空犬通信

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日米書店の共通項に興味津々……ポートランドのパウエルズ

とくに旅好きというわけではない。空港は好きだし、見ている分には飛行機は好きだけど、できれば乗りたくない。そんなタイプなもので、海外に出かけたりすることはまずないんですが、先日、ものすごーく久しぶりに海外へ行く機会がありました。


今回は、本にも書店にも関係のないお出かけで、実際、書店にもまったく寄れなかったので、海外書店レポみたいな記事を書くネタはぜんぜんないのですが、乗り継ぎのために立ち寄った空港内に書店があったので、ちょっとだけのぞいてきました。


今回、ぼくが立ち寄ったのは、ポートランド空港(アメリカ合衆国オレゴン州)内にあるお店で、Powell's Books(パウエルズ書店)の支店の1つ、Powell's Books at PDX。乗換のためのわずかな時間で、しかも家族が一緒でしたから、ほんとにざっと見ただけ。くわしい書店レポートを書けるような訪問ではなかったのですが、それでも、印象に残るところがいくつもありましたので、簡単にまとめておきます。(以下、お店の様子は8月の半ばごろのもの。1店だけを見て書いた、単なる個人の印象で、これを持って、米国の書店事情を云々するものではありません。)


まず、Powell's Books(パウエルズ書店)について。アメリカはオレゴン州ポートランドを本拠とする書店で、Wikipediaによれば、《Powell's headquarters, dubbed Powell's City of Books, claims to be the largest independent new and used bookstore in the world》(パウエルの本店「パウエルズ・シティ・オブ・ブックス」は新刊・古書を扱う独立系書店としては世界最大とされる)とあります。


ほんとは、その本店のほうを見てくることができればよかったんですが、前述の通り、今回見てきたのは、空港内の小さなお店。


Powells PDX外観1Powells PDX外観2

↑Powell's Books at PDX、外観。店頭の様子がわかるよう、角度を変えて。店頭は左から、日本の書店の洋書売場でもよく見かける、ペーパーバックを差す回転ラック、隣は後述するお店のスタッフのおすすめ本を並べた平台、その隣が地元作家(「Pacific Northwest Authors」との表示が)の平台、カードの回転ラックをはさんで、児童書の回転ラックが並んでいました。


Powells PDX看板Powells PDX看板2

↑左がお店の看板・ロゴ。右は店頭、正面中央に出ていた看板で、《Beat The Summer Heat With Cool Books & Gifts》(夏の暑さをクールな本とギフトでふっとばそう!)とあります。


それほど広くはない店内をざっと見てみると、こんなようなことがわかりました。


  • 本は、面陳が多い(上の外観写真の奥に、棚の様子が少し見える)。というか、ほぼすべてが面陳で棚差しはほとんどない。当然のことながら、広さに比して、本の点数は非常に少ない。
  • 本は、新刊中心ではあるが、USEDが混ぜ売りされている。棚やスペースを分けずに、混ぜて並べられていて、USEDには「USED」というシールが表紙に貼ってあり、裏に値段を記したシールが貼られていた。本によっては、新刊と古書の両方が並んでいるものもあった(同じ本の平積みに混在している例も)
  • 店内には雑貨が多い。しおりなどの読書グッズや筆記具などの文具のように、書店で扱われる定番商品もあるが、本にはあまり関係のなさそうなおもちゃ類や靴下なども売られていた。こちらもはっきりと棚が分かれていない感じ。
  • お店独自のものと思われる手書きPOPが、店内のあちこちに貼られていた。日本のように、スタンドを使ったものはなく、棚に直接貼られているものが多かった。「STAFF PICK」という表示があった(お店のサイトにもそのようなコーナーがある)
  • 店頭に電子書籍端末が数種並んでいた。

そう、これらって、要するに、日本の書店の、最近の様子と非常に似ている、というか同じなんですよね。空港内の、こんな小さな店にもサイン本が並んでいたりするあたりも、日本の書店と同じ。


