、読書日記形式で綴られた、こんな本を読みましたよ。



恋読 書影

この記事で紹介したとおり、書き手の小橋めぐみさんは、以前に、インターネットの本紹介番組で『本屋会議』について好意的にふれてくださったことがありました。そのときのことはもちろん強く印象に残っていましたから、ツイッターでお名前を見かけたときはすぐに気がつきました。しかも、新刊を出されたとある。これは手にとらないわけにはいきませんよね。



先に読まれた方のツイッターによれば、この本でも『本屋会議』が紹介されているとのこと。番組で紹介してくださったときのことが書いてあるのかなあ、などと思いつつ、どんなふうにふれられているかを楽しみにしながら、読み始めました。


読んでみると、これが、やさしい文章で綴られた、まさに当方好みの読書日記スタイル。まずはぱらぱら流し読みして、『本屋会議』がどこに出てくるかを探してみようかな、などと思っていましたが、読み始めるとおもしろくて止まりません。結局、『本屋会議』云々はすっかり忘れて、楽しく読み進めていたところ、終盤、200ページを過ぎたあたりで、『本屋会議』関連の記述が出てきました。


『本屋会議』が出てくるのは、たしかに、番組でご紹介くださったときのことにふれたくだりでした。ところが、本が紹介されているとか、本にふれられているとか、それどころの話ではありません。なんと、当方の名前まで出ているではないですか。仰天しました。まさか?!と思い、何度も見返してしまいましたよ。空目ではなく、たしかに印刷されていました(笑)。


『本屋会議』を取り上げてくださった方はこれまでにも何人もいらっしゃいましたが、本そのものだけでなく、書き手の素人ブログにまで手を広げ、その内容をチェックし、それに言及する、なんてことまでされた方はこれまでにはいませんでしたし、ふつうに考えて、今後もまずいないでしょう。


冒頭に書いた通り、読書日記を読むのは大好きで、出てくる本や本屋さんをチェックするのは、「読書日記」読書の楽しみの1つです。自分が好きな本が登場したらそれだけでうれしい。自分が編集を担当したり仕事で関わったりした本ならなおうれしい。(共著なので単純に「自分の本」とは言い切れないけれど)自分が執筆に関わった本なら、もっとうれしいわけです。プロの書き手の読書日記に、自分が書き手として関わった本が自分の名前とともに、こんなふうに登場しているのを、目にする日がまさかくるとは……(泣)。


……すみません、あまりにも意想外かつ感激の出来事だったので、『本屋会議』と当方の名前が出てくる話ばかりになってしまいました。あらためて、小橋さんの本を紹介します。


版元の内容紹介によれば、このような本です。《本を愛する女優、小橋めぐみによる初の読書エッセイ集。海外ミステリからキャラクター小説まで、読書家の著者がときめく本との出逢い、日々の出来事などを綴った約三年分の読書日記を一冊にまとめました》。


どんな本を読まれているかも引きたいし、何より、文章がいいので、引用して紹介したいくだりはたくさんあるのですが、それはこれから読まれる方の楽しみにとっておくとして、ぼくは、思わずうんうんとうなずいてしまった、この一文を紹介したいと思います。小橋さんが撮影で地方に行く前日の記述です。


《空き時間が沢山ありそうだったので、持っていく本を真剣に選ぶ》。


このような1行を見ると、ああ、こっち側の人なんだなあ、というということがよくわかります。こっち側の人、というのは、なんというか、本との接し方、本との距離感で人をグループに分けることがあるとしたら、同じ側、同じグループに属するであろう人、ぐらいの意です。


好きな作家や作品、好みのジャンルなどが違ってもいい。そういう具体的な好みのありようのことではなく、もっと大きな、本そのものとの距離感が同じなんだなあ、と、そんなふうに思えるわけです。こっち側の人となら、好みが違おうがなんだろうが、世代年齢性別職業、何がどう違おうとも、楽しく本の話を共有できるような気がするのです(勝手にこちらが思っているだけで、先方がそうかどうかは別問題なんですが;苦笑)。


旅先で《空き時間が沢山ありそうだったので》となったら、後半には続く文章は、いろいろなものが考えられますよね。グルメなら当地の有名な飲食店をチェックしよう、おみやげをチェックしようかもしれないし、旅好きなら名所旧跡に行きたいなあ、かもしれない。その人の趣味や時間の使い方の好みで、いろいろな表現が続きうる。でも、《持っていく本を真剣に選ぶ》というのは、こっち側の人でないと出てこない発想だと思うのです。その人にとって、本がどれだけ大事なものであるかも、本が単なるひまつぶしでないことも、とにかく、いろいろなことがこの短い文章から伝わってきます。


