空犬通信

本・本屋好きが、買った本、読んだ本、気になる本・本屋さんを紹介するサイトです。

「好きな本を好きなだけ読むために働く人」

しばらく前に書かれたもののようなんですが、先月、いつものように業界情報のチェックのため、Webの出版・書店関連記事をあちこち見て回っているとき、本をとりまく仕事に関する、こんな文章を目にしました。「第16回:図書館司書になりたい」(2011/08/29 Tech-On!COLLEGE「就職活動は怖くない」)。


(2011年と、少し古い記事なんですが、出版・書店関連のニュースを収集している際に、なぜか最近になって、キーワード検索で引っかかってきたため、「年」をよく見ないまま、ツイッターで紹介してしまったものでした。でも、当時は読み落としていたもののようですので、結果的には今回拾えて良かったんですが、なぜ、どこかに再録されたわけでもない記事が、最新ニュースの検索に引っかかってくるのか、不思議です。余談。)


書き手は「就職塾向日葵 代表取締役」の上野香織さん。記事は、こんなふうに始まります。《「本が好きなので司書になりたい」という学生にしばしば会います。大学選びまでは、好きなものを極める、という目的で、すいすい進んでこられたのですが、その先がどうなっているかまではたいてい理解していません。Sさんも、本好きで司書を目指していた一人でした》。記事は、タイトルの通り、図書館司書になるには、というのがテーマ。図書館司書になるためのルートを、図なども使いながら、わかりやすく解説しています。



本好きならば、本に関わる仕事の1つとして、図書館司書を考えたことがある方も少なくないでしょう。ただ、本好きだからというだけでなれるほど司書が簡単な資格でも仕事でもないことは、この記事を読むとよくわかります。資格取得自体が困難なうえに、肝心の職場や就職機会自体も少ないときています。《図書館司書の資格が取れたとしても、図書館の正職員として、さらに地元で、採用される可能性となると、奇跡的な確率です》。


記事の後半では「本が好きな人の職業」の見出しのもとに、出版・取次・書店など、図書館にかぎらない、「本」をとりまく仕事のいろいろなども図入りで解説されています。


よくまとまった記事ではあるのですが、ここまでは、図書館や出版関連の本などでも得られる範囲の情報かもしれません。ぼくが、この記事を空犬通信で紹介しておきたいなあ、と思ったのは、最後のほうに出てくる、こんなくだりに出会ったからです。


冒頭に出てきた本好きのSさんに向けて、こんなふうに書かれています。《もう一つ、本が好きな人の役割を忘れています。それは「読者」です。司書の資格が取れなくても、好きな本を仕事にしなくても、生活のための正社員の仕事をもっていても、本が嫌いになったわけじゃありません。好きな本を好きなだけ読むために働く人、それもこの業界にはとても大切な存在です。読者がいなければ成り立ちません。Sさんは、一生、本好きでいいのです》。


《好きな本を好きなだけ読むために働く人、それもこの業界にはとても大切な存在です》……なるほどなあ、そうだよなあ、などと思わされた次第です。というのも、先日の記事に書いた通り、本や本屋さんのことを考えるときに、どうしても、同じ業界の人を優先してしまうところが自分にもあるからです。自分たちが仕事として関わっている「本」。それを支えてくれているのは、出版・書店・図書館業界の人だけでは(当たり前のことですが)なく、たくさんの「読者」なんですよね。そして、自分も、業界に入る前は、「読者」だったわけだし、現在も、業界人であるよりも前に、「読者」であるはずなんですよね。


いま、ぼくにはものすごく純粋な「読者」が、ごくごく身近にいます。その子が本を読む姿、本を読んだ後に漏らす感想や見せる反応。それらを見ていると、何か、自分がいかにすれっからしの読者(のようなもの)になってしまっていたかを考えさせられます。そして、《この業界》にとって《とても大切な存在》のことを、どれほどきちんと考えているのか、どれだけちゃんと見ようとしているのか、などと考えさせられるのです。本の世界には、このような「読者」が今もたくさんいるはずですからね。


長く本の世界にいるものですから、ぼくもこれまでに何度か、本の世界で仕事をしたいという人たちから相談を受けることがありました。ひと昔前なら、本の世界はおもしろいよ、自信を持ってそのように言えましたし、ぼく自身が割に苦労して業界に入ったくちなので、よけいに、(就活や転職活動に)多少苦労してでもぜひこの世界へと言いたい気持ちでいっぱいでした。でも、最近は、そのような相談を受ける(こと自体がとても少なくなったのですが、それはともかく)と、やはりとても悩みます。本の世界はおもしろいよ、本の世界においでよ、そんなふうに簡単には言えない感じがどうしてもしてしまうのです。


ぼくは今も本に関わる仕事はおもしろいと心から思っています。せっせと出版・書店関連テーマのイベントを企画・主催しているのも、そのおもしろさや魅力を伝えたいからです。でも、それでもどうしても、悩んだり自信がなくなったりすることもあります。たとえば、昨年の海文堂書店の閉店のときのように……。だから、そんなときは、この記事の、先に引いたくだりのことを思い出そうと思います。もう一度、引いておきます。


《Sさん、もう一つ、本が好きな人の役割を忘れています。それは「読者」です。司書の資格が取れなくても、好きな本を仕事にしなくても、生活のための正社員の仕事をもっていても、本が嫌いになったわけじゃありません。好きな本を好きなだけ読むために働く人、それもこの業界にはとても大切な存在です。読者がいなければ成り立ちません。Sさんは、一生、本好きでいいのです》。



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