Powells PDX POP1Powells PDX POP2

↑これが手書きPOPの例。全部を確かめたわけではないですが、カラーコピーではなく、オリジナルで、チェーン内で使い回したりしているのではなく、このお店のスタッフが独自に用意したもののようです。右の写真で、「STAFF PICK」とあるのは、台紙だけが共通で、中はそれぞれ手書きです。書体の違いから、複数のスタッフが携わっているのがわかります。色を使ったり、線を引いたり、太字にしたり……手書きPOPの工夫の仕方にも共通点がたくさんありますね。



店内には、バーゲンブックスだけを並べた平台もありました。ヴォネガットやデニス・ジョンソンらの純文学に、聞いたことのないご当地作家ものや料理本が隣合っていたりと、あえてジャンルをはっきり分けない並べ方で、おもしろい、というか、ややカオスな感じになっていました。


Powells PDX しおり1Powells PDX しおり2

↑買い物をしたら、しおりを添えてくれました。表には、この空港店を含む支店5つの案内が載っています。裏には、「sell us your books」とあり、買取をする支店と買取の対応時間、予約の際の連絡先などが載っています。


冒頭にも書きましたが、これを持って米国の書店事情がどうのこうの、店頭の様子の傾向がどうのなどとするつもりはまったくありませんが、日米の書店の違いと共通点についていろいろ考えさせられたり、大昔、学生時代の海外旅行の乗り継ぎのときに見た空港書店(別の空港ですが)との違い(とくに本の量)などを、興味深く思い出したりした次第です。


ところで。用事を済ませて帰国してみたら、偶然、こんな記事が、目につきました。「極上ビールと本に囲まれて 米・ポートランド(3)」(8/26 朝日新聞)。書き手は江藤詩文さん。


《ポートランドは、CNNが、「おいしいビールが味わえる米都市8選」の1位に選出するなど、ビール愛飲家にはちょっと知られた街です》と始まるこの記事は、書店のことだけを取り上げたものではありませんが、途中、「“ワンダーランド”な魅惑の書店」として、パウエルズ書店の話が出てきます。その部分を引いてみます。


《そしてもうひとつ、お気に入りの場所になったのが、全米で最大の規模を持つ独立系の「パウエルズ書店」です。新刊と古書が入り交じった棚差しに、おしゃれなポップ。世界地図やガイドブック、紀行文がみっちり並んだトラベルブックのコーナーは、このまま棚ごと買い取りたいほど》。


《作家の村上春樹氏の旅行エッセイ『二つのポートランド』によると、ポートランドは「人口あたりレストランの数がいちばん多」くて、「人口あたりいちばん読書量が多」いそう》。


《これに付け加えたいのが、ブルワリーの数の多さ。つまりポートランドの人たちは、たくさん本を読んでたくさんビールを飲み、しょっちゅうレストランに行っているということ。これって私にとって、理想的なライフスタイルです》。


こちらは、街中にある本店のほうの話で、お店は違いますが、店頭の様子の写真などもありますし、ポートランドという街とパウエルズの雰囲気がわかる記事になっていますので、併せて読んでみていただければと思います。


ポートランドのパウエルズについては、「新文化」の長田美穂さんによる連載「小さな本屋、それぞれの物語」でも取り上げられています。「第5回 ポートランドのパウエルズ(上)」「第6回 ポートランドのパウエルズ(下)」。こちらは、業界紙の連載ですから、ばっちり書店に寄った文章になっていて、同店の様子がくわしくわかりますし、店内の写真も数点見られます。興味を引かれた方はこちらもぜひ読んでみてください。



余談。ちなみに、ポートランドは、引用した朝日の記事にもある通り、ビールが充実していることでも知られるビールの街。空港のギフトショップにも、いくらなんでもあり過ぎでは、とびっくりするぐらいの種類の、瓶入り地ビールがずらりと並んでいました。


ビール好きとしては、このチャンスを逃す手はありません。瓶ビールを買っていくわけにはいきませんので、カフェで軽食をとるときに、地元のビールの1つを頼んでみました。出てきたのは、何か作り方でも間違えたのではないかと思うほど、とびきり苦いビール。ぼくはもともと苦くてこくのあるタイプが好みなんですが、そんな好みの持ち主が飲んでも驚くぐらい、本気で苦いビールでした。これまでの人生で飲んできたあらゆるビールのなかでもっとも苦いビールだったのかもしれません。おもしろい経験になりました。


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