この一文を紹介するだけで、空犬通信を訪問くださるような方であれば、興味を引かれること必至だろうと思います。広く本好きにおすすめしたい1冊です。


ぼくの拙い紹介文だけではなんですから、書き手と本のことをもう少し知りたい、という方はこの記事をどうぞ。「『恋読』 小橋めぐみさん」(11/24 読売新聞)。


《かばんにはいつも本が入れてある。移動中でも撮影の合間でも、時間があれば手を伸ばし、1年間で読む本は100冊にもなるという》。


《本書は、この3年弱で読んだ数百冊のうち、97冊について日記風につづった読書エッセーだ。声を上げて泣いた小説も、胸を熱くしたノンフィクションも、くじけそうな時にいつも開くエッセーも魅力的に紹介していくが、本の世界と自分の日常とが溶け合い、豊かに響き合う様を丁寧につづった文章そのものも味わい深い》。


ちなみに、また『本屋会議》の話にちょっと戻ってしまうのですが(苦笑)、小橋さんは大変な本読みで、《書評など、本についての本は読んできたけれど、「本屋さん」の視点で書かれた本を読むのは初めて》だったそうです。《本屋さんの生の声を聞きながら、本屋さんの大切さを改めて知った》。武蔵野の小さな出版社から出た、名も無い書き手による本が、このような方に届いたことは、大げさな言い方を許してもらうとすれば、奇跡といっていいことではないかと思います。その意味では、この本を、最初に番組で紹介してくれた青山ブックセンターの山下さんにもあらためてお礼を言いたいと思います。そして、ご自身の初めての著書という大事な本のなかに、無名の書き手の素人ブログのことまで含めて『本屋会議』のことをそっとすべりこませてくださった小橋めぐみさんには、もうただただ、感謝の念しかありません。



追記:上に引いた《空き時間が沢山ありそうだったので、持っていく本を真剣に選ぶ》のくだりの続きを読むと、小橋さんは朝井まかてさんの『先生のお庭番』を選んでいました。この本、ぼくも往来堂書店のD坂文庫にセレクトしたことがあるんですよ。そのときの紹介コメントはこんな感じでした。


「時代小説が苦手な小説読みが一気読み」
《「何十世紀も未来の、何万光年も離れた星での、ヒトが一切出てこない話でさえ何の違和感もなく読めるのに(←SF好き)、ほんの数百年、時代がさかのぼるだけで、同じこの日本での話が頭に入ってこなくなるのは何故だろう……時代小説がずっと苦手だった。そんな時代もの嫌いがいま夢中になっているのが朝井まかて作品。闊達な文章、魅力的な人物、活き活きとした語り口(方言)。どれもこれも滅法おもしろい。草木の名前なぞ1つも知らない無粋な野暮天が、薬草園を作る庭師の話を何故こんなにおもしろく読めるのか、我ながら不思議》。


小橋さんは本のなかで大の時代劇好きであることを明かしていますが、ぼくは上の紹介コメントにも書いているように、どちらかというと苦手で、時代もの作家で読んでいるのは朝井まかてさんほかわずか数人です。そんな、時代ものへの距離感でいうと両極端といっていい二人が同じ本を選んでいるのだから、不思議なものですよねえ。しかも、それが『本屋会議』に関する記述の直後に出てくるというのが、偶然にしてはできすぎなようで、名前の件につづいて、再びびっくりさせられることになりました。すみません、余談です。


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コメント

恋読

空犬さんの嬉しさが溢れていますね。本のお仕事をなさっている方の素直な気持ちが伝わってとてもいいですね。是非、私も読んでみたいです。

  • 2015/11/30(月) 01:20:55 |
  • URL |
  • chat blanc #-
  • [ 編集 ]

Re: 恋読

chat blancさん>
いつもありがとうございます。

うれしかったので、ついつい、『本屋会議』のことばっかり
書いてしまいましたが、読書エッセイ、読書日記として
楽しめる1冊なので、よかったらぜひ手にとってみてください。

  • 2015/11/30(月) 22:25:29 |
  • URL |
  • 空犬太郎 #-
  • [ 編集 ]

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