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空犬通信

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渋谷発、「大盛堂書店2F通信」がおもしろい!……最近注目の書店フリペ その1

久しぶりに書店フリペの話題を取り上げます。しばらく前のことになりますが、渋谷で書店回りをした際、大盛堂書店に寄り、フリーペーパー「大盛堂書店2F通信」を入手してきました。


大盛堂書店2F通信

↑店頭には、最新号だけではなく、バックナンバーもずらりと並んでいましたので、まとめていただいてしまいました。


140115大盛堂書店 フリペ 27、28

↑こちらは、昨日入手したVol.27とVol.28。後者には、このフリペのことを教えてくれた1人で、猛烈にプッシュしてくれたT男さんも寄稿しています。


この「大盛堂書店2F通信」、知り合いの書店員や出版営業マンなど、こちらの書店フリペ好きを知る複数の人からすすめられていたのです。実物を手にしてみれば、これが噂通りというか期待以上というか。いやはや。これはすごいなあ。おもしろいなあ。


140115大盛堂書店 フリペ バックナンバー140115大盛堂書店 フリペ バックナンバー2

↑店頭ではこんなふうに配布されています。手作りのウォールポケットのようなものが壁面にとめられていて、そこに最新号と、バックナンバーが最近の数号、順番に並んでいました。


フリペは、A3の用紙を横置きにして上下半分に切り、それを折りたたんだもので、ほぼ文庫判。号によっては、別紙がはさみ込んであったり、ホッチキスでとめてあったりなど、割にゆるやかなフォーマット。表紙はロゴもテキストも手描きで、本文のほうは手描きとワープロが混在しています。この表紙だけで、おもしろそうだな、という感じがしますよね。表紙の、いい具合に力の抜けた感じや全体の雰囲気には、大阪の長谷川書店が発行している「ハセガワしんぶん」と共通するものを感じます。


内容は、本・作家にまつわる特集・コラム・アンケートや、書評、インタビューなど、内容も寄稿者もバラエティに富んでいます。新刊の発売日の案内やお店の売上ランキングといった書店フリペによくある要素はなく、より読ませる記事が中心になっているようです。


これはぜひ担当の方にお会いして、フリペの話をうかがわなくてはと思ったのですが、何度訪ねてもすれ違いでなかなか会えません。昨日、ようやくという感じで、フリペを作っている山本亮さんにお会いして、話をすることができました。


山本さんは、大盛堂書店の2階の売り場責任者。フリペは外部の寄稿はあるものの、制作自体は一人で手がけているそうです。特集や寄稿者の重複を避けるためでしょう、バックナンバーを一覧にしたリストまで作成されていました。フリペもユニークでおもしろいのですが、山本さんが手がけている売り場が、これまたおもしろい。決して大きくはないフロアに、文庫や新書、人文やスポーツなどが、ぎゅっと詰まっています。これが、なんというか、いい意味で駅前の本屋さんらしからぬ、実に不思議におもしろい品ぞろえと並びになっているのです。


このサイズなのに、ミシマ社や左右社や土曜社の本が並んでいて(それも、1冊2冊ではない)びっくりさせられたかと思うと、『新編 大杉栄追想』(なかなかインパクトのある表紙だったりする)が面陳になっていたりする(笑)。新書コーナーは、棚が何本も何段もあるわけではないのに、いちおしの新書が6面も並んでいたりする。立地からするとかための本が多すぎるぐらいに並ぶノンフィクションの棚は、棚の本数こそ少ないけれど、本がよくセレクトされて、密度が濃いものになっている。その隣がスポーツで、格闘技などのDVDもずらりと並んでいたりする。フェア台ではフリペと連動したフェアが展開されている。とにかく、本好き書店好きならば、うれしくなるような、(いい意味で)やんちゃな本の並べ方になっているのです。これは楽しい。


お店にいたのはわずかな時間でしたが、山本さんの話からも、棚からも、いろいろ刺激を受けました。beco cafeで開催しているトークイベントbeco talkで、いつか書店フリペをテーマに取り上げたいとずっと思っていたのですが、すぐにも企画したくなりました。


このおもしろフリペが注目されるのは当然でしょう。昨年はラジオにも取り上げられ、山本さんも出演したとのことです。「9月27日(金)小林悠×玉袋筋太郎」(TBSラジオ「今日のたまげた」)。


大衆めし 書影

↑大盛堂書店で買った本。『大衆めし 激動の戦後史』(ちくま新書)。お店の規模的にはあり得ないぐらい、これでもかという感じで並んでいて、ここで買わないわけにはいかない、という気にさせられました。


大盛堂書店 書皮

↑大盛堂書店は、実は、書皮もかっこいいのです。



ところで。大盛堂書店といえば、明治創業の老舗。古くからの書店好きには、「本のデパート」大盛堂書店本店のことをなつかしく思い出す向きも多いでしょう。大盛堂書店本店は、ぼくも渋谷では必ず立ち寄るお店でした。少しがたがたいうエスカレーターがなつかしいですね。閉店は2005年。もうすぐ10年になるんですね……。


あまりよく知らない、覚えていない、という方もいるでしょうから、少し当時の本店の様子を紹介しておきましょう。西武百貨店渋谷店B館の向かいあたり、現在のマルイジャム渋谷の隣あたりにあったお店。地下1階地上4階の5フロアで、坪数こそ350と、現在の感覚からすると大型書店と呼ぶにはやや微妙なサイズですが、ビルが丸ごと上から下まで本屋さんというのは渋谷ではここしかありませんでしたから、存在感は圧倒的でした。品ぞろえ的には、やけに専門書類が充実したお店で、仕事でもよくお世話になりましたし、プライベートでもよく通ったものです。


2005年版の『東京ブックナビ』には、同店がこんなふうに紹介されています。《大盛堂といえば、まず政府刊行書(ママ)や歴史書など「専門書」が豊富なことで知られているが、なかでも日本史は通もよろこぶ充実ぶり。ディープな世界が広がる棚は眺めるだけでもおもしろい》。《各売り場には(地下1階を除く)、エレベーターではなく、ぜひ、入口そばにあるエスカレーターで移動したい。あれだけ年季の入った代物にはそう出会えないはずだ。ガタン、ガタン、と店内に響き渡る音も不思議と心地よい》。文章を書いたのが、同店をよく利用していた方であるのがよくわかりますね。


現在の大盛堂書店渋谷駅前店は、地下1階、地上3階の4フロア(ただし、3階は売り場ではなくイベントスペース)。フロア数こそ1つしか変わりませんが、かつての本店に比べるとフロアが小さいので、在庫点数や品ぞろえはまったく違うものになっています。ただ、現在の駅前店は、渋谷のまさに駅前、センター街の入り口脇の路面店という最高の立地を活かし、客層にきちんと合わせた品ぞろえになっていて、いつもにぎわっています。、イベントにも熱心なお店で、さすがは渋谷の老舗というところでしょうか、この規模の書店としては驚くような頻度と内容になっています。


大盛堂書店 入り口

↑大盛堂書店渋谷駅前店、入り口の様子。


というわけで。「大盛堂書店2F通信」書店フリペが好きな人にはおすすめです。渋谷にお出かけの際は、大盛堂書店2階に寄り、「大盛堂書店2F通信」を手にとってみてください。そして、フリペだけでなく、お店自体もおもしろいので、店内のチェック、とくに2階のチェックもお忘れなく。


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