空犬通信

本・本屋好きが、買った本、読んだ本、気になる本・本屋さんを紹介するサイトです。

くすみ書房のこと

『本屋図鑑』刊行以降の、独立系新刊書店の閉店としては、神戸の海文堂書店閉店以来の衝撃、といっていいかもしれません。


地元以外の本好き本屋好きからの支持も厚く、札幌の名店として長く愛されてきた、くすみ書房。これまでも何度か危機がWebやSNSで話題になったことがありましたが、先日6/10、同店のツイッターアカウント(@kusumishobo)に、閉店の報告が流れました。


《【くすみ書房から大切なお知らせ】いつも、くすみ書房をご愛顧いただきありがとうございます。突然のお知らせですが、6月21日(日)を最終日とし、くすみ書房大谷地店を閉店いたします。このような形で閉店いたすことは、まことに悔しく情けないことですが、どうぞお許し下さい》。


《またつきましては、当分の間友の会「くすくす」と、「琴似に新発想の本屋を作ります」プロジェクトの新規のお申し込みは休止いたします》。


《なお、既にお申し込みいただいた皆様へは、今後のことを、後日あらためてご連絡いたします。ご迷惑をおかけし、申し訳ございません。ご連絡まで少々お時間を要しますが、何卒ご容赦下さいますよう、お願い申し上げます》。


全国紙ではまだ報道がされていないようで、本稿執筆時点(6/12)で確認できたのは、業界紙の「新文化」以外では、新聞は地元の北海道新聞だけのようでした。




北海道新聞の記事を引きます。《「売れない文庫フェア」「中学生はこれを読め!」など書籍販売のユニークな企画で全国的に知られる札幌市厚別区大谷地東3の書店「くすみ書房」(久住邦晴社長)が、経営不振のため21日に閉店することが10日分かった。11日に店頭で告知する》。


くすみ書房と言えば、2013年に経営的に危機的な状況にあることがWebで報じられ話題になった際は、クラウドファンディングで地元以外の全国のファンからも支持を取り付け、危機を乗り越えたこともありました。その件については、記事には以下のようにあります。


《同店は1946年に琴似で開店。99年に久住さんが社長になり、03年に「なぜだ!?売れない文庫フェア」、04年には「中学生はこれを読め!」フェアなど斬新な企画で出版・書店業界から注目された。近隣に大型書店が進出したため、09年に現在地に移転。経営は何度も厳しい状況に直面したが、13年に会員組織の「友の会」を設立、インターネットで小口の資金を広く集める「クラウドファンディング(CF)」でファンの協力を得て、危機を乗り切った》。


記事には《閉店後は創業地の同市西区琴似で、規模を大幅に縮小した店舗での再開を模索している》とあります。琴似から大谷地へ移転したのも、大型店との競合のことがあったからで、その件が根本的に解消されないままに、同地に戻って再オープンするのがそもそもプランとして大丈夫なのかとか、詳細のわからぬ素人にもいろいろ不安に思えるところもあります。ただ、そこは、これまでも何度も危機を乗り越えてきたくすみ書房ですから、何か考えあってのことなのでしょう。


もう何年も前のことですが、琴似にあったころのくすみ書房を初めて訪問したときのことは今でも忘れられません。売れない文庫フェアなどの独創的なフェアやテーマの棚がいくつも並ぶ当時の店内の様子は、よその店では見たことのないもので、強く印象に残るものでした。あまりにもそのときの印象が強烈で、それほど長い滞在時間ではなかったにもかかわらず、今なお隅々まで克明に思い出せます。久住さんは、どこの誰とも知れぬ初対面の者(しかも、へんてこなハンドル名(苦笑))を相手に、お店の取り組みの数々を、たくさんの資料を使ってこまかに熱心に、出し惜しみなく説明してくれました。久住さんの話には報道や書店関連の文章ですでに知っていたものもたくさんありましたが、にもかかわらず、その内容には圧倒され、あらためて大いに感銘を受けたのをよく覚えています。


当時、訪問時のことをこんな文章記事にまとめていました。



正直なところをいうと、2013年に危機が報じられたときの経緯については、本屋さん、とくに町の本屋さんを応援したいというスタンスで、イベントをしたり物を書いたりしてきた身には、なんとなく違和感がありました。そのときのことを今になって長々と書くのもどうかと思いますので、詳述はしませんが、町の本屋さんの代表にように言われてきたくすみ書房が、町の本屋さんの良心のように思われてきたくすみ書房が、地域のお客さんではない人たちからお金を集めるかたちで経営危機を乗り切るというやり方が、全面的に応援したくなるようなものには思えなかったからです。それから1年ほどがたち、今回の閉店報道となったわけですが、クラウドファンディング/友の会方式が経営危機に陥った店がとる手段としてはたしてどうだったのかは、冷静かつ厳しい目で検証する必要があるのではないかと思います。


それはともかく。くすみ書房が、たくさんの本好きに愛され、支持され、多くの本屋さんに、こんなやり方があるんだ、こんな売り方をしてもいいんだ、と、ヒントや激励を与えてきたお店であることは間違いないと思います。だから、(久住さんには届かないかもしれないけれど)、こんなふうに書いておきたいのです。もう一度、「くすみ書房はやっぱりすごかった!」と、この駄ブログで紹介できる日がくることを、心から願っています、と。


スポンサーサイト

コメント

くすみ書房が琴似本通の交差点のところに旧店舗のビルを建てたのは今から39年前の昭和50年です。破綻したときの負債総額はなんと5億円です。当時の土地購入及び建築費からみて
どうしてこんなに負債が累積してしまったのでしょうか?
企画の才能があっても経営手腕がないと事業が成り立たない典型であると思われます。

  • 2016/10/04(火) 14:32:57 |
  • URL |
  • 王天上 #V3cCZGxY
  • [ 編集 ]

くすみ書房

王天上さん>
訪問&コメント、ありがとうございます。

くすみ書房については、ご指摘の通りで、
5億円という額は一町の書店の負債額
としては大きすぎますので、当方も報道で知った
ときには驚きましたし、雑誌に寄せた文章にも
負債額の大きさに驚いた旨を書いたことがあります。

移転の際の借り入れなどに無理があったのかと
想像はされるものの、もちろん部外者には詳細は
わかりません。

クラウドファンディングや友の会方式など、
他地域の消費者も取り込むようなかたちで復活を
はかったのがうまくいかなかったわけですから、
久住さんは、いつか、お店の運営に関して
何があったのか、何がうまくいかなかったのかを
文章で明らかにしてくれないかと、個人的には
ずっと思っています。

  • 2016/10/04(火) 22:24:56 |
  • URL |
  • 空犬太郎 #-
  • [ 編集 ]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://sorainutsushin.blog60.fc2.com/tb.php/2459-72578bac
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad