空犬通信

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書店空白、仮想書店、取次年頭所感……書店関連のニュースをまとめました

昨年までは、出版・書店業界の情報を、平日は毎朝大量にツイートしていたんですが、同種の情報を流している方も増えたようで、速報性や情報量ではるかに劣る当方が同じことをすることもないかなと思い、朝の連投はやめることにしました。これまで、出版・書店関係は割に幅広く情報収集してきましたが、これからは書店関連に絞り、1週間に1回程度、blog記事にまとめることにします。



日書連の会長、舩坂良雄さんの話をまとめた記事です。日書連傘下組合加入書店数は昨年時点で4224店。組織の規模が縮小していることについて、どのような組織強化策を考えているかを問われ以下のように答えています。


《舩坂組合の中に取引取次別のグループを作ることも1つの方法ではないかと思います。仕入れは各店別で行うけれど、売上金額は一本化する。そうすれば出版社や取次との交渉でスケールメリットを追求できる。1店では1冊しか入荷しなかった本が、10店のグループで100冊入荷するかもしれない。その代わり情報はすべて共有する。最初は各都道府県組合ごとに始めて、行く行くは全国規模のグループにすれば、大きな力を持つことができるでしょう。それが日書連傘下組合への加入メリットにもなります》。NET21のようなグループが組合加盟店の間に複数生まれるようなイメージなんでしょうか。


《これからの書店は1店舗ずつ、一国一城の主では難しいと思うのです。でも、取次という基盤、そして志を同じくする仲間が集まってグループを作り、お互いの個性を尊重しながら力を合わせれば、生き残りの道もより開けてくるのではないでしょうか》。



この種の、毎日書店が閉店になっているといった書き方の記事には、またかという感じを受ける関係者も少なくないと思いますが、今回の記事は、書店のない自治体の数や名前を具体的なあげたものになっています。《新刊本を扱う書店が地元にない自治体数が、全国で4市を含む332市町村に上り、全体の5分の1に上ることが、書店情報を集計している出版社の調査で分かった。東京への一極集中や人口の急減によって、将来的に生活基盤が失われる恐れがある「消滅可能性都市」と一致する自治体が多い。一方、「地方の活字文化の拠点を残そう」と書店を復活させる動きも出ている。》


ベースになっているのは《書店のデータベース「ブックストア全ガイド」を発行する出版社アルメディア(東京都)》の調査で、《取次店から仕入れている書店を対象に実施》したものだとあります。それによれば、《「書店空白」の4市は、北海道歌志内(うたしない)▽茨城県つくばみらい▽宮崎県串間▽鹿児島県垂水(たるみず)》で、推計人口が約47,000人の《つくばみらいを除けば、有識者でつくる日本創成会議が昨年、「消滅可能性都市」と指摘した自治体》だそうです。


記事の最後に、《作家で、文字・活字文化推進機構副会長の阿刀田高(あとうだたかし)さん》のコメントが引かれています。《町の本屋が減れば子どもたちが紙の書物に触れる機会が減り、今後さらに活字離れに拍車がかかるだろう》。この後、よくある文化云々の発言が続くんですが、それついてはともかく、子どもたちが日常的に寄れる範囲に絵本や図鑑、また漫画本やコロコロやジャンプを扱っているお店がないと、学校の図書室や公共図書館でふれられる可能性の高い前者はともかく、後者のような出版物については、そもそも子どもたちの意識にのぼることすらなくなってしまうかもしれません。文化云々の話からは漏れ落ちがちな、しかし、子どもたちにとっての本との接点としてはより重要かもしれないコロコロやジャンプのような出版物にふれられる場所があるかどうかのほうが、今後の本の売れ方への影響は決定的に大きいはずだと思うのですが、文化の話になったとたん、そういう視点が抜け落ちてしまう気がします。



ここでいう仮想書店は、通常の通販中心のオンライン書店と違い、書店の空間がバーチャルに再現されたもののようです(記事でイメージが見られます)。《「オキュラス書店」は、CGで作り出した仮想書店を自由に歩いて書籍情報をチェックできるアプリ。現時点では、Amazonのベストセラー書籍のタイトル・内容・発売日を閲覧でき、今後は書籍の購入機能などを実装する予定。》


《同社は「現実店舗を持たずに理想の店舗を持つことができ、利用者も実際に出向かずに店舗の雰囲気を楽しめる」と説明しており、バーチャル書店の構築についても100万円から請け負っている》。


こういう試みを否定するつもりはまったくありませんし、先の記事のような事態を考えれば、書店のないところで、書店の雰囲気を、場所の感じを、本が物理的に並ぶ様子を楽しむ手段が確保されるのであれば、それはそれですばらしいことのように思えなくもないのですが、それはやはりリアルな店舗を回遊する楽しみとは、等価なものにはなりにくいでしょう。というのも、提供者側に《利用者も実際に出向かずに店舗の雰囲気を楽しめる》、つまり、実際に出向くのがあたかも面倒で手間のかかることであるかのような感覚が少しでもあるとしたら、そのような感覚で作られたアプリは本当の楽しみの提供にはなりにくいのではないかと、そんなふうに思われるからです。



