空犬通信

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「出版業界本 わたしが奨めるこの1冊」……「新文化」の特集にコメントを寄せました

「新文化」8月27日号に、夏の企画として「出版業界本 わたしが奨めるこの1冊」という特集が掲載されています。


こんな内容の特集です。《流通問題、経営戦略、出版・書店論、社史、人物評伝、書評集-出版業界に関する書籍はこれまでに数多く刊行されている。そのなかには、「あのとき読んだ1冊がヒントになった」「あの本を読んで考え方や見方が変わった」などという1冊があるのではないだろうか。
そうした出版関連書のなかから、「出版界で働く人にはぜひ一度読んでもらいたい」というオススメの1冊を、出版社、書店、取次関係者をはじめとする20人の選者の皆さんに選んでいただいた》。


新文化150827

当方にも声をかけてもらったので、参加させてもらいました。ぼくに声がかかるぐらいだから、他のみなさんの顔ぶれも、知り合いの書店員さんとかがたくさんいるんだろうなあ、ぐらいの軽いつもりでお受けしたんですが、今日、掲載紙を見てびっくりしました。最初が紀伊國屋書店の高井社長、次がトーハンの藤井社長で、社長会長店長と、「長」のついてる方々ばっかりじゃないですか! 最後の段に、田口さん、久禮さん、辻山さん、石橋さんと、やっとこちらもほっとできるお名前が出てくるものの、それでも、当方の「お前だれ?」感の突出ぶりといったらもう(苦笑)。青くなったり、赤くなったり、大変です……。


まあ、でも、もう載ってしまったのだから、しかたありませんね。何をどう取り上げたのかだけご紹介しておきます。お題は、広義の業界本ということで、本屋紹介本でも、書店人が書いた本でも、ジャーナリズム全般に関する本でも、営業のノウハウについて書かれた本でも、著作権に関する本でも、とにかくなんでもかまわないと編集部からは言われていました。業界本、とくに書店関連本はこれまで相当熱心に読んできましたから、対象が多すぎて、選ぶのが大変です。新旧も問わないということで、制約らしきものは、「できれば現在新刊で入手できるもの」、それだけでした。


で、そんな困難な条件下で、ぼくがピックアップした本はこちらです。



マンガ家入門正続 書影

↑右から、正編の本体、正編の外函、続編の外函。


当方の立場からすると、本屋本をあげることを期待されていたんでしょうし、そんなことはもちろん充分にわかっていたんですが、あえてぜんぜん違うものをあげました。


推薦コメントの分量は200字。この字数では、この本の内容と、自分がどんなふうに影響を受けたかと、まだ読んだことのない人にどのような理由・ポイントでおすすめなのかをまとめるのは、困難、というか不可能です。


なので、紙面では充分に書けなかったことを、この場でちょっと補足しておきたいと思った次第です。



初版は1965年。ぼくが生まれる前に出た本です。元版はA5判函入りのしっかりしたつくりの本でした。しっかりしたと言えば、つくりだけでなく中身のほうもそうで、副題に「少年のための」とある通り、体裁は子ども向け入門書なんですが、それにしてはずいぶん本格的な内容です。子ども向けだからと手抜きのない筆致と構成で、今の目で見ると、小学生から読めるようにと考えてつくった本にしてはちょっと難しすぎるのではと思われるところもなくはないぐらい。


でも、とにかく、作品を世に問うとはどういうことなのかを子どもたちに伝えたいという石森先生(当時)の熱い思いが全編に溢れているのです。入門書なので、マンガを描くための道具の種類や使い方などの説明もありますが、圧巻は自作(短編「龍神沼」)を使って、構成・時間の流れ・コマ割り・心理描写・伏線などを解説していく部分です。マンガとは、創作とはこんなふうにしてできているのか、ついつい読み飛ばしてしまうような背景にはこんな意味があったのか、などなど、とにかく目から鱗の連続で、まさに本書の白眉となっています。本書の、とくにこの部分には大変な刺激と影響とを受け、繰り返し繰り返し読んだものです。


今でこそ、活字のほうに関心が偏っていて、マンガについてはそれほど熱心な読み手とは言えないのですが、小学生のころはマンガ少年でした。仮面ライダーやキカイダーなどの特撮作品で、009などアニメ作品で慣れ親しんだものをはじめ、石森作品も熱心に読んでいました。別に本気で漫画家を目指していたわけではないのですが、自分が大好きな作家のことや作品の秘密をもっと知りたい、そんなふうに思って手にした(親に買ってもらった)1冊だったのです。


その後、仕事でマンガに関わる機会は一度もありませんでしたが、自分でも気づかないうちに、この本からは多くのものを得ていたのだなあと、後になってから気がつきました。マンガにかぎらず創作全般を考えるうえで示唆に富む内容です。今読んでも得るところの大きい1冊なのではないかなと思います。


ちなみに、元版には翌年1966年刊の続編もあります。そちらは、正編を読んだ読者の感想が延々と引用されていたりして(しかも、時代が時代なので、本名と連絡先まで記されていたりします(苦笑))、本としてはちょっとバランスが悪いところがあり、正編ほどには読み返す機会はありませんでした。現在は元版は絶版で、元版を再編集・改題した文庫版『石ノ森章太郎のマンガ家入門』(秋田文庫)があります。


昔持っていた本は手放してしまったのか、長く手元にはなかったのですが、あるとき古本屋で正続2巻のセットが函入り美本で出ていたのを見つけて即購入、今も我が家の本棚の、業界本が並んでいるあたりに、一緒に並べてあります。


と、自分のおすすめ本のことばかり長々と書いてしまいましたが、ほかのみなさんのセレクトはさすが、という感じで、出版業界本の定番や名著がずらり。この人がこの本を、という組み合わせの妙も楽しめます。どなたがどの本を選んでいるかは、ぜひ本紙で確認していただきたいので、ここではふれませんが、お一人だけ。さわや書店フェザン店の店長、田口幹人さんが、『本屋図鑑』をあげてくれています。うれしいなあ。ありがとうございます。


『新文化』8/27号、ぜひ手にとってみてください。



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