空犬通信

本・本屋好きが、買った本、読んだ本、気になる本・本屋さんを紹介するサイトです。

神奈川近代文学館で「装幀=菊地信義とある『著者50人の本』」を見てきました

今日は家族で横浜へお出かけ。神奈川近代文学館で、本日7/27まで開催の、こんな展示を見てきました。



140727菊地展 1140727菊地展 2

↑神奈川近代文学館は、みなとみらい線、元町・中華街駅から徒歩数分、港の見える丘公園の緑に囲まれた建物です。近くには、大佛次郎記念館もあります。


菊地信義さんが《約40年間に手がけた12,000点余にも及ぶ作品の中から文芸書を中心に著者50人の本、約300点を展示》したという展示は、実に見応えのあるものでした。中上健次、古井由吉、澁澤龍彦、村田喜代子、島田雅彦、後藤明生、柄谷行人、リービ英雄、谷川俊太郎、吉増剛三……。錚々たる作家・作品が並んでいます。文学史的に重要なというだけでなく、個人的にもなじみのある作家・作品ばかり。この数十年の文芸の世界において、「装釘家=菊地信義」という存在がどれだけ大きいものであったかが、非常によくわかる展示になっていました。


展示は、ガラスケースに収められたものを眺めるのが中心ですが、作品のいくつか(数十点ほどでしょうか)が台に並べられ、実際に手にとって、カバーや本文用紙の質感、造本のこだわりを確かめることができるようになっていました。展示作品のなかには貴重なものもあるでしょうから、全部が全部をそんなふうにするわけにはいきませんし、その必要もないと思いますが、装丁がテーマの展示は、やはり一部だけでも本に触れるようになっているほうがいいですね。


文章が中心で、装丁作品の図版は数的には少ないので、展示の「図録」という位置付けになるのかどうかよくわかりませんが(神奈川近代文学のサイトでは「展覧会図録」となっています)『菊地信義とある「著者11人の文」集』という冊子が販売されていましたので、購入しました。


140727菊地展 3

稲川方人、粟津則雄、中上健次、埴谷雄高他、今回の菊地展で作品が展示されている作家たちが、菊地信義さんの装丁についてふれた文章を集めたもの(抄録のものもあります)。約300点もの作品が展示された展覧会の図録としては、掲載作品数が少ないのが残念なんですが、図版はカラーですし、代表作といっていい作品が載っていますので、これはこれでおさえておきたい1冊です。展示は本日で終了となりましたが、この文集については通信販売もされているようです。ちなみに、作品集『菊地信義の装幀』(集英社)が5月に出たばかりですので、今回、通常の作品集的な図録とせずに文集としたのは、それとの兼ね合いかもしれませんね。


それにしても。このような装丁をテーマにした展示は、いつまで成立するんでしょうね。電子書籍化がさらに進んでいくと、当然、リアルな本を展示して、装丁を愛でるような文化自体が、なくなりはしないにしても、きわめてレアなものになっていくことは間違いないでしょう。電子書籍化が進んで、それで「本」が生きながらえたり、新たな読み手を獲得したりするのであれば、それはそれでいいことだと思いますし、いくらリアルな「本」、リアルな「本屋さん」が好きだからといって、電子書籍を否定する気はまったくありません。ただ、こういうすばらしい展示を見ると、やはり、データ的には文字列の連なりでしかないテキストをリアルな物としての「本」に仕立て上げる「装丁(装幀・装釘)」「ブックデザイン」という技術、文化が失われてしまうのだとしたら、やはりさびしい感じはしますね。


紹介が最終日になってしまったので、ぜひ見に行ってくださいと書けないのが残念ですが、今後、装丁をテーマにした展示が開催されることがありましたら、本好きの方はもちろんですが、読書のメインが電子書籍である、または、電子書籍でしか読書をしないという電子派の人にも、ぜひ見ていただきたいものだなあ、と、そんなふうに思います。


スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://sorainutsushin.blog60.fc2.com/tb.php/2310-6ad6964d
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad