空犬通信

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恵比寿での町本会公開会議終了……海文堂書店はやっぱりすばらしい本屋さんでした

9/26、恵比寿のamuで、町本会公開会議が開催されました。出演は、海文堂書店の元店長・福岡宏泰さんと、同店に縁の深い『ほんまに』の発行元・くとうてんの石阪吾郎さん。


町本会恵比寿 看板町本会恵比寿 入口

企画側の一員がこんなふうに書くとまさに自画自賛で申し訳ありませんが、今回の町本会公開会議は本当にいいトークになりました。福岡さんが海文堂書店の閉店後にお店のこと、とくに閉店までの経緯についてまとまった話をされる機会はこの1年間、ほとんどありませんでした。その福岡さんが自らお店の話をされる場が、東京で実現するとは、しかも、自分たちの企画で実現してしまうとは……。我々町本会スタッフにとっても夢のような時間となりました。


今回のトーク、福岡さんは、ご自身が入社されてから閉店までのことを資料などもあたって調べ、まとめてきてくださったようで、時系列順に、ご自身とお店の関わりとを丁寧に話してくださいました。お店にとっても、福岡さんにとっても、町にとっても、大きな大きな転機となった阪神淡路大震災の前後の話もはさみ、最後は、お店の閉店の事情まで。話しにくいこと、話すのがつらいこともたくさん含まれていたはずですが、福岡さんは、ご自分にとっても、閉店から1年たったことでいい区切りになったということで、これまで新聞などの報道ではふれられなかったことも含めて、話をしてくださいました。


町本会恵比寿 トーク

↑スライド上映のため、照明を暗めにしていたため、写真、まっ暗ですね……。手前から、島田さん、福岡さん、石阪さん。


こちらも、こんなイベントを企画するぐらいですから、同店の閉店前後の報道はどれもしっかりと目を通してきたつもりです。『本屋図鑑』の取材などを通して、直接お店の方や夏葉社島田さんから得た情報もたくさん持っています。同店のことはそれなりに知っているつもりでいました。そんな身にも、福岡さんの話は新鮮で、知らなかったことがたくさん含まれていました。福岡さんは最後の数年、店長として店を切り盛りし、閉店時も最後の最後まで見届けた方ですから、ぼくのような若造が知らないことが次々に出てくる、そんなことは、当たり前のことです。当たり前のことなんですが、でも、やっぱり驚きと感銘を禁じ得ませんでした。


町本会公開会議では、トークの前に、海文堂書店の写真のスライドショーも行いました。同店の閉店直前の様子をとらえた写真集『海文堂書店の8月7日と8月17日』が夏葉社から刊行されましたが、完売・品切れで、重版の予定もありません。海文堂書店の閉店時に売り切れてしまったので、関東では、そもそも目にした方すら少ないでしょう。読者が目にする機会が失われて久しい同写真集に収録されたものだけでなく、写真集には掲載されなかったものも含めて、70枚以上に及ぶ海文堂書店の写真を当日用意、それを会場の壁に大きく映しだし、福岡さんに解説していただきました。撮影は、キッチンミノルさん。海文堂書店がどんなお店だったか、お店で働いていた人がどんな人たちだったが、とてもビビッドに伝わってくるすばらしい写真です。あとで、何人もの方から、写真がすばらしかったと感想をいただきました。



トークの中心は、福岡さんだったんですが、くとうてんの石阪さんもところどころで、お店の近くにいた人ならではのコメントをはさんでくれ、ともすれば重い雰囲気にもなりがちな、閉店した書店の話にユーモアを添えてくれました。また、人前で話すのは苦手ということで出演は固辞されたのですが、元海文堂書店の(ご本人は嫌がるかもしれませんが)名物書店員のお一人、といっていいでしょう、平野義昌さんも駆けつけてくださいました。神戸からわざわざ来てくださっただけでもありがたいのに、会場での本の販売まで手伝ってくださいました。福岡さんがトークの途中、何度か平野さんのお名前をあげ、お話をふったりしたのですが、海文堂書店に興味を持って集まってくださったみなさんに、平野さんのことも紹介することができたことを、とてもうれしく思います。


ただ、トークは、単になごやかな雰囲気のなかで、閉店してしまった書店をなつかしむような、それだけの会になったわけではありません。海文堂書店の閉店は、いったい何が原因だったのか、いまがんばっている書店の人たちにはどんなふうにしてほしいか、どうすればいいのか、福岡さんにはそのような話もしていただきました。何かわかりやすい原因と解決方法が語られたわけではないかもしれません。でも、この日、多くの書店員さんが参加してくださいましたが、おそらくどの方も、福岡さんの話からたくさんのことを得て帰られたのではないかと、傍で聞いていてそんなふうに思いました。


町本会公開会議@恵比寿、とてもいい会でした。閉店後1年のときには、東京で海文堂書店関連のトークイベントを実現したい、ぼくは1年前から勝手にそんなことを自分の目標の1つにしていたのですが、それが実現できたことを本当にうれしく思います。イベントが終わって、1つだけ、残念なことがあるとしたら、海文堂書店にもう行けないこと。もうあの店内を見られないこと。福岡さんや平野さんに、お店の中でお会いできないこと。


『ほんまに』15号に海文堂書店の思い出を書かせてもらったのですが、そこに書いた通り、ぼく自身は最後の数年はそれほど熱心な客であったとは言えません。ぼくが、海文堂書店の「客」だったと、自信を持って言えるのは、実はそれほど長い期間ではないのです。ごく短期間、といっていいでしょう。でも、たとえ短期間であっても、自分が海文堂書店の客だったことがあることを、こんなにうれしく感じられた日はありません。海文堂書店閉店最終日には駆けつけられなかったのですが、そのときの悔しい思いを、この日、福岡さんの話をうかがいって、多少なりとも「ちゃらにできた」ような、そんな気がしています。


海文堂書店の閉店は、2013年9月30日のこと。あと2日で、閉店から1年です。



ほんまに 15、16

↑会場では、『ほんまに』(くとうてん)の最新号、16号と、前号15号を販売しました。


『ほんまに』16号の特集は、先日の記事にも書いた通り、「続・神戸の古本力」。ぼくはこの号に、「町本会ができるまで」を寄稿させてもらいました。『本屋図鑑』のこと、そして、海文堂書店のことにもふれています。ぜひお読みいただけるとうれしいです。ちなみに、この『ほんまに』の表紙にすてきな絵を提供しているのは、今回のトークの出演者、くとうてんの石阪さん。作品展の予定もあるそうですよ。


『ほんまに』15号と16号は、少し残が出てしまいましたので、空犬が一部を引き取りました。10/3に西荻窪のブックカフェbeco cafeで開催されるbeco talkで販売します。(このトークも神戸ねたで、2週連続で東京で神戸関連のテーマでトークイベントが開催されることになるわけですね。)神戸に新しく生まれた出版社・苦楽堂の立ち上げ記念トークで、社主の石井さんは15号に海文堂書店のことについて、16号には出版社立ち上げのことについての一文を寄稿しています。町本会で買い損ねたという方や、記事を読んで興味を持ったという方は、ぜひ西荻窪のbeco cafeでお求めください。


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