空犬通信

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「「なぜ」町には本屋さんが必要なのか」について

今回は、久しぶりに町本会の話題です。公開会議は、4月に小豆島で第4弾が、札幌で第5弾が開催されます。会の詳細は、町本会blogの記事をご覧ください。


さて、今回取り上げるのは、しばらく前に西荻窪のbeco cafeで、beco talkとして開催した、町本会(町には本屋さんが必要です会議)の公開会議第2弾に関することです。その回に参加してくださったお客様から、記事のコメント欄にて、以下のようなご質問をいただきました。


《ひとつ気になったのは、「なぜ」町には本屋さんが必要なのか、ということにそれほど力点が置かれていなかったように見えたことです》


これは重要かつ難しい問題ですね。コメント欄で気軽にふれられるようなことではないですし、また、町本会に興味を持ってくださる方のなかにはほかにも、この件を気にされる方がいらっしゃるかもしれないとも思いましたので、本記事にて取り上げたいと思います。ちなみに、以下に記すことは「町本会」としての意見表明ではなく、あくまで空犬個人の意見です。だから、笈入さんや島田さんは別のことを考えていて、彼らに質問をしたら別の答えが返ってくるかもしれません。そのようなものだと思ってお読みいただければと思います。



会の名前になっている「町には本屋さんが必要です」というのは、この活動の「前提」というか「命題」というか、そのようなものだと考えています。つまり、この「町本会」という場は、本屋さんの「要不要」を議論したい場ではないんです。「必要である」、これが大前提で、そのうえで、いまある本屋さんに継続・維持してもらうにはどうしたらいいか。そのような問題を考えることに集中したいのです。必要でない(かもしれない)という可能性というか選択肢については、ふれる必要も掘り下げる必要もないと、少なくとも、ぼくは思っています。「町本会」とは、そのような会なんです。


どうでもいいことだ、と言いたいわけではありません。「なぜ」については、関わる人それぞれに、その人なりの理由があればそれでいい、とぼくは考えています。集まって、額を寄せ合って相談したり考えたりすることではないように思えるのです。ちなみに、ぼくの場合の「なぜ」は、本で食べている本の業界の人間だから本屋が必要だ、ということではありません。まったくないわけではないけれど、でも、少なくとも、主たる「なぜ」ではありません。ぼくの場合の「なぜ」は単純で、本好き、本屋好きの1人として、本屋さんがないと困るからです。


「町本会」の活動では、「町には本屋さんが必要です」以外には、何の条件も限定要素もつけないし、つけたくないと考えています。いまある本屋さんには、いろいろなタイプのお店がありますが、我々の言う「本屋さん」は、別に、いわゆる「町の本屋さん」に限定しているわけではありません。「町に本屋さんが必要だ」と考える、本屋さん利用者にとって、頭に思い浮かぶそのお店が、大型店ならそれでもいいし、チェーン店でも、セレクトショップでも、複合店でも、専門店でも、ツタヤでも、ヴィレヴァンでも、駅前のなんとか堂でも、どれでもいいわけです。その意味で、「町本会」の言う「本屋さん」は「リアル書店」とほぼ同義なのかもしれません。


先に、笈入さんや島田さんは別のことを考えているかもしれない云々と書きましたが、おそらく、根っこのところでは、考えを共有できているのではないかなと思います。これまで、トークだけでなく、事前の打ち合わせでも、「なぜ本屋さんが必要なのか」に議論を費やしたことはないからです。


「町本会」の活動は、すでにオープンにしている通り、今年、2014年の1年に限定しています。今年しか本屋さんの問題をきちんと考えない、ということではもちろんありません。「町に本屋さんがあったほうがいいよねー」という思いだけで、何もできぬままなさぬままになんとなく時間がたってしまうことにならぬよう、あえて時間を区切り、そしてその期間内に明確な成果を出そうと決めたのです。だから、そんなにたくさんの時間があるわけではありません。「なぜ本屋さんが必要なのか」……大事な問題ですが、おそらくはどのように話しても、理念的な、抽象的な議論にならざるを得ないでしょう。また、何か結論めいたものが出せるとも思えません。我々は、実のある話をしたいのです。



論理的な答えにはぜんぜんなっていないかもしれませんが、「なぜ」の扱いついては、以上のような考えでいます。「なぜ」の件とはちょっと離れますが、「町本会」がらみで、もう1つ、ときどき言われたり聞かれたりすることがありますので、併せてふれておきます。それは、《このようなかたち(書店好きや関係者など「いつもの人たち」だけが中心になっているかたち、のことだろうと思われます)だと、いわゆる本屋好き、もともと本屋好きの人たちの共感しか呼べないのではないか》。


これも、「なぜ」の件同様、難しい問題ですよね。公開会議でも、また関係者の打ち合わせでも話題にしたことがあります。いわゆる本屋好き、もともと本屋好きの人たち「だけ」を相手にしたり、そのような人たちのこと「だけ」を考えて議論したりするのは、たしかによくないでしょう。別に本屋さん好きでなくても、本を買う人読む人はたくさんいるわけで、そういう人たちのことを無視して、本が売られる場である本屋さんのことを考えるのはよくないでしょう。


