空犬通信

本・本屋好きが、買った本、読んだ本、気になる本・本屋さんを紹介するサイトです。

2014年の読書を振り返りつつ

2014年は、なんというか、忙しい1年でした。


イベント「ブックンロール」を企画・主催、西荻窪のブックカフェbeco cafeで10回ほどのイベントを企画・主催。ムック『本屋はおもしろい!!』の執筆に関わりました。夏には異動で、20年以上関わってきた編集の仕事を離れることにも。


と、いろいろありましたが、今年いちばん大きかったのは、なんといっても、町本会の活動と『本屋会議』の企画・執筆に関わったこと。達成感もありましたが、同時に、自分の限界を思い知らされた1年でもありました。


今年は、『本屋会議』の調査・執筆に時間をかけたために、資料本以外のふつうの読書の量が激減してしまいました。本の世界、本屋さんのことをいろいろな人に伝えたくて、イベントをしたり、ものを書いたりしているのに、肝心の本が読めていないのでは意味がない。その点、猛省しています。来年は(このblogも含め)もう少し本業外の活動を控え、本を「買う」と「読む」にしっかりとお金と時間をかけようと、そんなふうに思っています。


さて、少ない読書量ではあったものの、ゼロではありませんから、自分の覚えも兼ねて、印象に残ったものをちょっとだけあげておきます。別に、年間ベストとか、そういう主旨のものではないですし、今年は忙しくて、何年も続けてきた読書メモすらきちんととれていないので、記録をあたって書くこともしていません。その程度の、適当なものではありますが、たまたま本記事を目にしてくださった方の、年末年始の読書の、参考ぐらいになればうれしいなあ、と思いながら書いています。


日本の小説で印象に残ったのは、朝井まかてさんの『阿蘭陀西鶴』(講談社)。まさか、自分がその年の1冊に時代ものを選ぶ日がくるとはと自分でも驚いています。それぐらい、時代ものって苦手だったんです。


この本がすっかり気に入ってしまったので、朝井まかてさんの過去作を遡って読んでみたら、闊達な文章に活き活きとした台詞回し、魅力的な人物造形と、どれもこれもいい。出会いという意味では今年最大の収穫かもなあ、などと思いながら、この年末年始は、いよいよ直木賞受賞作の『恋歌』(講談社)、そして現時点での最新作『御松茸騒動』(徳間書店)を読むつもりです。ちなみに、前者『恋歌』は装丁・造本もすばらしくて、手に持っているだけでうれしくなるような1冊になっています。


時代ものと言えば、今年の作品ではありませんがOsaka Book One Projectの大賞受賞作、高田郁さんの『銀二貫』(幻冬舎文庫)や、柴田錬三郎賞他複数受賞の木内昇さん『櫛挽道守』(集英社)も強く印象に残りました。


翻訳小説はSF以外あまりたくさんは読めなかったけど、今年4月になくなってしまった全米図書賞受賞作家、ピーター・マシーセン『黄泉の河にて』(作品社)が印象に残っています。同じ版元、同じ翻訳家(東江一紀さん)の『ストーナー』は、原書で読み始めたのですが、静かでとてもいい感じなので、読了後に翻訳でも読むつもりでいます。


SFでは、1冊ならば、アンディ・ウィアー『火星の人』(ハヤカワ文庫SF)かな。火星上でトラブルに巻き込まれた男が火星を脱出する、それだけの話を、最後までこれだけわくわく感を持続しながら読ませるとは。最新理論がばんばん出てくる小難しい作品も嫌いじゃない、というか、けっこう好きだけど、こういう「ザ・宇宙SF」みたいなのを読みたかったんだなあ、とあらためて。


SF読みの女の子が主人公という、設定だけでSF中年が萌えそうなジョー・ウォルトン『図書室の魔法』上下巻(創元SF文庫)も、すばらしかった。70年代から80年代初めぐらいの海外SFに親しんできた人なら、作中に出てくる作家名・作品名や、それらに関する記述を読むだけでも幸せな気分になれそう。内容紹介や表紙だけだと、おばかSFっぽい感じがどうしてもしてしまう、ジョン・スコルジー『レッドスーツ』(早川書房)は思わぬ拾いもので、まさか最後に泣かされることになるとは思いませんでした。各ジャンル1冊のつもりが、SFは放っておくとこのようなことに(苦笑)。


エッセイでは、黒岩比佐子さん『忘れえぬ声を聴く』(幻戯書房)が、もう「新刊」は読めないものと思っていただけに、思わぬ贈り物が届いたようで、幸せな読書になりました。


