空犬通信

本・本屋好きが、買った本、読んだ本、気になる本・本屋さんを紹介するサイトです。

あのとき日本製紙石巻工場で何が起こっていたのか……『紙つなげ!』が発売されます

新刊案内を見ていたら、こんな本が目につきました。



紙つなげ 報道関係者資料1紙つなげ 報道関係者資料2紙つなげ 報道関係者資料3

↑書影がありませんので、代わりにこちらを。本書の報道関係者向け資料。


版元の案内によれば、このような内容です。《東日本大震災で被災した日本製紙・石巻工場。機能は全停止し、従業員でさえ復旧は無理だと考えた。しかし社長は半年での復旧を宣言。その日から彼らの戦いは始まった。紙の本を愛する全ての人へ》。


これだけでも十分に惹かれますが、しかも書き手が、『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』の佐々涼子さん。同作で開高健ノンフィクション賞を受けた方です。これは読みたくなりますよねえ。


これはおもしろそうだなあ、ぜひ読みたいなあ、などと思っていたところ、偶然にしては出来すぎなタイミングで、プルーフが送られてきたのです。ぼくはこんなふうにときどき本を紹介する駄文を書いたりはしますが、どこかに書評を書いたりしているわけではありませんし、この空犬通信でも書評はしませんので、プルーフや献本をいただくことはふだんはほとんどありません。でも、この本は、こちらがリクエストしたわけでもツイッターに物欲しげなことを書いたわけでもないのに、空犬にぴったりな内容だから、と、早川書房のYさんが送ってくれたのでした。うれしいなあ。


いたいだたその日の帰りの電車で早速読み始めました。震災を描いた本はこれまでに何冊も手にしています。この本は、ことさらに震災の被害を生々しく描き出すような、そのような本ではありませんが、それでもあちこちに出てくる被害の様子の描写に、字を追う目が、ページをくる手が止まり、冷静に読み進めることができません。何度も涙腺を刺激されます。電車内での読書に向いた本ではないのかもしれないことには読み始めてすぐに気づかされましたが、しかし、途中でやめることもできません。出版に関わる者として、これは絶対に読んでおきたい、何よりも先に読みたいと思ったからです。結局、夜、自宅で続きを読み、その日のうちに読み切ってしまいました。


書き手の佐々さん自身が、この本の中で書いていますが、毎日のように紙の本を手にしている出版関係者で、紙の本への愛を表明している本好きであっても、その紙がどこでどのように作られたのか、よくわかっていなかったことを、この本を読んであらためて思い知らされました。もちろん、震災直後、被災地に出版用紙を生み出す主要な製紙工場があったこと、また、雑誌の印刷などに使われるインキ工場も被災したこと、そのために、一時期は出版、とくに雑誌やコミックの刊行が危機的な状況にさらされたこと。そうしたことは、当時報道されましたし、社内でも情報が共有されていましたから、知識としては知っているつもりでいました。でも、あのとき東北で、石巻で何が起こっていたのか、どんなふうにして製紙工場が復活したのかは、まったく知らなかった、わかっていなかったのです。この本を読んで、そのことがよくわかりました。


先に引いた、版元の内容紹介に《紙の本を愛する全ての人へ》とありましたし、プルーフと一緒にもらった版元の資料にも《本に関わるすべての人へ》とう文言がありましたが、一読、まさにそんなふうに言いたくなる1冊だと思いました。


いい本です。《紙の本を愛する全ての人》に、空犬通信からもおすすめしたいと思います。


なお、版元の資料によれば、《本書の収益の一部は被災地の学校図書館へ寄付する予定》なのだそうです。




著者、佐々さんは開高健ノンフィクション賞作家ですので、あまり素人企画の規模の小さいイベントなどに気軽に声をかけるわけにもいきませんが、版元の早川書房には、いくつかトークイベントを提案しておきました。実現するかどうかもわからない話ではあるのですが、もしもお近くの書店などでトークやサイン会が実現されましたら、ぜひ足をお運びいただければと思います。また、うちでぜひ、とお考えの書店の担当者さんがいらっしゃいましたら、ぜひ早川書房に相談してみてください。最初のほうにあげた報道関係者向け資料の3枚目、最後のところに、早川書房の担当の方のお名前と連絡先が載っています。


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