空犬通信

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祝東京初出店!……ふたば書房丸ビル店を見てきましたよ

先日、JR東京駅の近くに用事があったので、先週1/24にオープンしたばかりの新店、ふたば書房丸ビル店を訪ねてきました。


140129ふたば書房丸ビル店 外観

店内の写真だけを見せられたら、ビジネス街にあるお店とは思えないような雰囲気と品ぞろえで、とてもすてきなお店でした。京都・河原町の丸井に入っている「FUTABA+」を思わせるような感じでしょうか。


同店について、「丸の内ドットコムトップ」には、《京都の老舗書店が都内に初出店!居心地よいおしゃれな店内に、こだわりの書籍と雑貨を揃えました。ベストセラー、新刊はもちろん、独自のスタイルあるセレクトコーナーもあり、ふだん使いの書店としておすすめです。また、ライフスタイル雑貨も充実し、丸の内ワーカーの方から観光のお客様まで、楽しくお買物していただけます》とあります。


業界紙2紙にも開店を伝える記事が出ています。「ふたば書房、関東初出店の丸ビル店がオープン」(1/24 新文化)、「ふたば書房、新たな本と雑貨の融合店 丸の内に80坪で開店」(1/29 文化通信)。


うち、新文化を引きます。《1月24日、東京・千代田区の丸の内ビルディング4階にオープンした。売場面積は80坪。「書籍」60坪、「文具・雑貨」15坪。同社の雑貨事業を手がけるANGERS(アンジェ)が店舗設計した。メインターゲットは丸の内に勤めるビジネスマンやOL、観光客を想定。雑貨のセレクトは他店よりも実用性を重視したという。同23日には関係者に向けた内覧会を開いた。洞本昌哉社長は「この店が今後の出店の試金石になる。目指すのはライフスタイルの提案」と話している。初年度の年商目標は1億8000万円。店長は京都駅八条口店で文庫などを担当した伊藤慶彦氏。同店は青山ブックセンター丸ビル店の跡地》。


同店のFacebookにも、店内の写真がいろいろあがっていますので、先の記事に引用された写真と併せて見ると、店内の雰囲気がなんとなくわかるかと思います。


ふたば書房といえば、京都・滋賀を中心に十数店を展開している、関西の本好きにはおなじみの老舗チェーン。雑貨のアンジェは一足先に東京進出していましたが(2010年に上野エキュート内に出店)、ふたば書房としては今回の丸ビルが東京初出店とのこと。


ざっと店内の様子を見てみます。(取材をさせてもらったわけではなく、ほんとにざっと見て回っただけの、個人的な印象です。)


お店に入る手前の共用通路部分は真っ白のイメージなんですが(いちばん上の写真、参照)、店内に入ると、照明の色味の効果もあるのでしょう、とたんに印象がやわらかくなります。什器はシックな色使いで、ジャンルを示すプレートの表記なども洗練された感じです。


通路側に開口部が2か所ありますが、それぞれに平台があります。この平台が単に新刊・話題書で埋めただけのものではない、ユニークなセレクト台になっていました。


140129ふたば書房丸ビル店 平台1140129ふたば書房丸ビル店 平台2

↑2つあるうちの右側の平台。夏葉社の本が並んでいたので、お店の方に断って、写真を撮らせてもらいました。まさか、ビジネス街のビル内にできた新店の、メインの平台の正面、真ん中に夏葉社の本を発見することになるとは! うれしい驚きです。この台には、夏葉社の本のほか、古ツアさんの本など、本好きが喜びそうな本がいろいろ並んでいて、驚いたことに、高田渡さんの詩集『個人的理由』(文遊社)まで並んでいました。いやはや。


平台の左脇には、新刊の柱。通路側には直木賞作品などが並び、反対の店内側は京都本のコーナーになっていました。平台の右となりの柱もフェアに使われていて、こちらには、「技術」関連の本が並ぶフェアが展開中。工学的な「技術」だけではなく、幅広いジャンルの本が並ぶ、おもしろいセレクトになっていて、本の積み方、並べ方にも工夫が凝らされていましたよ。


ビジネスと人文の棚を見ながら奥に入ると、正面の壁面は、文芸の棚。作家の五十音順に全方位的に並べた感じではなく、こちらも表の平台同様いかにも本好きが喜びそうなセレクトになっています。文庫と単行本が混在した並べ方で、サブジャンルの立て方にもなかなか工夫がされています。


文芸の棚では、テーマ・ジャンル・作家のプレートが、いい具合に混在していて、たとえば作家名のプレートには、売れ筋の人気作家というよりは、趣味性の強い、玄人受けしそうな作家の名が並んでいます。「ミステリー」「SF」「海外文学」など、ふつうのジャンルも立っているのですが、よくセレクトされているようで、たとえば「ミステリー」には、このミスの上位作品・作家は並んでいなくて、久生十蘭、夢野久作、中井英夫、種村季弘といった名前が並んでいます。ヴォネガットとブラッドベリは「SF」ではなく、「海外文学」のほうに入っていたりと、担当の方が、目で見て、順番や隣との組み合わせにも気を配って並べたのであろうことがうかがわれるものになっていました。


「本の本」がまとめられた棚もあって、うれしいことに『本屋図鑑』もありましたよ。メモをとったわけでも撮影したわけでもないので、ちょっとうろ覚えですが、「仕事と文学」といった、ミニフェアといってもいいようなテーマ別のサブジャンルも立っていたように思います。


壁面に沿って見ていくと、隣には、音楽や映画などの芸術関連が並んでいます。棚の下段に、そのジャンルの雑誌が並べられ、上の段にそのジャンルの単行本が並ぶという並べ方になっていました。


文庫、レギュラーの棚は作者の五十音順に並べられていました。海外文学も同じく五十音順で、五十音順の並びを採用しているお店でも、レーベル別を併用されることの多い、ハヤカワ文庫など、レーベルにファンがついているタイプのものも、すべて作家でばらして五十音順になっていました。新刊棚はレーベル別です。こまかくチェックしたわけではないのですが、文芸の棚に並んでいる文庫とは、重なりなどがないよう、配慮されているのでしょうか。


コミックは、文庫のレギュラー棚と同じ並びにありました。棚は2本と分量的には控え目です。ビジネスマン向け大人向けのタイトルに絞ってあるのかと思ったら、コナンや進撃など、人気作品も並んでいて、(あくまで、あまりコミックに強くない者が見た印象ではありますが)コンパクトながら偏りのないセレクトになっているようでした。


雑貨は、なんとなくコーナーは分かれているものの、売り場を完全に分けてしまうのではなく、ライフスタイル関連の棚の近くには生活雑貨が、児童書の近くには知育玩具が並ぶなど、本と雑貨の融合が図られているような配置でした。文具やブックカバーなどの読書グッズは、レジの正面の目立つ台に並んでいました。


140129ふたば書房丸ビル店 書皮

↑こちらが書皮(ブックカバー)。これは文庫にかけてもらったものですが、天と地の折り返しのない帯状の紙です。


140129ふたば書房丸ビル店 しおり

↑購入特典としていただいたしおり「スワンタッチ」。「ふたば書房」と店名が入っています。


140129ふたば書房丸ビル店 カード

↑ショップカードもかっこいい。ふたば書房とアンジェのものがあります。アンジェのものは、辞書の項目を模した洒落たもの。


カードといえば、ふたば書房には「Honya Club」というポイントカード同店の案内によればメンバーズカード)がありますが、取扱店が限られているようで、東京では使えないのでしょうか、今回は、レジでは丸ビルのカードの有無は聞かれましたが、こちらのカードについては、聞かれませんでした。


140129ふたば書房丸ビル店 買った本

↑こちらが今回買った文庫。ところで、この本、どこに並んでいたと思いますか? 文芸<SF? 文庫<創元SF文庫? 文庫<な行の作家? これ、柴田元幸さんや岸本佐知子さんらの本が並ぶ、文芸棚の「翻訳者の仕事」という棚にありました。


このほか、詳述はしませんが、もちろん雑誌やライフスタイル関連の実用書の棚もきちんとそろっていて、全体にバランスのいい品ぞろえになっているように思いました。



同店へは、東京駅、oazoのほうから、丸の内の地下を歩いていったのですが、新刊書店がオープンしたことを告げるポスターなどの案内は一切見当たりませんでした。お店の開店告知だけでなく、地下にも1階にも、(ビルのタイプやサイズを考えると無理なのは当然わかりますが)ビルの外壁や入口付近にも、書店ではおなじみの「本」の1字を大きくあしらった看板や案内はまったく出ていませんでした。


オープンは前の週のこと。まだ1週間もたっていません。こんなときこそ、いろいろなかたちで宣伝告知をして、まずは丸の内界隈の利用者に認知をしてもらうことが大事だと思うのですが、その点がいささかさびしい感じ。こればかりは、お店の努力や希望だけではどうなるものではありませんから、お店にとっては、ちょっと気の毒な感じがしてしまいました。