年始の二大取次の社長あいさつ関連の記事。まずトーハンから。《1月5日、仕事始式を行い、藤井武彦社長が年頭の挨拶を行った。同社長は、最優先すべきは「エリア書店の販売を底上げすること」とし、「新しいリアル書店の形を確立していく必要」を指摘した》。


「新しいリアル書店の形の確立」、ことばにするとシンプルですが、それがどのようなものかがなかなかわからなくて苦労しているのがこの業界です。具体的にはどんなことが考えられているんでしょうか。《そのための施策は、客注対応と複合化。客注促進では、昨年12月からパイロット店を決めて強化キャンペーンを展開し、実際に増加しているという。複合化では、文具雑貨のパッケージをトーハンが提供したKaBoS宮前平店(川崎・宮前区)の事例を報告。リニューアル後、本の売上げは落ちず、文具・雑貨、カフェを加えた全体の売上げは2ケタの伸びとなっている》。


起死回生のものすごいプランが簡単に出てくるわけがないことは十分に承知しているつもりですが、それでも、やはり大手取次が年頭あいさつで述べる施策が《客注対応と複合化》だと言われてしまうと、あまりにも当たり前に過ぎることに、これまでと変わらないことに、がっかりしたり、心配になったりする書店関係者の方も多いのではないかなどと思ってしまいます。


続いて日販。《平林彰社長は1月7日に行った「新春を祝う会」で、顧客の求める価値に合わせた書店の新たな売場づくりについて言及、その方向性を示した。書店の価値は、(1)従来からある「知的」「安心」、(2)不足している「早さ」「確実性」、(3)失われつつある「調べる」「探す」など。これから生み出すべき価値として「楽しさ」「居心地の良さ」「つながり」などを挙げ、顧客と接点のある新たな空間づくりが必要であると述べた》。


《顧客と接点のある新たな空間づくり》。こちらも、トーハンのそれと同様、では具体的にどのような空間づくりなのかが気になり、その中身こそが問われるわけですから、




書店だけの話ではありませんが、記事中ではとくに書籍の例をあげてこのように書かれています。《特に、一般に粗利が低いとされる書籍の場合、一冊盗まれると何十冊と売らないと損が取り戻せないとされる。死活問題だが、小規模書店で防犯カメラや警備員といった防犯対策に費用を掛けるのは難しいのが実情だ》。


これは書店にかぎらないことだろうと思いますが、小売に関わる人たちの間では昔からよく言われてきたことですね。「脱法ドラッグ」→「危険ドラッグ」のように、比較的短期間に切り替えがなされた例もありますが、万引の場合、それこそかなり昔から使われてきた用語で、小売の専門用語ではなく、日常語でもありますから、言い換えが仮になされたとしても、浸透するのに時間がかかるかもしれないという不安もあります。



Osaka Book One Projectが紹介されています。《大阪ゆかりの優れた著作を、府内の本屋と問屋の社員たちが毎年1冊選び、各書店で集中的にPRする》この賞は《2年前に始まり、選ばれた高田郁(かおる)さんの時代小説「銀二貫」は府内で約5万冊を販売。読書離れが進む中、大阪を切り口に、幅広い層に本の魅力を伝えている》と紹介されています。書店や取次らの横断プロジェクトであるのも特徴の1つですね。


《選考の対象になる本は、▽大阪ゆかりの作家が書いた▽舞台が府内に関係する――などが条件で、毎年7月に、「大阪の本屋と問屋が選んだほんまに読んでほしい本」として1作品を選ぶ。新作に限らない点も特徴で、受賞作は各書店で専用コーナーを設けてPRし、収益の一部は府内の養護施設に贈る本の費用とする》。


初回の2013年は高田郁さんの『銀二貫』、2014年は三浦しをんさんの『仏果を得ず』。発起人の一人、紀伊國屋書店の常務、加藤裕啓さんのコメントが記事の最後に引かれています。《大阪発のベストセラーを生み出し、発信することで本の魅力を伝えていきたい》。




書店に直接関連のある記事ではないですが、書店の、とくに雑誌の売上に影響のある案件ですので、引いておきます。《セブン&アイ・ホールディングスが9日発表した2014年3〜11月期連結決算は、営業利益が前年同期比0.1%増の2494億円だった。微増益ながら3〜11月期としては過去最高だった。積極出店が寄与したコンビニエンスストア事業や金融関連事業が好調だった》。


昨年春ごろから「セブン-イレブンは街の本屋さん」をキャッチフレーズに、店頭での書籍・雑誌の注文・受取サービスの充実をはかっているセブン-イレブン。その件は記事でも取り上げましたが、書店サービスについては数字的にどうだったのか、ちょっと気になるところではありますね。


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