特撮関連(というジャンルを独立させているあたり、趣味丸出しですが;苦笑)は選ぶのが難しい。というのも今年は、ハリウッドゴジラに初代ゴジラ50周年というアニバーサリーイヤーということで、怪獣関連・特撮関連の本がとにかくたくさん出ましたからね。「怪獣」と入っている本はたいがい買ってきましたが、さすがにゴジラ関連は全部は買ってられませんでした。1冊を選ぶならば、やはり『成田亨作品集 The Art of Tohl Narita』(羽鳥書店)。特撮関連に入れていいかな、樫原辰郎さんの『海洋堂創世記』(白水社)も、ぼく自身はガレージキットにははまったことがないにもかかわらず、大変おもしろく読めました。切通理作さんの『本多猪四郎 無冠の巨匠』(洋泉社)は未読ですが、特撮者としては読まないわけにはいかないでしょう。


それほど熱心なコミック読みではないんですが、この記事を書くのに周りを見渡してみたら、意外に買ったり読んだりしていました。単独作品では田島列島さん『子供はわかってあげない』(講談社)かなあ、と思っていたんですが、丹羽庭さん『トクサツガガガ』(小学館)を手に取ったら、もう1話目読了時点で年間個人ベスト決定ということに。趣味に生きるというのがどういうことなのかを描いた、オタク(だけでなく、それっぽい傾向があると少しでも自覚のある方)なら、あるある必至の、身につまされ系の作品ではないかと思います。いまいちばん次の巻が楽しみな作品です。



評論では、冨田恵一さん『ナイトフライ 録音芸術の作法と鑑賞法』(DU BOOKS)。ああ、こういう音楽評論が読みたかった!と思わせる1冊で、折にふれて何度もあちこちを読み返したり拾い読みしたりしています。『ナイトフライ』の愛聴者のみなさんは、同じ版元のドナルド・フェイゲン、初の自伝的エッセイ集『ヒップの極意 EMINENT HIPSTERS』と合わせてぜひ。


ちゃんと読み切れていないものが多いんですが、ポピュラーサイエンスにも気になる本がたくさんありました。渡辺佑基さん『ペンギンが教えてくれた物理のはなし』(河出書房新社)。書名だけではわかりにくいかもしれませんが、バイオロギングという手法を使ってペンギン、アザラシ、クジラ、アホウドリといった生物の生態に迫るもので、読みやすくておもしろくて、大変にわくわくさせられる1冊でした。翻訳ものでは、HONZの『ノンフィクションはこれを読め! 2014 - HONZが選んだ100冊』(中央公論新社)が選び、復刊もされた ウイリアム・ブロード、ニコラス・ウェイド『背信の科学者たち 論文捏造はなぜ繰り返されるのか?』(講談社)はタイムリーなテーマと読み応えのある内容で、今年のサイエンス分野の1冊にぴったり。


本の本関連は、資料としてたくさん読みましたが、「資料」を抜きにしてもおもしろく読めたもの、刺激を受けたものというとかぎられてきます。内沼晋太郎さんの『本の逆襲』(朝日出版社)は、必ずしも著者内沼さんの主張に全面的に与する立場にはありませんが(とくに、本や本屋の定義というかありようについて、など)、そのような立場の違いがあるからこそ、よけいに刺激を受けた1冊となりました。賛同しかねる部分はあるが示唆的ではあったという意味では、ジェイソン・マーコスキー『本は死なない』(講談社)もそう。著者はキンドル開発に関わった人ということで、あまり期待せずに読み始めたら、単なる礼賛本ではなく、意外に(というと失礼かもしれないけれど)読みどころの多い本でした。


知り合いの本を列記するのもなんですが、出版関係では島田潤一郎さん『あしたから出版社』(晶文社)を、本の本、というか珍書関係では、ハマザキカクさんの『ベスト珍書 このヘンな本がすごい!』(中公新書ラクレ)は書き手が知り合い云々を抜きにして、楽しく読みました。


ほかにも、芸術書(ヒプノシスのアーカイヴとか)、児童書(ひゃっかいだての第3弾とか)、野鳥本とか、新書とか、ふれておきたいものはあるのですが、長くなるので、またの機会に。


今年最後の記事がなんだか雑ぱくな個人読書メモのようなものになってしまいました。今年もお付き合いくださり、ありがとうございました。2015年が、本の世界に関わるみなさんにとって、すてきな1年となりますように。


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