昨年、丸の内にできた書店としては、記事でも取り上げたことのある、マルノウチリーディングスタイルがあります。こちらは、オープン前から話題になっていた商業施設「KITTE」の中にできたお店です。どちらもセレクト系の品ぞろえで、雑貨の扱いがあるところなど、共通点も多いのですが、お店だけでなく、商業施設自体がオープンとなり、書店の有無に関係なく、たくさんのお客さんが集まったKITTEの中にあるマルノウチリーディングスタイルは、お店の認知という点では幸運なスタートを切ることができたといっていいでしょう。


それに比べると、丸ビルは、今回大きな改装が行われたわけでも、テナントの入れ替えが行われたわけでもなく、あくまで単店の新規出店ですので、そういう集客力や話題性はありません。放っておいても人が集まってくる、という状況にはないわけです。それだけに、よけいにお店の存在を知ってもらうこと、「こんなところに新しい書店ができたのか」と知ってもらい、丸ビルの利用者だけでなく、近隣のビルやお店を利用する人にも立ち寄ってもらうことが重要だと思うのですが……。すてきなお店になっているだけに、その存在が十分に知られるチャンスに恵まれていないとしたら、残念なことです。


近くの丸善丸の内本店とはまったくタイプの違う、すてきな新刊書店ができたわけですから、ぜひ丸の内界隈を利用する方に認知してもらえるといいなあと、願わずにはいられません。本好き本屋好きのみなさんで、東京駅を利用する機会のある方は、ぜひ丸ビルの4階に足を運んでみてください。


気になる同一商圏の書店との関係ですが、丸善丸の内本店で、知り合いの書店員さんに会えたので、ふたば書房のことを聞いてみました。その人は、まだお店を見ていなかったのですが、タイプが違うし、何よりサイズが違い過ぎるからも、影響だの競合だのとあまり気にすることは、お互いにないのでは、と話してくれました。実際、近くのビルだとはいえ、はしごしようと思うと、けっこう歩いたり登ったり降りたりしなくてはならず、近くに書店があるからどうこうというのはお互いに関係なさそうな感じですね。


さて、上で少しふれた、昨年オープンのマルノウチリーディングスタイル。そちらにも久しぶりに寄ってみました。


140129マルノウチリーディングスタイル

同店については、以前にこんな訪問記を書いています。


以前に訪問したときには、棚や品ぞろえは正直なところそれほど印象に残らなかったのですが、以前とは少し印象が変わったのかなあ、と感じました。


140129マルノウチリーディングスタイル フェア

↑文芸の棚では、こんなフェアが展開中でした。「100 characters」。立派な小冊子まで作られています。


これは、紀伊國屋書店の「ほんのまくら」、book pick orchestraの「文庫本葉書」(フェア冊子の巻頭言でこの2つが言及されています)と同じく、本を独自のカバーで包んでしまい、作品の情報の一部のみを示して、お客さんにその限られた情報からの選書を楽しんでもらうタイプのフェア。このフェアでは、登場人物の名前と人物設定、台詞が示されています。いくつか、テーマに分かれていて、カバーの色を変えてあり、総数も100と多いので、店頭でとても目を引くものになっていました。


すぐ隣では、日記を集めた「DIARIES」というフェアも展開中で、その裏側には、実験小説を集めたフェアなども。以前に見たときよりも、棚の印象がにぎやかな感じになっていて、店内のあちこちを見て回るのを、以前よりも楽むことができました。ただ、棚の間がちょっと狭いのが気になりますね。


というわけで、にわかに書店が充実してきた丸の内界隈。今回新しくできたふたば書房は、本好き本屋好きのみなさんがわざわざ訪問する価値のあるすてきなお店だと思います。本好き本屋好きのみなさんは、東京駅近辺にお出かけの際は、ぜひ、ふたば書房丸ビル店をのぞいてみてください。少し時間に余裕を持ってお出かけになり、マルノウチリーディングスタイル、丸善丸の内本店も併せて、丸の内界隈の書店散策を楽しんでみてはいかがでしょうか。


丸の内 カフェマップ

↑これがあると、丸の内界隈を歩くのに便利かもしれません。ただし、あくまでカフェがメインのマップですので、丸善について少しふれられているだけで、書店の情報は載っていません。



追記(2/6):文中でふれたマルノウチリーディングスタイルが、「みんなのミシマガジン」の連載「本屋さん発!」に登場しています。「第21回 マルノウチリーディングスタイル発!」。記事で紹介したフェア「100 characters」他、店内の様子が写真入りで紹介されています。


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