でも、「町本会」がやろうとしているような活動については、そういう人たち、「いわゆる本屋好き、もともと本屋好き」が中心になって行うのでいいと思うんです。


公開会議第2弾でも取り上げましたが、いま音楽業界って大変だと言われていますよね。CDが売れない、ダウンロード販売もパッケージ商品の売上げほどではない、海賊盤問題・違法ダウンロード問題も深刻、などなど、音楽業界の苦戦ぶりについては、出版不況同様、よくメディアに取り上げられていますから、それほどの音楽好きでなくても、おおよその状況ぐらいはご存じでしょう。


ぼくは、音楽が聴くのも演奏するのも好きで、それなりに、音楽関連のコンテンツにもお金や時間を割いているほうだと思います。でも、出版・書店関係者がみなそういうわけではもちろんないでしょう。同じコンテンツ産業で、お隣さんみたいな関係だとはいえ、興味がない人は年に1枚のCDを買うことだって、1曲のダウンロードだってしないでしょう。仮に、ぼくがそういう、音楽には無縁なタイプの編集者だとします。知り合いにレコード会社の人がいるとして、その人が「町にはレコード屋さんが必要だ」「子どもたちには、リアルな音楽を届けたいんだ」などと思い立ち、なんとか会議を立ち上げる。そして、「きみらも同じく、しんどい身なんだから、音楽のことを一緒に考えようではないか。知恵をかしてくれて」などと言って、なんとか会議やらトークイベントやら座談会やらに誘ってくれたとします。でも、音楽に縁も思い入れもないぼくが、そんなところにのこのこと出ていったって、おそらくは、何も言うことがないはずです。


というか、何を言ったとしても、それは音楽やレコード屋さんが自分にとって欠くことのできない存在ではない、部外者、第三者の、のんきな意見でしかない。そんなことが、それでメシを食っていて、音楽に真剣に向き合っている相手のプラスになるとは思えないし、正直、こちらも、仕事でも関係がない、趣味でもない、よそさまの畑のことまでは気が乗らないわけです。そんなものだろうと思うのです。


本屋さんのことを、本屋さんに興味がない人にきちんと話を聞くことは、できないことではないかもしれないけれど、でも、必須だとも思わないし、それほど役に立つだとも思えないんです。


「いつもの人たちがいつもの話をする」という批判(なのかどうかもよくわかりませんが、ともかく)については、ではどうすれば「いつもの人たちがいつもの話をする」感じにならないのか、どういう方に、どういうかたちで参加してもらうのがいいのか、ぜひとも、具体的なかたちでご教示いただければなあと思います。いまやっているようなやり方以外の方法論やその有効性がわからずにいるだけで、他のやり方を一切認めないといった偏狭なスタンスでいるわけではありません。こんなふうにしたらいいのではないか、こんなやり方があるのではないか、というアイディアをいただければ、町本会にとって、きっと大きなプラスになるだろうと思うのです。


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コメント

ありがとうございます。

コメントさせていただいた元書店員でございます。わざわざ記事にしていただいて申し訳ございません。お返事を書いたんですが、ちょっと長くなってしまったので、別のところにアップさせていただきました(妙な場所ですけどブログとか持ってないので・・・)。読んでいただければ幸いです。

  • 2014/03/26(水) 02:38:05 |
  • URL |
  • 元書店員 #-
  • [ 編集 ]

あっURLが表示されてない

http://anond.hatelabo.jp/20140326023417

です。失礼しました。

  • 2014/03/26(水) 02:41:28 |
  • URL |
  • 元書店員 #-
  • [ 編集 ]

ありがとうございました

元書店員さん>
ありがとうございました。
「お返事」、拝見しました。
こちらの思いについては、本記事に書いた通り
ですので、さらに返すことはしませんが、
お考えになっていることについては、
自分なりに、なんとなくわかったような
気でいます。

ただ、ではそれに応えて次にはこうしよう、
みたいなことはなかなか出てこない感じです。
というのも、やはり、それはこちらの本分を
超えている感じがするからです。

「なぜ」について考えたり突き詰めたり
したい方は、誰かにそれをゆだねるよりも
ご自分で問題提起をするのがいいのではないか、
と思いますし、部外者の意見も聞くべき、
と考える方は、ぜひそのような機会を
作ればいいのではないかと思うのです。

我々のやっていることは、あくまで個人レベルの
活動です。島田さんと空犬が、2人で話している
ことから始まったことです。だから、我々が
話したいこと、聞きたいこと、考えたいこと、
以上にはなかなか広がらないし、広げる術も
ありません。我々に求めるよりも、我々と
同じように、1人でも2人でも、そのようなことに
思いの及ぶ人たちが、町本会のやっていることに
不満や不足を感じる人たちが、自分たちで
立ち上がったらいいのではないか、そのように
思ったりします。

  • 2014/03/27(木) 00:01:09 |
  • URL |
  • 空犬 #-
  • [ 編集 ]

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